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改めて実感してほしい「日本中の原発の場所」

今回の北陸地震の被害は悲惨で、とにかく救助・救援がまともにできていないのがひどい。
被害状況の悲惨さを隠そうとする意図でもあるのかと疑ってしまう。

陸路も海路も空路もまともに使えていないという中で、海外からの支援はことごとく断って、民間ボランティアも「今はまだ来るな」と止められているようだ。

日本の原発は過疎地の海外線に沿って建てられている。何かあったときに「見捨てやすい場所」だから、という理由もある。
東京湾沿いには東京電力の火力発電所が12箇所ある。 千葉県側に千葉・五井・姉崎・袖ケ浦・富津の5箇所。神奈川県側に、川崎・東扇島・横浜・南横浜・横須賀の5箇所。それに挟まれるように、東京湾中心部に大井と品川という2箇所の合計12箇所だが、原子力発電所はない。
東電の原子力発電所は東電の電力供給エリア外である福島と新潟にある。福島のは「あった」というべきだろう。
福島の2か所(福島第一イチエフ、福島第二ニエフ)はすでに廃炉が決定し、今も毎日大量の電気を消費しながら気の遠くなるような廃炉作業が進められている。
つまり、福島の原発は電気を作っていないどころか、これからずっと、消費していく一方だが、このマイナス分は電力供給方式別データにマイナス算入はされていない。
イチエフもニエフも事故対応のための地理的条件は、日本中のどの原発よりも有利だった。
近くには国道6号が通っていて、山地でもない。それでも、地震・津波の後しばらくは一番必要な電源車さえも近づけなかった。

今回地震のあった石川県には志賀原発があり、直ぐ隣の福井県はまさに原発銀座といってもいいほど原発が並んでいる。
地震発生からすでに2週間経っているのに、道路が寸断され、物資が中々運び込めないという報道が続いているが、そのエリアに志賀原発もある。

Yahoo!の災害マップにおける志賀原発の位置

燃料棒冷却プールの水が溢れたとか、何やら「油」が漏れ出したとか、いろいろ伝わってくるのだが、はっきりした情報が出てこないのが気味悪い。
稼働していなかったからまだよかったが、イチエフのようなことになっていたらどうなったか。

拙著『奇跡のフクシマ』から、「6 もしも福島第一以外の原発で起きていたら」という部分をそのまま抜き出しておきたい。

6 もしも福島第一以外の原発で起きていたら
⇒地理的に現場に近づけず、なすすべなし多くの原発は半島の先端など、一旦放射能漏れが起きたら、外から近づくこともできない場所に建てられている

下の図 9は関西電力美浜原子力発電所の場所を示した地図ですが、原発構内への進入路は東側の半島付け根部分から海を渡る橋だけです。 こんなところで東日本大震災並みの地震・津波が起きたら、陸路での救援はまず無理でしょう。

美浜原発の場所。海を渡る長い橋の先が原発。橋が壊れたらアウト

 次の2つの図は関西電力高浜原発と大飯原発の場所ですが、ここも進入路が1本しかなく、しかも途中にはトンネルがあります。こんな進入路では、災害で通れなくなることは容易に考えられます。
 関電はどういう神経でこういう場所に原発を建設したのでしょう。また、国はなぜそれを許したのでしょう。

高浜原発の場所。ここも進入路は海沿いの1本しかなく、しかもトンネルあり
大飯原発の場所。ここもたどり着くまでに何か所もトンネルを通らなければならない

 他にも、四国電力伊方原発も細長い半島の途中にありますし、もんじゅは長いトンネルの先、半島の果てにあります(下図)。
 日本原電敦賀原発も半島の先端にありますが、半島の西側からの進入路はなく、どん詰まりになっています。半島の東側のルートは、敦賀湾の付け根から延々と半島東側の海岸線(国道 141号線)を北上することになるのですが、この道の途中が災害で通行不可になった場合は近づくことができません。

伊方原発の場所。半島の付け根なので、半島の先の住民は避難不可能か
もんじゅと敦賀原発の場所。進入路に長いトンネルがある

 日本の原発は軒並みこんな感じで、しっかりした進入路が作れない半島や入り組んだ湾に面して建てられており、背後は崖や山という立地です。脆弱な進入路が崩れたり沈んだりしたときには、緊急の手当ができません。海側以外の3方向は山に囲まれているというロケーションが多いため、ヘリコプターによる空からの接近も難しいでしょう。特に夜間や荒天時であれば、陸からも空からも近づけなくなる可能性があります。
 また、半島の付け根部分が寸断された状態で放射能漏れが起きた場合、そこから先に残された住民は避難路を断たれたまま長期間の被曝と物資不足に耐えなければならなくなります。「フクシマ」では、放射能漏れが確認された直後は、米軍でさえ海からの接近救援を諦めて引き返しています。そのことを思い出せば、こうした地形にある原発で緊急事態が起きた場合、外部からの応援・救援がまったく不可能になる状況はいくらでも起こりえると理解できるでしょう。

 皮肉にも、東電の福島原発は、1Fも2Fもほぼまっすぐな海岸線にきれいに並んで建てられており、日本の原発の中では例外的に理想的なロケーションにあります。すぐ横を国道6号線が直線的に走っていて、山からも離れているためヘリも近づきやすい場所です。(下図)

 救援のためにはこれ以上望めないようなよいロケーションであるにもかかわらず、応援の電源車は渋滞に巻き込まれて遅れに遅れ、水や電源の補給も間にあいませんでした。暴走を始めると手がつけられなくなって4基連続崩壊してしまったのです。
 ましてや他の場所の原発を大地震や大津波、もしくはテロリストが襲ったらどうなるのか……。
 昨今では、原子炉の直下(原発敷地内の直下ではなく、原子炉そのものの直下)にある断層が活断層か否か、などという論争が原子力規制委員会と電力会社の間で戦わされていますが、活断層があろうがなかろうが、そもそもこんな場所に建ててしまうことがでたらめです。これ以上、無意味な議論に時間を費やしている暇はありません。
 目下、最大の不安は東南海地震ですが、東海地震は 1854年に発生した安政東海地震が最後(最新)。東南海(紀伊半島沖から遠州灘)のプレート境界で起きた地震も 1944年が最後。もちろんその時代には原発は存在していませんでした。
 巨大災害が起きたときに救援が絶望的と思えるような厳しい場所(半島のどん詰まり、進入路がトンネルや海岸線を伴う1本しかない、背後は山)に次から次へと原子力発電所を建ててしまった日本。このままではまた同じ惨劇が起きるでしょう。 現実に「フクシマ」は起きたのです。
『奇跡のフクシマ ─「今」がある幸運はこうして生まれた─』より抜粋)

もうみんな忘れてしまっているが、本当に「フクシマ」は運がよかったのだ。宝くじに当たるよりもよっぽど難しいような幸運が何重にも重なった結果、あの程度ヽヽヽヽですんだ。

もしイチエフが東京湾沿いにあったらどうなっていたか↓

この範囲が立ち入り禁止になって、日本終了!だった。

平和惚けというのは、こういうことをいうのだよ。

それにしても北陸への援助が遅い! 薄い!
まったく「馬鹿が作る現代史」だ。


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7つの「幸運」が重なったからこそ日本は救われた! 電子書籍『数字と確率で実感する「フクシマ」』のオンデマンド改訂版。

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