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感謝に代わる何か

Q:息を吸うように「つい」やってしまうことは何か

この質問を読んだとき、答えではないものが頭に浮かんだ。

息を吸うように「つい」やってしまいたいこと

それならある。最近よく考えてることだ。
いまの自分は全く足りてないけど、いつの日かと願っていることがある。

息を吸うように与えたり与えられたり。そんな日常を夢見ている。

それが簡単にできないのは分かってる。

誰かに親切にすることはなんとかできるかもしれない。
でも親切にされることを自然にできる人がどれほどいるだろう。
私はそんな人になりたいのだ。
自然な感情のままに与えたり与えられたり。そんな人になりたいと願う。

親切にされたら感謝をする。ずっとそうやって生きてきた。
感謝は大切。今でもそう思っている。

でもね。感謝はときに窮屈なんだ。
感謝をするのもされるのも。

感謝という言葉がない世界があったら、案外うまくいくのかな。
誰もが当たり前のように助け合う世界。どうしてできないんだろう。

自然な気持ちで優しくできたらいいのにな。
自然な気持ちで助けを求められたらいいのにな。

生きづらさを抱えてる人は自分の想像以上にいる。
どうして今まで気づかなかったんだろう。

私がいてあなたがいる。何かをすればその間に感謝が生まれる。
そうすることで世界は回ってきたのだと思う。
お互いが気持ちよく暮らすために。

感謝は求めるものでもないし、求められるものでもないはず。
それなのに、なぜそんなことを思ってしまうのだろう。
そう思わずに生きられたらいいのに。感謝はときにやっかいだ。

たまたま耳にした言葉に、心を動かされることがある。
あれはテレビのドキュメンタリー番組でのことだった。
絵本の専門店に集まる人たちにインタビューをしていた。

友人に勧められた外国の絵本を探しに来た人がいた。
絵本の中のおだやかな世界を、その人はこんなふうに表現していた。

ただそこにいて
心を配って仲良くしているみたいな

それを聞いてああそうかと思った。
世界はそうやって回していけばいいんだなって。


現代は多様性を認め合う社会なのだそうだ。
自分の強みを活かし、弱みは誰か得意な人にカバーしてもらう。
それがいまを生きる私たちの新しい常識となってる。でも・・

感謝がなければ成立しない社会は、マイノリティにとってどうなのだろう。
心身の不調を言い出せず、ひとり抱え込む社会はどうなのだろう。

多様性を尊重するのなら
私たちの意識もアップデートして、この時代を歓迎していこう。

◇◇◇

『BLUE GIANT SUPREME』
親切なドイツ人クリスのことについて書きたい。

世界一のジャズプレーヤーになるため単身ドイツに渡った主人公の宮本大。
大と偶然知り合ったクリスは、身寄りのない大を自分の家に泊めて
ジャズバーに交渉し、客集めに奔走し、ライブを成功させようとする。
宿代はビールでいいよと、クリスは言う。

大はそんなクリスを不思議に思う。そしてこう尋ねる。
「クリスはどうして? どうして家族でもないオレにそんなに優しいの?」

それに対するクリスの答えがとてもいい。

 Be kind to somebody is just wonderful.
(人に優しくすることは ステキなことだからね)

それだけの理由で、あんなに熱心に親切にするなんて。
さも当然のように話すクリスのことを、ずっと忘れられないでいる。
私もいつかクリスのようになれたらと思う。

◇◇◇

クリスのようにはいかないけど
自然な気持ちでやれてることがひとつだけある。

妻と出かけたとき、重い荷物は私が持つようにしている。
何も言わず手を伸ばすと、何も言わず手渡してくれる。
そのやり取りがとても自然で、夫婦でよかったといつも思う。

感謝したりされたりは必要なくて。息を吸うように与えたり与えられたり。
小さな世界だけど確かにできてる。そんなことがなんだかうれしい。

その気持ちをもう少し広げていけたら。
そんな関係をもっと広げていけたら。

世界はどのように見えてくるだろうか。


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