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宇宙戦艦2202外伝 コズミック・キャンバス 序章

西暦2203年3月21日・火星宙域
 地球・ガミラス連合艦隊は、勝算のない、だが引くこともできない戦いに明け暮れていた。

 突然、天がまばゆく輝いた。
 光の中から現れる黒色の艦隊と、それを率いるグレーと赤のアンドロメダ。
「全艦、波動砲発射用意!」
 旗艦の艦長席にただ一人座る山南修が叫ぶ。進行方向から無数のカラクルム級が体当たりし、僚艦が火球と化すが、山南はものともしない。
「てぇーっ!」
 アンドロメダの艦首から、青白いエネルギーの奔流が放たれる。四本の光が一つの巨大な矢となって、彗星帝国へと突き進む。その様子を、誰もが固唾をのんで見守った。
波動砲は彗星に直撃した。直後、彗星の表面がまがまがしい輝きに包まれ―――

 その不吉な輝きは、地球艦隊旗艦・アルデバランからも目撃されるところとなった。
「山南艦隊、通信途絶。追跡不能です」
報告を受けた谷鋼三宙将補は沈痛な表情になる。やはり送り出すべきではなかったか。彗星の直上から艦隊を突撃させる奇襲作戦などに。当初の計画通り、指揮は自律AIに任せておけばよかったのだ。たとえ、山南自身の要望だったとしても・・・。
谷が自責の念に駆られているとき、新たな報告がもたらされた。ガトランティス艦隊の動きに、混乱が見られるというのである。
「敵艦隊が後退していきます。旗艦と思われる大型空母も同様です」
「後退だと?」
優勢なガトランティス艦隊に、わざわざ下がる理由はない。損傷艦が生じているにしても、後方から艦艇を補充すればよい。白色彗星の内部には、1000万隻もの艦艇が停泊しているそうではないか。
もしや、その彗星内部で、問題が生じているのだろうか?
「山南だな・・・」
谷はつぶやいた。アンドロメダの反応は消失したが、撃沈は確認されていなかった。
そうだ、自分が彼を信じてやらなくてどうする。あいつはそう簡単に死にはしない。きっと今頃、白色の渦の中で大暴れしているのだろう。
宇宙戦艦ヤマトも、まだ沈んだと決まったわけではない。土方さんの指揮する艦が、そう簡単にくたばるはずはないのだ。もしそのようなことがあったら、親友の沖田十三提督が許さないはずだ。
かのテレサは言ったそうだ。ヤマトを中心とする大いなる和が、白色彗星を止めると。
山南は必ず、ヤマトを地獄の底から引っ張り出してくる。テレサの縁をつなぐために、今は自分の最善を尽くすほかない。

――宇宙に瞬き散っていった数多の人々。この物語は、彼らが残した、戦いの記憶の一部である。

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