感謝に代わる何か
Q:息を吸うように「つい」やってしまうことは何か
この質問を読んだとき、答えではないものが頭に浮かんだ。
息を吸うように「つい」やってしまいたいこと
それならある。最近よく考えてることだ。
いまの自分は全く足りてないけど、いつの日かと願っていることがある。
息を吸うように与えたり与えられたり。そんな日常を夢見ている。
それが簡単にできないのは分かってる。
誰かに親切にすることはなんとかできるかもしれない。
でも親切にされることを自然にできる人がどれほどいるだろう。
私はそんな人になりたいのだ。
自然な感情のままに与えたり与えられたり。そんな人になりたいと願う。
◇
親切にされたら感謝をする。ずっとそうやって生きてきた。
感謝は大切。今でもそう思っている。
でもね。感謝はときに窮屈なんだ。
感謝をするのもされるのも。
◇
感謝という言葉がない世界があったら、案外うまくいくのかな。
誰もが当たり前のように助け合う世界。どうしてできないんだろう。
自然な気持ちで優しくできたらいいのにな。
自然な気持ちで助けを求められたらいいのにな。
生きづらさを抱えてる人は自分の想像以上にいる。
どうして今まで気づかなかったんだろう。
◇
私がいてあなたがいる。何かをすればその間に感謝が生まれる。
そうすることで世界は回ってきたのだと思う。
お互いが気持ちよく暮らすために。
感謝は求めるものでもないし、求められるものでもないはず。
それなのに、なぜそんなことを思ってしまうのだろう。
そう思わずに生きられたらいいのに。感謝はときにやっかいだ。
◇
たまたま耳にした言葉に、心を動かされることがある。
あれはテレビのドキュメンタリー番組でのことだった。
絵本の専門店に集まる人たちにインタビューをしていた。
友人に勧められた外国の絵本を探しに来た人がいた。
絵本の中のおだやかな世界を、その人はこんなふうに表現していた。
ただそこにいて
心を配って仲良くしているみたいな
それを聞いてああそうかと思った。
世界はそうやって回していけばいいんだなって。
◇
現代は多様性を認め合う社会なのだそうだ。
自分の強みを活かし、弱みは誰か得意な人にカバーしてもらう。
それがいまを生きる私たちの新しい常識となってる。でも・・
感謝がなければ成立しない社会は、マイノリティにとってどうなのだろう。
心身の不調を言い出せず、ひとり抱え込む社会はどうなのだろう。
多様性を尊重するのなら
私たちの意識もアップデートして、この時代を歓迎していこう。
◇◇◇
『BLUE GIANT SUPREME』
親切なドイツ人クリスのことについて書きたい。
世界一のジャズプレーヤーになるため単身ドイツに渡った主人公の宮本大。
大と偶然知り合ったクリスは、身寄りのない大を自分の家に泊めて
ジャズバーに交渉し、客集めに奔走し、ライブを成功させようとする。
宿代はビールでいいよと、クリスは言う。
大はそんなクリスを不思議に思う。そしてこう尋ねる。
「クリスはどうして? どうして家族でもないオレにそんなに優しいの?」
それに対するクリスの答えがとてもいい。
Be kind to somebody is just wonderful.
(人に優しくすることは ステキなことだからね)
それだけの理由で、あんなに熱心に親切にするなんて。
さも当然のように話すクリスのことを、ずっと忘れられないでいる。
私もいつかクリスのようになれたらと思う。
◇◇◇
クリスのようにはいかないけど
自然な気持ちでやれてることがひとつだけある。
妻と出かけたとき、重い荷物は私が持つようにしている。
何も言わず手を伸ばすと、何も言わず手渡してくれる。
そのやり取りがとても自然で、夫婦でよかったといつも思う。
感謝したりされたりは必要なくて。息を吸うように与えたり与えられたり。
小さな世界だけど確かにできてる。そんなことがなんだかうれしい。
◇
その気持ちをもう少し広げていけたら。
そんな関係をもっと広げていけたら。
世界はどのように見えてくるだろうか。
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