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褐色細胞腫闘病記「第38回 予約送信の遺書」

あの日のことを書こうか。

何度電話しても、夫と連絡が取れない。
さっき自宅に寄った時、夫の車は車庫になかった。
今日はもしかしたらまたパチンコ屋にでも行っているのか。
私は内心猛烈に怒りながら、野乃子を連れて実家に行って夫を待つことにした。

野乃子は妹の子と一緒に妹の玲衣子のところで遊んでいる。
待てども待てども夫は来ない。
もう夕闇が空を覆い始める。もうみんな、夕食の時間だ。
母が言う。
「もう、今日は来ないよ。まあ、みんなで追い詰めても話せるものも話せないだろう、また日を改めればいいよ」と完全に呆れた顔で言う。

大きなため息ができる。
これからどうするつもりなのか。
そこにガラケーのメールの着信音。夫からだ。
「今日は、そちらには行きません。家にいます」
たった一言。それ以外はない。
えっ、もしかして今日はパチンコの後、これほど私と母を待たせて家でふて寝していたのか。
あああ、なんてこと。本当に本当に呆れ果てたわ。

夕方。怒りを滾らせながら、私は野乃子を連れて帰宅する。
夫の車はある。確かに帰宅している。
野乃子は見たいテレビがあるらしく、すぐにリビングへ。
「ただいまっ」私は大きな大きな声を出す。
夫の返事はない。
私は舌打ちしながら夫が寝ているであろう2階の寝室に向かう。
娘は何も気にせず、1階のリビングでお笑い番組を見始めた。

私は一歩、一歩、階段を上る。
夫は階段の踊り場で後姿を見せている。
なんだ、起きているんじゃないの。返事くらいしてよ。私はますます立腹する。夫はお気に入りの服を着ているようだ。今日も一段と素敵なコーディネート。いいですね、私なんか今年一枚も洋服買ってないのに。
…まったくこのエエカッコシイめ。
中身は空っぽの癖にそうやっていつもいつも…
どうせそのブランド服もサラ金から借りた金で買ったんでしょうが。
噴き上がりそうになる怒りを私はかろうじて呑み込む。
「ね、着替えたということは本当は実家に来る気はあったのよね。どうして来なかったのよ。」
私はつっ立っている夫に声をかける。


ここからはグロテスクな表現が含まれています。
自死のトラウマを抱えている方、PTSDの方、グロいものが苦手な方はお読みにならないことをお勧めいたします。
かなり詳細な縊死現場の描写が含まれています。
申し訳ございませんが今回だけは有料記事とさせていただきます。
この回をお読みになってもお読みにならなくても、
前後にはさして影響はございません。
お読みになってからの苦情は一切受け付けません。
あしからずご容赦ください。

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