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自分たちが暮らす街を、自分たちでつくる  株式会社リズムデザイン/代表取締役 “井手健一郎”さん(建築家)

26歳で建築設計事務所を設立し、15年間福岡を拠点に活動している井手健一郎さんにお話を伺いました。

プロフィール
出身地:
福岡市
活動地域:福岡市
経歴:2000年春に福岡大学工学部建築学科卒業後、渡欧、14カ国97都市を訪れる. 帰国後2004年にリズムデザインとして独立(2016年に改組、法人化). 2005年から10年間、デザインムーブメント「DESIGNING?/デザイニング」の企画運営を行う。
現在の職業および活動:何かを計画・設計すること
座右の銘:人生アドリブ

「人びとと共有可能な夢を」

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

井手健一郎さん(以下、井手) 夢には2種類あると思っていて、多くの人とがいいよねと賛同できるような志(社会的に共有可能な志)と自分がどう在りたいのかを思い描く姿(個人の夢)があると思います。私がいま興味あることは、「『社会的に共有可能な志』と『個人の夢』を一致させることができるのか?」ということです。できるだけ多くの人が「それ、自分たちが欲しかった未来かもしれない!」と思えるものを設計できていたらいいな、と思っています。
例えば、何かオフィスみたいなものを設計する機会があるとして、私たちは設計のプロでありますが、その会社で働くプロではありません。そのオフィス(会社)の「良いところ」「残念なところ」は、実際にそこで働いている人たちの方が、圧倒的に詳しい(たくさん情報を持っている)。そのような場合、みんなが日頃「いいなぁ」とか「ちょっと使いづらいなぁ」とぼんやり思っていること(潜在化している情報)を顕在化させ、その情報に構造を与え共有可能な状態にしていくことが、設計の第一歩だと思います。

また、「どのようにしたら『自走する社会』に近づくことができるのか?」ということに興味があります。「自走する社会」とは、その街で暮らす人たちが積極的に自分たちの暮らす環境を選びとっているような社会のイメージです。いま新聞やニュースをみていると、ほとんどの問題や批判などは、お互いが抱えている前提を共有できていないことが、そもそもの原因なのではないか?と思えます。まずは、それぞれの前提を共有すること。そうすることが、自分たちが暮らす街を、(本来的な意味で)自分たちでつくる自走型の社会に近づく第一歩のではないか、と思っています。


Q.それを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

井手 「まず、やってみる」ことを心がけています。考えたことを実際にやってみる。そうすると、たくさんの気づきがあります。その体験を元に元々の計画を書き換えてみる、そしてまたやってみる。時間をかけて最良のものを計画するより、たくさん失敗して更新する方が圧倒的に早いし、実用性が上がります。

計画は、当初の計画通りに実行することが目的ではなく、計画によって生まれる議論や体験にこそ、意味があるのでは? と思います。何か計画(予めの計画)が提示されることによって、初めてその計画に対して、「良い」「悪い」などの意見が出ます。出た意見を元に熟議し、再考することで計画(新しい計画)がどんどん進化していく。計画は常に書き換え(更新)されるもの。変わることを前提とした計画づくりを目指しています。


Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?

井手 私の建築の師匠である井本重美さんから教わったことが3つあります。「1.建築家が建築だけを設計しても仕方ない(=建築家が建築を設計することは当たり前、建築以外のものもしっかりつくる必要がある)」「2.相手の価値に飛び込む(=自分がやりたいことから出発しても仕方ない、相手の立場に立って考える)」「3.設計に時間をかけるな、コミュニケーションに時間をかけろ(=対話の総量が設計の良し悪しを左右する)」の3点。指針と呼べるかはわかりませんが、この中でも「2」はとても大切にしていますね。

私たちの仕事は「設計」です。殆どの場合、「こういうものつくりたい!」というお施主さんから依頼が来てはじめて物事が動き出します。ですから、プロジェクトよりも先に「こんなことやりたい!」ということが先にあっても仕方がないな、という立場です。


Q.そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?

井手 卒業後、単身で旅行した経験が大きかったですね。1年間で14ヶ国97都市を訪れました。
もともとヨーロッパに行ったのも、日本の現代建築の歴史が日本固有のものだけではなく、西洋やヨーロッパから多大な影響を受けている歴史を知ったことがきかっけです。その歴史は本当に素晴らしいのか確かめてみたくなり、ヨーロッパを訪れました。

半年近くはイギリスにいたのですが、街の小学生たちが石造の家造りの仕組みを知っていたり、公園を自分の家のリビングの延長として使っているような状況を見た時に、日本で「当たり前」だと思っていたことが、環境が変わると「当たり前ではない」ことを知りました。環境は与えられるものではなく、自らつくることができるものですから、もっとお互いが話し合えれば、街は変わるんじゃないか?と考えるようになったのだろうと思います。


Q.なぜ、日本とヨーロッパの違いに着目できたと思いますか?

井手 小旅行などでもそうですが、生まれ育った街や日常生活する場所を離れた時に、改めて気づくことってありますよね。私自身、2000年のヨーロッパへの旅が、初めての海外体験でした。その時に親や友人、普段の環境の有り難さに気づき、また、新しい自分への気づきもありました。道中、大変な出来事もありましたが、そこでの体験や感じた違和感が、いまの自分の活動の背骨になっていると思います。

今でも迷ったり、いろいろな場面で自分の立ち位置を見直す機会があるのですが、今まで体験してきたことや、出会った素晴らしい才能を持った人たちを思い返しながら、父(大工さん)のように「手技」で実際にものをつくりあげることではなく設計者(=線を描くこと)でしかできないことを、また、他の設計者ではなく自分だからこそ実現できる価値と向き合い続けることが、今までお世話になってきた方々や街への恩返しなのではと思って、活動を続けたいと思っています。

記者 井手さんの前提の共有の大事さや、お父様やお師匠様を尊敬している思いを感じました。本日は貴重なお話、ありがとうございます!*******************************************************************
井手さんの活動、連絡については、こちらから↓↓

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【編集後記】
今回、インタビューを担当した清水です。

前提の共有のお話を聞きながら本当に大事だなと思いました。自分が当たり前と思っていることは、相手の当たり前ではない。それはわかっていても、なかなか話してみないと本音が見えないこともあります。
日常の会話の中で、前提共有ができたら、もっと人間関係、家庭の関係、地域の関係が変わっていくと思いました。
これからの活動も応援しています!

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。



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清水七央子

神戸出身。福岡在住。生命誕生に興味があり、生物学科専攻。一時期、日本が嫌いで海外に飛び出すが、結局どこに行っても社会を創るのは「人間」であり、「出会い」であることを実感。日本からはじまる新たな社会モデル・組織モデルを創る活動しています。

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