スプラトゥーン3のUIをいまさら考えてみた
こんにちは。NTTデータのデザイナー集団「Tangity」で、サービスデザインをやっている つの です。
今回は、任天堂のゲームであるスプラトゥーン3の、ユーザーインターフェース(UI)についてお話をさせてください。同ゲームは発売から一年半ほどたちます。デザインの観点でもnoteを含めネット上にそのビジュアルデザインやコンセプトなどについて様々な考察がすでにいくつもあります。ですので、今回は特にUI上の操作方法に焦点を当ててお話ができればと思います。
UIの操作方法もよく考えられて作り込まれていて「いいな!」と思う操作がいくつもあり、またもしかしたらちょっとだけこっちの方がいいかもと思うところもありましたので、その辺を語ります。
ちなみに、これまで僕は対戦ゲームにのめり込むことはなかったのですが(オンライン対戦は基本怖い)、スプラトゥーン3のプレイ時間は現時点で655時間※越え。そのほとんどをオンライン対戦に費やしてます。ライトゲーマーとしては恐ろしい時間数です。ということで、少しくらいゲーム内のUIについて触れてもいいかなと思って書いてみてます。
※ただし、やりこんでいる(=ガチ勢)の方々が言うには、このゲームは1,000時間まではチュートリアルだそうです。そう考えるとまだまだです。実際下手ですし。
まずは最初に少しだけゲームの概要や世界観について話をさせてください。魅力ある世界観だし、とってもUIに絡んでくる要素となっているためです。
ゲーム概要
ここは「知ってる」って方は読み飛ばしてください。
スプラトゥーン3は、インクを撃ち合うアクションシューティングゲーム。主なコンテンツは4対4でチームに分かれてインクを地面に塗り合う陣取り合戦(ナワバリバトル)の試合です。
試合の勝敗はステージ上でインクをどれだけ広く塗って陣地を広げたかで決まります。このため、相手との打ち合いが得意ではないという方は、相手を倒すよりも陣地を塗り広げて活躍ができます。
実際に、相手をすごいいっぱい倒したのに、ステージが自分の色に塗れてなくて負けてしまうことは結構あります。その逆もあります。
こういったゲーム性がいろんなユーザーに活躍の場を与えて、とても楽しくとてもやさしく、多くの人に支持されるゲームになっていると思います。
ゲームの世界観
スプラトゥーンは、海面上昇で人類が滅びた後に海中生物から進化した人型の生物「インクリング」と「オクトリング」が住む世界を舞台にしています。(えぇ、我々人間は絶滅したことになっています。笑)そして、彼らがスポーツとして先ほど触れた陣取り合戦のナワバリバトルを楽しんでいるという世界観です。
シリーズ三作目のスプラトゥーン3では、「バンカラ街」という街にキャラクターが集まっていて、そこからナワバリバトルなどをの試合をしに行ったりします。
試合で使う武器や試合運びが有利になる服・帽子・靴などを買ったりできます。路地に入って、別のミニゲームができたりもします。
単純に、メニューから「ナワバリバトル」を選んだり、装備を買ったりという形ではないのが面白いですね。
さらに、街をうろうろすると、他のプレイヤーがいてその装備や一言メッセージを見るといった交流をすることもできます。定期的に実施される「フェス」では、街がお祭り状態になったりとしっかりと作り込まれています。
こういった世界観(上記で触れたのはごくごく一部です。)が、ゲームを支持されている要因の一つになっていると思います。
話したいこと
ここまでおおよそゲームの概要をお伝えしてきました。ここからは以下の3つのことについてお話をしていきたいと思います。(地味なところですみません。)
試合に入るまでの操作について
試合中の操作について
装備の付け外しの操作について
1.試合に入るまでの操作について
ユーザーは最初のチュートリアルが終わると、前述のバンカラ街にたどり着きます。
そして、試合をするには街を歩いて試合をするためのロビーに向かいます。
ロビーには電気ポットのような小部屋「バトルポット」があり、そこに入ると試合を選ぶことができます。その後、マッチングすると試合が始まります。
効率的なUIを考えるとすべてメニューで選ぶように考えてしまいがちですが、さすがの任天堂。街を歩いて試合を遊ぶこの方法は、とても分かりやすく一度操作するとその後は間違えることはないと思います。何よりも賑やかな街をフラフラするのも楽しく思います。
慣れてきたユーザーでこの操作を煩わしく思う人向けにちゃんとメニューで移動できるショートカットも用意されています。
そのショートカットの方法は以下のとおり。
1.「x」ボタンでメニューを開いて「ロビー」に移動
2.ロビーにおいて「L」ボタンでロビーメニューを開く
このようにメニューを開くことで移動の操作を全くせずに試合をすることができます。
いいなと思うところ
ゲーム内で自分のしたいことを上記のようなゲームの世界で行わせることで、場所に辿り着きさえすれば必要なメニューは自動に開きます。ですので、メニューをどうやって開くとか操作を覚える必要はありません。記憶に頼らず操作できるというUIの原則をしっかりと守っていると思います。
また、慣れてきたユーザーにはショートカットの操作方法も提供していて快適に試合を選ぶことができます。ユーザーの熟練度に合わせたUIを提供する良い例と思います。
少しわかりにくいことも
ロビー画面においては、街中を移動したりすることなどに使うメニューと試合を選ぶためのロビーメニューの二つのメニューを呼び出すことができます。
このメニューはそれぞれ別のボタンで開くことになっています。メニューボタンが二つ種類があるというのも分かりにくいと感じる人もいるのではないでしょうか。
さらに、メニューを開くボタンは「x」ボタン、ロビーメニューを開くボタンは「L」ボタンと少し変わったボタンが割り当てられています。一般的なゲームは、「+」「-」などをメニューとして開くのに利用しているのではないかなと思います。これはメンタルモデルとの乖離があるように思います。
もしかしたら
メニューボタンが二つあることに関しては、初見だと
街のどこでもメニューを開いて移動できる
ロビーにおいては、専用のロビーメニューがあってそこから試合を選べる
といったことが頭に入っていないので何のメニューかわからなくなってしまうと思います。
ですので、最初はショートカットでの移動はできず、ロビーやバトルポットの利用に慣れた後に、チュートリアルなどでショートカットキーを説明するのが良いのかもしれません。
ボタンそのものについては、メニューを開くボタンは「x」ボタンではなく「+」ボタンを利用するのも良いのではないかと思います。
「x」ボタンをメニューとして使わないほうがいい理由がもう一つあります。この「x」ボタンは、試合中はマップを開くという機能が割り当てられています。このため、試合中と街を歩く時で操作に一貫性がありません。(ロビーおいて、左側のジョイスティックを押し込むことで「x」ボタンの割り当てがメニューかマップか切り替えることはできますが、この操作は覚えていないと理解できません。)
なお「+」ボタンは後述する装備のカスタマイズを開くボタンになっているため、メニューを開くために使うとなると、その方も見直しが必要になります。こちらは後ほど話します。
ロビーメニューを開くボタンについては、ごめんなさい、良い改善案を考えられませんでした。慣れてきたユーザー向けのボタンとして「L」ボタンでいいのかもしれません。Lobbyの頭文字でLボタンというのも覚えやすいなと思ってます。なお、この「L」ボタンは試合中には利用しないので、操作の一貫性を壊すことはありません。
2.試合中の操作について
次に試合中の操作についてお話しします。
試合中の操作で、移動やジャンプ、インク発射などの操作に加えて、味方に対して「カモン/ヤラレタ」「ナイス」のメッセージを表現することができます。ここでは、このメッセージの伝え方について触れたいと思います。
このメッセージは、味方向けにアイテムを置いたので「こっちに来て」とか、敵にやられてしまったので「ここ気をつけて」とか、味方がいい動きをみて「いいね!」を伝えたりするのに使えます。効果的に使うと味方と連携することができます。いい動きができて、味方から「ナイス」って言われると素直に嬉しいです。
いいなと思うところ
メッセージの数は3つだけあり、生きている時は「カモン/ナイス」の2つだけ。敵にやられたときは「ヤラレタ/ナイス」の2つだけです。オンラインゲームとしては非常にシンプルで絞り込まれたよい操作と思います。メッセージを送るための操作が煩雑になってしまうと、試合そのものに集中できなくなってしまうからです。中にはもっといろんなニュアンスを送りたいという方もいるとは思いますが、多く人が利用する前提で作られているこのゲームとしてはとても良いバランスに思います。(2つでもたまに押し間違って、へんなところで味方を呼んでます。すみません。)
少し操作しにくいことも
ただ、これらの操作は左手側の十字キーに割り当てられています。通常ブレー中は左手の親指でジョイティックをコントロールしているため、動きながらだと十字キーを押せません。
目まぐるしく展開する試合中ですので、ぼけっと立ち止まるのは命取り。でもメッセージは送りたい。
器用な方は、左手ではなく右手の親指を使って押すそうです。なんて器用なんでしょう! 僕の場合は本当に何かメッセージを伝えたいときだけ、安全を確認して立ち止まってから「ナイス」などを押しています。ちょっと気軽に押せません。移動しながらコメントをしたいユーザーの利用状況にあわせたUIになっていないかもしれません。
もしかしたら
感情表現についてはもしかしたら、ボタンの操作に加えて、声をマイクで拾って操作するのもありなのではないかと思います。独り言をぶつぶつ言いながらプレーするユーザーを生み出してしまうことになりますが。ちなみにつのは、試合中すでにぶつぶつ言ってしまってます!まずい。逆に声を拾ってくれる仕様だとぶつぶつが公認されてうれしいかも。
3.装備つけ外しのUIについて
最後に、装備の付け外しのメニューの呼び出し方についてお話しします。
試合で利用する武器や試合を有利に進めるための装備として、服や帽子、靴などを付け替えることができます。
この画面は、街を歩いている状況でも、何かメニューを開いている状況でも「+」ボタンを押すことで専用のメニューを開くことができます。
いいなと思うところ
スプラトゥーンのような対戦ゲームにおいて、自分の装備を整える操作も大切な要素になると思います。好みのスタイルに合わせて装備を選ぶことで操作のしやすさが変わるため有利に試合をすすめることができるためです。また、装備は服や帽子、靴ということでファッション的な要素もあり、キャラクターに自分の好みの格好をさせることができるという楽しい要素も提供してくれています。
少し操作しにくいことも
この装備つけ外しのUIは「+」ボタンからしか開くことができません。
「x」ボタンから開くメニューで「そうび」のメニューがあるのですが、そこから装備の付け外しのメニューに飛ぶには、やはり「+」ボタンを押すしかありません。画面上にある装備の絵の場所に十字キーの操作で移ることはできず、選ぶことができないのです。
このため、お恥ずかしながらゲームを始めたての頃、装備を変える方法がわからず、同じブキ/装備でしばらくプレーをしてました。画面上に見えているのに変更できない。もどかしい。
もしかしたら
ショートカットしての「+」キーは残しつつも、「x」ボタンメニューからのそうびメニューで装備つけ外しの画面を開けるようにしても良いのではないかなと思います。
さらに、前述で「x」ボタンでのメニュー展開はメンタルモデル的に違和感があるため、もしかしたら「+」ボタンはメニューの展開、「+」ボタン長押しで装備のカスタマイズ画面を開くといった動作がいいのではないかと考えています。
もしくは、せめて画面右下の「+カスタマイズ」の表記をブキやフクのある領域に近づけてくれると気づきやすくなるかもと思います。
まとめ
新規のユーザーや幅広い年齢層向けのゲームだからこそ、多少の改善点はあると感じます。ただ、全体的にはゲームする人の視点でしっかり作り込まれていて、ショートカットなどが用意されていて慣れてくると快適であり、何りよりも浸られるレベルの深い世界観があることがすごいゲームだなと思います。
アップデートが約束された2年間のうち1年半が過ぎ、残すところあと半年。(もちろんアップデート後も遊べますが)まずは、最近リリースされた追加コンテンツをしっかり楽しんでいこうと思います。
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