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雰囲気がいい。それだけではない、「ロスト・イン・トランスレーション」 ソフィア・コッポラ

この映画は雰囲気がいい。音楽が洒落ている。スカヨハが可愛い。全部そのとおりではあるが、が、それだけではない。
自分自信、結婚して、夫婦生活を何年か続けてくると、ビル・マーレイ演じるボブ・ハリスの振る舞いがものすごくスマートなことに驚く。スマートとも言えるのだが、いや、だがちゃんとしっかりと落胆している。スカーレット・ヨハンソン演じるシャーロットと、一線を交えなかったことに対してちゃんと落胆しているだ。わかるかわからないか、本当に微妙な仕草とそのときの表情に、男の性や哀しみが描かれている。
東京という奇妙な土地で、母国では絶対に会うことも話すこともなかったかけ離れた二人が、たまたま同時期にパークハイアット東京に宿泊し、ラウンジでいっしょになる。そこからはじまる二人の東京非行とも言えるストリートぶらり旅が見ていて本当に微笑ましく、眩しかった。

最初ふたりの間に立ち込めたのは安堵感だったり親近感だったり、年の差による興味深さだったりしたものが、だんだんと常態化し、マンネリ化し、険悪になる。互いに妻と夫がいる既婚者同士ではあるのだが、この滞在の短い期間に男と女が出会い、別れるまでのステレオタイプ的プロセスを順調に踏んでいくのが面白い。しかも険悪になる原因はやっぱり男の浮気ではあるのだが(笑)

ボブはスカーレットが可愛くて可愛くてたまらんのだろうな。今にも暇で不安で壊れそうな彼女の表情をみて放おっておけない感が始終出ている。
最初はどうだっただろう?もしかして俺のこと知ってるのかな?なんて思っておちゃらけて、知らずに近づいてきたんだと知るや大人のふりして、うそぶいたりしてみたり、でもたくさんたくさん話をしたんだろうな。
展開は写真のように変わって、いちいち会話の内容や過ごした時間の長さを感じさせないようなカット割で時間がすすんでいく。おそらく二人は思ってる以上にたくさん話しをしたように思う。
そしてシャーロットはそれでも肝心な不安めいたものを告白しなかったのだろう。そんな強かさにハリスは惹かれていたんだろうし、応援したいような、背中をおしたいような、抱きしめたいような、娘に抱くような気持ちが芽生えたんだろうと思う。
ここがポイントで、ハリスがシャーロットに対して抱いた気持ちは、シャーロットを娘のように愛でる気持ちと、異性のように恋する気持ちとで揺れ動いていたんではないか。そして、最後の最後。空港へ向かうタクシーから見えた後ろ姿をシャーロットと見るや、自分の本心(そのときに上回っていたシャーロットに抱く感情)をさらけ出したんだと思う。

俺、男だけど、おっさんだけど、めっちゃエモくて、胸キュンだった。
本当に大好きな映画。
#年の差カップル #逢引#プラトニックラブ#東京#お洒落

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