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【青春18で行く】鉄道唱歌1人旅(東海道編第22番〜第24番)

22番

鞘より抜けて自ずから 草薙払いし御剣の
御威は千代に燃ゆる火の 焼津の原はここなれや

22番、まだまだ全体の3分の1です。東海道は長いのです。静岡を出て、安倍川を渡った列車は焼津の駅に到着しました。

歌に出てくる剣とは、日本武尊が敵に火討ちされかけた時に、叔母から授かっていた草薙の剣で草を薙ぎ払って、九死に一生を得たというエピソードで登場します。実はこの剣、鉄道唱歌にこの後もう一度登場します。

この伝説から「ヤキツ」の呼ばれるようになったこの地は、言うまでもなく現在の「焼津」という地名の由来になっています。そんな妄想を膨らませながら、富士山を後ろにどんどん進んでいきます。さっきまで目の前にあった富士の嶺も、もうあんな遠くに行ってしまいました。

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23番

春咲く花の藤枝も 過ぎて島田の大井川
昔は人を肩に乗せ 渡りし話は夢の跡

藤枝を過ぎると、再び川を渡ります。言わずと知れた大井川です。島田金谷間にかかるこの川は江戸時代から交通の要衝として、歌に歌われるような情景が当たり前のように展開されてきた場所でしょう。

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今となっては橋が何本も架かる大井川は、昔は渡るために人が人を運び、それにまつわる幾多の物語が生み出されてきた場所でもあるのです。

人を乗せて揚々と川を渡っていると思わせて、突然途中で立ち止まり、「これ以上は疲れたから、動くためには倍の値段が必要だブー」と駄々をこね始める川越人足、渡る前に安い運賃を提示しておいて、渡り終わってから高い運賃を請求するなど、割と現在の東南アジアなどの発展途上国における、タクシー事情と似た雰囲気を感じ取れて、今も昔も人間の狡賢さは変わらないのだなと大変興味深く思います。

「そんな過去は今では考えられない夢のような話だよ」と歌う唱歌は、鉄道の興隆を婉曲に表現できた素晴らしい歌詞だと感動しながら、引き続き同じ電車で先を急ぎます。

24番

いつしかまたも闇となる 世界は夜かトンネルか
小夜の中山夜泣き石 問えども知らぬよその空

大井川を渡ると、いわゆる中山峠と呼ばれている区間に差し掛かります。トンネルが多くなってくるため、上のような歌詞が思いつくのは納得です。

トンネルとトンネルの間、見えてくる車窓のほとんどは茶畑で埋まります。唱歌が作られたときにも、この牧之原一帯に茶畑は見られたのか、気になったので調べたところ、どうやら、ここらへんのお茶は鉄道の開通とともに栽培が開始されたらしいことを知りました。

美しい茶畑の風景を歌詞にしないことが難しいくらい一面に広がる茶畑に圧倒されながら、中山峠を越していきます。

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歌に出てくる夜泣き石というのは、ここら辺に残る石にまつわる伝説の一つです。夜になると子供の泣き声が聞こえてきます。怖過ぎてお話になりません。

おそらく、一般の乗客から見たら、この時の僕は相当おかしな客だったでしょう。川を渡るたびに外の写真を撮り、駅に着くたびに短い停車時間で駅名標を探し回る。長くて退屈と言われる静岡県の青春18きっぷ旅も、あたふたしてるうちに、すでに半分は終わってしまいました。次は掛川からスタートです。

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