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【日記】燃費のいい人間

明け方、会ったことも喋ったこともない人の日記を読む。上手な人の日記を読んでいると、こちらも生活しようという気になってくる。それで億劫に思えたシャワーを浴びることに成功した。

風呂場を出たところで、ドライヤーが壊れていることを思い出した。1分と経たないうちに電源が落ちてしまう。丸3年使い込んだから無理もない。ひとり暮らし初日に、Awesome Storeで買った安いものだ。風量調節も冷風もない、単機能でコンパクトなのを気に入っていた。旅行先で忘れ物に気づいて慌てて買った急拵えのものを妙に気に入って使い続けてしまうときの感じに似ている。

仕方がないので濡れ髪のまま、メルカリで新品未使用の型落ち品を買った。購入確定ボタンを押す前に検索したら、そこそこ名の知れたメーカーの定番モデルだということだった。最近よく見かける円筒型のドライヤーはどうも好きになれない。ごく短いバズーカのようで味気ない。バズ・ライトイヤーのアストロブラスターみたいなワクワクする形のドライヤーはこの先淘汰されていくのだろうか。デザイン、と銘打って削ぎ落とされていく数多の無駄たちが時々恋しくなる。

久しぶりに母に電話をかけたら、父が出た。たわいもない話の終わり際、また朝寝て夕方起きるようになってしまったとこぼしたら、別にそのままでいいんじゃないと言われた。週に1度の予定のために残りの6日踏ん張り続ける必要はないよと。そこで自分が生活リズムが正せないことを言い訳に、もっと喫緊のタスクから目を背けようとしていることに気づいた。同時に、そういうところの力の入れ方抜き方や開き直り方の加減がほどよいから、父は人生をうまくやれてきたのだろうとも思った。少なくとも私の目にはそう映る。私も燃費のいい人間になりたい。


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