ザ・ソルティ・スコール

不慣れですが短編を練習がてら書いてみました。
時系列としては一部後半です。

「フン…簡単な調査だ」『金の祭壇』『小鳥沸騰』と描かれたノレンを潜り、建物からネオサイタマの重金属酸性雨の下へその身を晒すのは白いニンジャ装束のソウカイヤのニンジャ、ソルティティアーズだ。 1

ソルティティアーズのニンジャ装束は一見ごくごく普通の雪結晶のように白いスーツである。彼はソウカイヤのニンジャとしては珍しく目立った真似を好まない。普段はこのニンジャ装束形態でモータルに擬態しているのだ。 2

そんな彼の右手には、通信用の端末。彼が何をしていたか?先ほどまでソルティティアーズが入っていた建物は中毒的ゲームコーナー『目立つ日』。賭博と変わらないゲームが大量に稼働しているこの施設の調査を頼まれたのだ。3

何故ここに目を付けたか?『目立つ日』のゲームにはどれもこれもZBRめいた中毒性がある。この施設をソウカイヤの直轄に置き、上手く活用すればより多くの人間から大金を巻き上げる事ができ、利益となる。 4

ソルティティアーズは徹底的にゲームコーナーの仕組みを調べあげ、ラオモトへ報告する。『ムッハッハッハ!!御苦労であったソルティティアーズ=サン!!交渉の為、ビターメモリー=サンも送り込む。そこで待機するのだ』 5

「仰せの通りに」ラオモトとの通信を終え、ソルティティアーズは指示通り待機する。ビターメモリーとは仲がいい。二人は同じような性格で、任務において同行する事も多い。 6

重金属酸性雨が勢いを増す。近くに定休日の本屋が見える。ソルティティアーズはその屋根の下へ向かい雨宿りする。このような行動もモータルを意識してやっているだけであり、本来はこの程度の酸性雨でも余裕で耐えられる。 7

そんな彼の付近に、傘を差して歩くモータルが一人。顔はよく見えないが、黒い長髪の若い女と思われる。彼女は左手に差してる傘ともう一つ別の傘を右手に持っている。本屋の前を通り過ぎようとする。 8

「そこの姉さん」屋根の下から淡々とした口調でソルティティアーズが女に声をかける。だが、雨が道路に打ちつけられる音が邪魔をする。「あの、そこの姉さん!!」話し方をわざと変えて大声で呼ぶ。女がこちらを向く。 9

「どうか…しましたか?」こちらに寄る女。口にはマスク。内気そうで顔をなるべく見せないようにしている。成る程、こういう性格の女は好みだ。「生憎、雨から身を守る道具がない。右手に持ってる傘、恵んでいただけませんか」 10

我ながらおかしくなってくるな。哀れなモータルの真似をするのは。だが、構わない。結局我らニンジャが上である事に変わりないのだから。「傘ですか、いいですよ」「ありがとうございます」女が傘を手渡す。受け取る。 11

ふん、この私がニンジャである事に気付かないとは哀れな女だ。どうせならビターメモリーが来るまでにこの女を殺してみるか。そしてファックだ。たまにはそんな事もしておかなければ私がモータルに染まってしまうではないか。 12

「イヤーッ!!」13

響き渡るカラテシャウト!!ソルティティアーズのものか!?…いや!! 女だ!!ソルティティアーズの身体は傘ごと空中に投げ出され…本屋の壁へ叩きつけられる!!「グワーッ!?」 14

吹っ飛ばされたソルティティアーズは女を見た。待てよ…!?奴は女ではない!!そこにいた者はコンマ1秒でカツラとマスクを外し、女性用の服を脱いだ!!中から出てきたのは赤黒いニンジャ装束と『忍』『殺』のメンポ!! 15

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。私がニンジャである事に気がつかなかったようだな」ニンジャスレイヤーはオジギしアイサツした。「ド……ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、ソルティティアーズです」 16

ソルティティアーズは己のウカツを恥じた。真に相手がニンジャである事に気付かないのは自分であったのだ。こんな不様をラオモトの前で晒したら即セプクを命じられるだろう。仕方ない。このイクサで勝ち、せめて自主的にケジメだけでもしよう。 17

ソルティティアーズの白いスーツが標準的なニンジャ装束に形を変える。ニンジャスレイヤーは挑発する「ひどく薄い化けの皮だ。次は肉も骨も破いてやろう」「ほざけ」 「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」赤黒と白の風が舞う!! 18

「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」鈍い音が空気を震わせた。お互いの拳が、お互いの顔を打った!「イヤーッ!!イヤーッ!!」「イヤーッ!!イヤーッ!!」至近距離で繰り広げられるパンチの豪雨!! 19

「イヤーッ!!」ソルティティアーズは一旦パンチを止め、瞬時に高速バックステップ!「イヤーッ!!」ニンジャスレイヤーはそれを目掛けスリケンを5発投合!!「そんなものは当たらない!イヤーッ!!」跳躍回避!! 20

「イヤーッ!!イヤーッ!!」次々とスリケンを放つも回避されるニンジャスレイヤー。彼は考える。何故奴は逃げる?ただ撤退するだけか?それなら追って殺すのみ。それとも何らかのジツがあるのか?それとも…援軍の時間稼ぎか!! 21

その時!! 戦場に茶色の風が舞い降りる!!「やっと来たかビターメモリー=サン!!」「共に闘おう」「やはり増援か…ドーモ、ビターメモリー=サン、ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、ビターメモリーです」22

「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」茶と白のニンジャが共に襲いかかる!!「イイイイヤアアアアーーーッ!!!」ニンジャスレイヤーは、二人の拳をダブル・ポン・パンチで迎え撃った!!「「グワーッ!!」」拳に大ダメージ!!23

「イヤーッ!!」のけぞったソルティティアーズにニンジャスレイヤーの超高速的スリケン投合!!「イヤーッ!!」ブリッジ回避!!「イヤーッ!!」ビターメモリーの空中一回転踵落とし!「ヌウーッ!!」ブレーサーで受け止める!24

「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」25

「ちっ…しぶとい奴め!」忌々しげにビターメモリーが叫ぶ。「イヤーッ!!」ソルティティアーズのチョップ!だがニンジャスレイヤーは彼の動きが疲れなのか鈍ってきているのを読み取った。「イヤーッ!!」咄嗟にかがんでからのボディブロー!「グワーッ!!」26

ソルティティアーズの身体が再び壁に叩きつけられる!!「ソルティティアーズ=サン!!」「イヤーッ!!」薙ぐような蹴りがビターメモリーの胴を襲い、弾き飛ばした!!「グワーッ!!」27

「イヤーッ!!」恐らくソルティティアーズの方が消耗している。ニンジャスレイヤーは白いニンジャへ向けてスリケンを投げた!!受け身を取れなかった事もあり、左腕や右頬へ刺さる!「グワーッ!!」28

「イヤーッ!!」更なる追撃!!殆ど前兆の無い高速の跳び蹴りが壁際のソルティティアーズを襲った!!「アバーッ!!」凄まじい速度で行われた攻撃を、ビターメモリーは離れた場所から止める事は出来なかった。29

「イヤーッ!!」壁にめり込んだソルティティアーズの顔面に拳を放つ!!「サヨナラ!!」ソルティティアーズは爆発四散!!「さあ、次はオヌシの番だ」ニンジャスレイヤーとビターメモリーの視線が交錯する。30

「おのれ…よくもソルティティアーズ=サンを!!イヤーッ!!」ビターメモリーは持てる全てのカラテを込めた拳を、ターボ走行しながら構えた!!「スゥーッ…ハァーッ…」「イヤーッ!!!!」至近距離!! 31

「イヤーッ!!」ニンジャスレイヤーが放ったのは、暗黒カラテ技サマーソルトキック。ビターメモリーの放った拳が出た頃には、ビターメモリーの首は千切れ飛んでいた。「サヨナラ!!」32

爆発四散する光景を見届けたニンジャスレイヤーはその場を去った。周囲の音は重金属酸性雨の音のみだ。塩気のある涙と苦味のある思い出。それはこのネオサイタマの地で人々が日々積み重ねていくものである。33

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しばらくの時間が経った後、先程まで戦場であったこの場所に耐重金属酸性雨コートを着た疲れた様子の黒い髪の少女が現れた。彼女の視界に二つの傘。片方はやや壊れ気味だ。「……ごめんなさい、使います」ヤモト・コキは壊れ気味の傘を持ち、差した。 35

【ザ・ソルティ・スコール 】終わり

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