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#読書感想文 川っぺりムコリッタ

 方向感覚がなくなってしまった。
 まだ読み始めたばかりのこの本の中で主人公の男性が、大家さんからアパートの説明を受けているシーンを読んでいた時、前の場所に住んでいた時の自分を思い出しました。

 アパートの部屋で主人公の男性に、東の位置から、西、北、南、って方角の説明をする大家さんの様子は、静かに私に普通の生活感を思い出させてくれました。

 方向感覚、大切ですよね。


 そうして、『ささやかなシアワセを細かく見つけていけばさ、なんとか持ちこたえられるのよ』という、文庫本のカバーの折り返しのところに書かれていた言葉.

 それは、私自身がこれまでの暮らしの中で大切にしてきたことをくっきりと言語化してくれていて、きちんと文字から読み取ることであらたに自覚を促してくれました。

 お金も時間も気力も体力もギリギリのところで何とか生きてきた自分のこれまでの生活をそっと肯定してくれる、優しく嬉しい言葉でした。

 そんな気持ちで生活している人ってきっと、意外に沢山いるような気もします。働いている人ってみんな、どんな仕事をしてる人でも同じ気持ちになることがあるんじゃないか?とも思いました。そうして仕事はしていなくても子育てや介護、何かの病気と闘うこと、何かを守るために我慢したり努力したりしている人だって、きっと沢山いるはずです。

 苦しい時は誰にでもあって、そのことを乗り越えながら生きている人しかたぶんいないから、この言葉っていろんな人に当てはまるような気もします。

 ささやかなシアワセどころじゃない、って感じで、目の前のことに必死になって、自分の役目を果している人だって、いつも沢山いるはずで、だからこそこんな便利な世の中が実現しているのだろうし。


 骨折して、病院に行く途中、いろんな人に声を掛けていただいたり、助けていただいたりしているうちに、優しい人って沢山いるんだな、と思えるようになりました。どうしようもない苦しいことが重なっていて、それでも人を大切にしなくてはいけないと感じ続けることができたのは、そういう善意の人たちがいてくれたからこそだと強く感じていて。

 まだ読み始めたばかりのこの本を最後まで読んだ時、どんな気分になっているのか知りたいと思っています。



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