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記録メディア変遷史を丸ごと知る高齢者世代の苦労と幸福

断捨離が進まない

いつまでも片付かないゴミの山。
先日、ようやくデッキ類(カセットデッキ、MDデッキ)やエフェクター類、デスクトップパソコン数台を処分したのだが、まだまだある。
ハード的なものであと残っているのはビデオテープデッキの類。VHS、8mm(Hi-8)、DV……と、いろいろ種類があるのだが、今も動くのか?
記録メディアが新しくなるたびに、音楽や映像を記録した古いメディアをどうするかというのは、多くの人たちが経験したと思う。
メディアも再生機器も思いきって全部せ~ので捨てればいいのだが、歳を取ると昔の記録への愛着が増してしまうというやっかいな病気にかかる。その結果、死ぬまで絶対に再生することのないであろうテープやディスクが捨てられない。
ビデオに関しては、昔は動画作成・編集なんてことはできなかったので、旅行の記録とか、テレビに出演したときの録画なんかだけテープを残していた。それをデジタルファイルに変換して保存し直せないかと思って。
しかし、そもそもテープが見当たらない。すでに引っ越しの際に捨てたんだっけ? なんか、自分が映っているものだけは残したと思ったのだが、どこかに埋もれてしまっているのか。

……なんてことで時間を使っている自分はみっともないな、とも思う。
自分が生きた記録の映像って、歳を取って懐かしく振り返るだけのためなら意味がない。そうした気持ちが爺になった証拠で、かっこわるい。
その作業に使う時間と労力で、出来が悪くても新しい作品を作る苦しみを味わうべきだろうと。
死んだ後に作品を残すのはまだいいとしても、それは誰もが鑑賞したり、学べたりする作品であって、自分が生きたことそのものはどうでもいいはずだ。

……でも、なかなかそこまで悟りきれないのよね。

で、ハードは、動くものはメルカリで売れるし、壊れているものもほしいという人がいるのよね。8mmビデオデッキなんかは壊れていても買う人はいるような気がする。先日も、壊れているカセットデッキをメルカリに出した途端売れたし。

さて、売るにしても捨てるにしても、デッキが今でも動くのか1つ1つ点検しなくちゃね。あ~めんど……。

8mmビデオデッキは電源は入るし、テープの出し入れもできるのだが、テープが回っていない感じ。回転系が壊れている
VHSのデッキはちゃんと動いた。が、何本か残してあったはずのビデオテープが見当たらない。どうしたものか
これはCanonのDV(デジタルビデオ)テープのカメラ・再生機。これも電源は入り、テープの出し入れはできたが、再生も撮影もできなかった。カビだらけ。
右はAV信号のデジタル←→アナログ変換器みたいだ。こういうものを買った記憶がまったくないのだが、あの頃はお金もあったんだなあ

↑再生機のテストをしているうちに、テープとディスクだけでもこれだけ手元に集まってきた。
今の若い人たちはこのうち何一つ知らないんじゃないかなぁ。
高齢者でも、DVテープとか8mmビデオテープなんて覚えていない人が多いかもしれない。8mmビデオはまだアナログだった。
MDも短命だったし、意味がなかったな。CDと違って圧縮信号での記録なのに、SONYが独自規格に固執したため、アップルがMP3を再生できるiPodを出したことで存在価値がなくなった。
MDはディスクメディア終焉の象徴だったんじゃないか。
それでも、ソフトメーカーはソフトを「もの」の形で売りたいので、DVDやブルーレイといったディスクメディアに固執し続けた。DVDなんて、今ではスマホで撮った映像より画質が粗くて、大画面テレビでは見てられないほど。
それでも我々高齢者世代は、お皿の形になっている商品には安心するみたいなところがある。

DATは、CDの44kHzサンプリングの上を行く48kHzサンプリングで、これが出たときは20万円のデッキをすぐに購入して、自宅スタジオのマスター機にした。
最初に買ったのはシャープ。それからダビング用にSONYのデッキを買い、屋外録音用にSONYのDATウォークマンは2台買った。
これはパイオニア製で今もちゃんと動く。他にしまい込んであるけれど、パイオニア製の本格的な屋外録音用デッキも貰って持っている。
DATテープはこんなにちっちゃいのにカセットやオープンリールより劣化しにくいみたいで、30年以上前のテープがちゃんと再生できる。
オープンリールのマスターテープに記録した音楽などは、DATを買った後は、取っておきたいものはせっせとDATにコピーしていた。
結果、我が家に今も残っていて、再生可能なメディアはDATしかない。
そのDATも、もはや用なしメディアではある。ちっちゃなSDカードやパソコンのSSDに膨大な量のデータが劣化せずに残るのだから。

DATテープは軽く100本以上ある
↑DATの再生機はこれが7台目くらいかな

私のような高齢者世代は、レコードを聴くのも電蓄という機械を買えるある程度お金のある家庭に生まれなければならなかった。
電卓、ワープロ、パソコン、FAXなどがなかった時代からお勉強やお仕事をしていた。
コンピュータはコマンドラインで打ち込むところから知っているから、基本的にコンピュータとはどういうものかというのを、感覚的に理解している。
デジタルとアナログの違いをしっかり分かっている
文化がデジタル革命でどう変わっていったかも体験している
……これって、すごい幸運だよね。人類史のごくごく短い技術革新の時期を生きたのだから。
今の若い世代は生まれたときからネット社会があって、いろんなものの原理を知らないまま道具を使っている
これから先、石油文明が継続できなくなるような事態になったら、アナログな道具だけで生き抜けるのだろうか。

『マイルド・サバイバー』解説ページは⇒こちら


こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。