仲が良いと思っていた友人の結婚式に呼ばれないどころか結婚報告もしてもらえなかった話

大学時代は、学内よりも学外に友人が多かった。

大学受験に失敗し、すべり止めの女子大に入った。本来は付属の中高一貫校に通っていたためエスカレーター式で入れた女子大だったが、一度他大を受験すると宣言してしまったばっかりに、改めて外部受験して入った。

受験に失敗したコンプレックスもあり、学内のサークルには入らず、第一志望だった私大のサークルに入った。一緒に予備校に通い、同じ私大を目指していた友人がしっかりその私大に合格し、「インカレだからたぬくまも入れるよ」と声をかけてくれたのだった。今思えば憐みもあったのかもしれないが、当時のわたしは素直にうれしくてホイホイついていった。

大学入学と同時に、ずっとあこがれていた書店でのアルバイトを始めた。昔から本が好きで、暇さえあればずっと本を読んでいた。寝たふりして布団の中でも読み続けていたため、小学生の時から視力が悪く、眼鏡デビューもだいぶ早い。中学受験の参考書の間に『赤毛のアン』を挟んで、親にばれないように夢中で読んだことも懐かしい(そうして臨んだ中学受験は成功したが、そんなことはせず真面目に臨んだ大学受験は失敗した…)。

しばらく書店アルバイトを続けた後は、売ることに飽き足らず作る方に興味がわいてしまい、当時好きだった雑誌の編集部に履歴書を送った結果、トントンと採用され、編集のアルバイトを始めた。アルバイトと言いつつ、入ってみたら弱小編集部で万年人手不足であったため、学生の肩書を隠し、名刺を持って一人取材に出ることが多かった。当時、ただのミーハー女子大生を採用し、ゼロから編集のイロハを叩き込んでくれた編集長のことは、一生尊敬しているし一生感謝している(これもまた今思えば、単に猫の手も借りたい状況だっただけかもしれないが、それにしたって運がよかった)。

詳細は割愛するが、その後はTV局のアルバイトをかけもちし始め……何が言いたいかと言うと、サークル活動とアルバイトに明け暮れていたため、大学にはろくに通っていなかった、ということ。試験に向かう途中だろうとデートの最中だろうと、アルバイト先から電話が入れば、ダッシュでそちらに向かう生活だったため、単位も落とすし彼氏にも振られた。アルバイト先もそこまで求めていなかったと思うが、元来忠誠心が強い性分であるが故、自然とそういう優先順位になっていた。もちろん、学内には友人はほとんどおらず、多めに数えて見栄張っても4人ほどだった。

そのうちの1人が、掲題の友人である。4人のうち、他3人は「学内で会えば少し話す程度」であり、放課後に遊んだことはなかったが、この1人だけは違った。学校こそ違えど、似たような偏差値の中高一貫女子高育ちで似たような境遇で育ったためか、意気投合し、授業やゼミもほとんど同じものを選択していた。カフェでお茶したり古着屋巡りをしたりと、放課後に遊んだ唯一の友人である。

大学卒業後、就職先はばらばらであったが、それでもたまに遊んだり、連絡を取り合っていて、特に問題はなかったように思う。学生時代の友人というのは特別なもので、どれだけ長い間会っていなくても、一度会えばス~ンと”あの頃”に戻れるのが不思議だ。頻度こそ少なかったものの、会った際には楽しい時間を過ごした。ここ数年は、自分が結婚したり離婚したりしたこともあり、しばらく会っていなかった。

そして、最近風の噂で、彼女が結婚し、式を追え、引っ越したと知った。

ショックを受けつつも、ショックを受けていない感を装って「結婚したんだって?おめでと~!」と連絡してみたところ、さらに追い打ちでショックな返事が返ってきた。曰く「たぬくまは他にもたくさん友人がいるから、わたしのことなんて興味ないと思った」と。

え? なになに?? 急にどうした???

「たぬくまだって、結婚式にわたしのこと呼んでくれなかったし」と。たしかに式には呼ばなかったが、二次会には他の3人と一緒に来てもらった。結婚式はこぢんまり行ったため会場がそもそも狭く、さらにグループごとでないとテーブル作りが難しく(結婚式経験者ならわかってくれるはず…)、彼女1人呼んでもポツンとしてしまうことを恐れて、やむなく学外の友人を優先させてもらったのだ。

さらによくよく聞けば、結婚式は単なるきっかけに過ぎず、大学生時代からずっとわたしにコンプレックスを感じていたという。やりたいことをやり、友人も多く、「悩みもなさそうでいいね」と思っていたという(友人はたしかに多かったが、もちろん悩みもあった)。わたしに言わせればむしろ、某人気女優にそっくりでスタイルもよく、異性からモテモテで、真面目に学校にも通っており、家事も一通りこなせて、ファッションセンスも光っている彼女がうらやましかった。たしかにサークルには入っていなかったしアルバイトもしていなかったが、では大学生活を謳歌していなかったのかというと、そうではないはずだ。彼氏との惚気話を聞いたことも覚えている。

そう思われていたことに驚いたし、何より今さら言われたことがショックだった。自分から連絡しなければ、おそらく彼女から連絡は一生来なかったのだろう。そんなことにも気づかず「学生時代の友達は特別だな~」なんて思っていた自分が恥ずかしい。

先の記事(自己紹介)でも書いたが、対等でない人間関係は難しい。家族にせよ友人にせよ恋人にせよ、対等にお互いを認め合えないと、必ずどちらかに負担が偏り、どこかで爆発してしまうのだと思う。たとえ一方は対等に思っていたとしても、もう一方がそう感じていない場合は、やはり危ない。

わたしはどうすればよかったのか。
少し考えてみれば、簡単なことだった。
もっとコミュニケーションをとればよかったのだ。

彼女は人見知りだった。わたしが「心を開いてくれた!」と思うまで半年はかかった(ちなみにわたしは人見知りしない)。だが、おそらくそれは勘違いで、彼女はわたしに心を開いてはいなかったのだと思う。わたしは心を開いているつもりで、何でもかんでも彼女に話していたが、もしかしたらそれも全部自慢に聞こえたり、コンプレックスを肥大化させる話でしかなかったのかもしれない。もちろん、自慢話をしていた気は毛頭なく、むしろ悩み相談も多くしていたと思うが、一度卑屈に感じてしまうと、悩み相談も自慢話に聞こえてしまうのはあるある探検隊である。

仕事においても、大体のトラブルの原因はコミュニケーションロスであるが(自分調べ)、人間関係のトラブルも同じなのだろう。今思えば、彼女と1対1で真剣に向き合っていたかと聞かれると、自信がない。というか、最近こそ狭く深い人間関係を築けているものの、学生時代は浅く広くをモットーとすらしていたので、誰とも真剣に向き合うことはしてこなかったように思う。就職活動期の自分とさえも向き合えていた自信がない(現に、30代半ばの今も、自分探しの旅の真っ最中である…)。

学生時代から彼女ともっとコミュニケーションを取り、真剣に向き合っていれば、こんなことにはならなかったはずだ(それ以前に、真面目に大学に通うことも必要だったと思うが)。いま、狭く深い人間関係を築けるようになったのは、離婚の経験が大きく寄与している。失ったものも大きかったが、その分、残ったものを大切に出来ている自信がある。いまわたしが一番怒りを感じるのは、自分の大切な人に危害を加えた相手に対してだ。

いまのわたしで彼女と出会っていたら、もっといい友人になれたのではないかと思う。しかし、いまさらそれを言っても仕方ないこともわかっている。人との出会いはタイミングであり、デステニーなので、こうなってしまったことを悔いてももう仕方ない。今まわりにいてくれる人、そしてこれから先に出会う人を大切にするのだ。そう、彼女の分まで。

ごめんね、そしてありがとう、かよちゃん。