見出し画像

(連載)「ボカロアーカイブス一五一八」第1話 “2015年のトレンド/2015年1月のボカロシーン

田沼ハルです。
さて、ようやく本編です。

本連載では2015〜2018年にかけて、
主にニコニコ動画におけるボカロシーンの歴史を解説、考察すると共に、当時ヒットしたボカロ曲の紹介なども行っていきます。

ボカロシーンの幅広い領域の話題を
楽しく分かりやすく読んでいただけるよう努力して参りますので、これからどうぞよろしくお願い致します。

(↑こちらにて、本連載執筆の狙いやお読み頂く上での注意事項などを記載しております。先に目を通して頂けると幸いです。)

では本編スタートです!


part1.トピック:2015年のボカロ曲、そのトレンド

orangestar「牆壁 - IA」
2015/1/1投稿

あけましておめでとうございます。
さて、2015年のボカロシーンですが、まずはこの頃ボカロリスナーに注目されていた、2名のボカロPの存在に触れていきます。

ある程度のボカロ好きの方ならもはや説明不要かもしれませんが、n-buna氏とorangestar氏です。
両氏はなんと当時10代(!)新進気鋭の若きボカロPです。

まずn-buna氏。
初投稿は2012年で、2013年には初期の代表作
「透明エレジー」を投稿します。
同曲は大激戦の2013年ボカロシーンの中スマッシュヒット。
続く2014年には「ウミユリ海底譚」「夜明けと蛍」と続け様にヒット作を生み出し、2015年以降ボカロシーンの新たな時代を予感させる存在となりました。

n-buna「ウミユリ海底譚 - 初音ミク」
2014/2/24投稿


続いてorangestar氏。
初投稿は2013年で、2014年の7月に投稿した
「イヤホンと蝉時雨」がヒット。
続いて8月に投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」は、
2024年現在1200万回以上再生される大ヒット作となります。

orangestar「アスノヨゾラ哨戒班 -IA」
2014/8/19投稿


さて、この2人の更なる活躍が期待された2015年初頭ですが、注目すべきはその作風です。

n-buna氏はバンドサウンド主体のロック、
orangestarは美しいメロディが印象的な打ち込みサウンドが主体(後にバンドサウンドに移行)という違いはありましたが、
共通していたのは「夏を感じさせるような、爽やかで爽快感のある雰囲気の楽曲が多い」という点です。

2013年までのボカロシーンは、wowaka氏や暴走Pあたりがその路線の開祖とされる「テンポが速い、歌詞を詰め込むタイプ」のボカロ曲が全盛でした。
ボカロ曲は、速い!歌詞が難解!世界観がすごい!
というのがイメージとして定着していたのです。
(当然この枠に入らないヒット曲も多く存在します)

しかしn-buna氏、orangestar氏が台頭し始めた時期から、シーン全体の作風のトレンドが変わり始めます。

つまり、超高速ボカロックのような作品が減少し、比較的(重要!)落ち着いたテンポの「歌える美メロボカロック」が増えていく事になります。

この時期のトレンドの移り変わりを良く感じられる例として、かいりきベア氏やじっぷす氏(現ぷす)の作風の変化が分かりやすいでしょうか。
両氏はもともと歌詞詰め込みタイプの高速ボカロックをメインとした作風でしたが、2015年以降はガラッと作風が変わり、バキバキシンセやキーボードなどは鳴りを潜めます。

後にかいりきベア氏は、2013年以前のボカロらしさも感じさせる新しいボカロック路線を確立し、大ヒットを連発します。
しかしとにかく2014〜2015年の楽曲は、新たな作風を模索していたんだろうなあ...と感じさせる移行期ならではの楽曲が多いです。(一応言っておきますが、この時期の楽曲めっちゃ好きです)

とはいえ、これはあくまでもトレンドの話であって、これぞ古き良きボカロ!シンセバキバキに掻き鳴らして超早口で難解かつややダークな歌詞歌うぜ!という楽曲もまだまだ存在しました。(こっちもこっちで好き。)

とにかくこの時期、ボカロヒット曲の作風の幅が更に広がり、なんとなく全体的にBPMが下がったというイメージを持って頂ければOKです。


part2.1月のボカロシーン

n.k「このふざけた素晴らしき世界は、僕の為にある - 初音ミク」
2015/1/19投稿

2015年1月のボカロシーンの出来事や、主なヒット曲を見ていきます。

まず1日にorangestar氏が「牆壁」を投稿。
新たな一年に期待させられるアップテンポな正月ソングです。(part1冒頭に動画リンクあり)

次いで2日にれるりり氏のガール/ボーイ楽曲シリーズの新作「厨病激発ボーイ」
5日にこちらも大人気ボカロP、40mP「雨音ノイズ」が登場。
9日には歌って作詞作曲も出来る、紅白歌合戦まで出ちゃう男こと、まふまふ氏の「ショパンと氷の白鍵」が投稿。

また1月中旬、世間がクマムシの「あったかいんだからぁ♪」に湧く中、ボカロシーンでも謎の「あったかいんだからぁ♪アレンジカバーブーム」が巻き起こり、多くのボカロPがこれに参加し盛り上がりを見せました。

19日にはn.k氏の「このふざけた素晴らしき世界は、僕の為にある 」が投稿。同曲は2024年5月現在までに234万回再生される、1月最大のヒット曲になります。

1月末、31日には歌い手としても活動する伊藤歌詞太郎氏が「さよならだけが人生だ」を投稿。この曲は同氏ボカロ曲最大のヒット作となります。

同日投稿、40mP氏の「Snow Fairy Story」は、毎年冬に札幌で開催される雪ミクの2015年テーマソングです。

他、10万回再生以上された主なヒット曲としては、MARETU氏「パケットヒーロー」、カメリア氏「ココロの質量」、ゆうゆ氏「ロベリアの追懐」、椎名もた氏「ドラッグスコア」、ATOLS氏「キーウィ」、ナナホシ管弦楽団氏「心じゃきっと分かっていた」、スズム氏「人類五分前仮説」など。

2015年1月に投稿された曲で、当記事投稿時点にてミリオン再生を達成している曲は以下の3曲です。

・「このふざけた素晴らしき世界は、僕の為にある 」-234万回再生
・「厨病激発ボーイ」-219万回再生
・「パケットヒーロー」-167万回再生

(ここで紹介した楽曲は、当記事の最後に動画リンクを貼っておきます。)


part3.おわりに

さて、ここまで2015年1月のボカロシーンを振り返って参りました。今後本編ではこのように、part1では当時のボカロシーンのトピックや考察、part2で主なヒット曲を月毎に紹介するという流れを取らせていただきます。基本的に。

...え?2018年末まで最低でも48話?マジ...?

また、個人的に紹介しきれなかったイチオシボカロ曲の紹介などは、別途紹介する場を設けようと思いますので、そちらもお楽しみに。

あと、絶対完走できるよう頑張ります。


part4.紹介曲動画リンク

・記事内で紹介した順に紹介(既に動画リンクを貼っている曲除く)

ここまでご覧いただきありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?