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島旅を舐めるとこうなります。

「島旅がしたい」

大学4年になっても毎日活発な高校同期4人のLINEグルに送られた一言から、この旅は始まりました。

そこで、旅行ばかりしている僕が、半自動的に旅行代理店のような役割を担ぐことになり、旅先や旅程などを提案することになりました。その時に練りに練って計画した旅程は次のようなものです。

東京 → 下田港 → 新島(1泊) → 伊豆大島 → 東京

もうその頃には、東京発の便がすべて満席だったために、下田から船に乗る予定を計画し、帰りの便はしっかりジェット船の予約をしたのでした。下田までは、途中の熱海まで新幹線を利用し、朝9:30に下田を出る便に間に合うように東京を出発します。

というか、この時点で既に7月の後半。伊豆諸島方面への旅程を計画するには、あまりにも遅すぎる時期なのです。宿も唯一見つけた新島の民宿を予約し、新島のミルキーブルーの海を楽しみに出発当日を待ち望みにしました。

出発2日前になると、さすがに天気予報の心配をし出します。どうやら気まぐれな台風6号が進路を惑わせており、予報も右往左往です。だいたい伊豆諸島の天気も、曇りか雨といったところで、あまり期待できません。

まあ、なにはともあれ、島旅に行くのです。心配ばかりしても、旅がつまらなくなるだけなので、あのミルキーブルーだけを楽しみに出発の朝を待つことにしました。




全てが順調な幕開け

8月7日、朝6時半、東京駅。天気は快晴。いざ、下田に向けて、新幹線に乗車します。

こだま。
熱海でお乗り換え。
伊豆多賀駅。

伊東から先は、伊豆急行線となります。海の車窓がきれいなところ。

坂のある街。
片瀬白田駅。
行き先が同じなようで。
利島が見える。

東京からはるばる2時間半かけて、まずは静岡県下田までやってきました。

今度は、ここから船に乗って東京都の島々への向かいます。

駅前で捕まえたタクシーで、楽々港まで急ぐ。

無事、フェリー乗り場に到着。朝から乗り継ぎが詰め詰めだったので、緊張感のある朝でしたが、ひとまず問題なく辿り着けて一安心です。

タクシーの運転手さんにも「楽しい船旅を~」と送り出してもらい、いざフェリーのチケットを買いましょう。

この時まで、何も考えずに、「ああ今から自分は、船に乗って島旅に出るのだなぁ」と心弾んだ状態だったのでした。

目の前にはフェリーが。


まさかの宣告

9時ちょうど頃に、フェリー乗り場に到着し、神進汽船で新島までの切符を購入しようとします(予約なんてものは、もちろんしていないのです)。しかし、窓口で言われた1言目がこちらでした。

「今日、新島、欠航なんですよ」


?!


まさかと思っていたことが、実際に起こると、瞬間的に頭が拒絶反応を示すが、まさにこの時はそんな気持ちになりました。つい5分前に今日の便は波の状況を鑑みて、新島が欠航、それ以外の神津島、式根島、利島は条件付就航となったことが決まったらしいのです。なんでよりによって新島だけ。

一瞬の諦めのあとの次の瞬間には、別の島へ行先を変更することを考え出し、野生の勘を働かせて神津島の観光センターへ電話を掛けて宿泊先を確保します。スマホの画面を見ると、新島の宿泊先から「キャンセルしときますね」とSMSが届いていたところでした。

タクシーを降りてからここまでが30秒くらいの出来事です。


船の出発まであと20分。そこまでに宿泊先を確保出来たら、船に乗ることができます。

無事(?)、神津島の山下旅館が空いていて、宿を確保することができました。しかも、今日は神津島で花火大会があると言います。こんなことってあるんですね。すでに、頭の中から新島のミルキーブルーは忘れ去られています。

改めて、神津島までの切符を購入して、船に乗り込みます。ここまで来て東京に引き返し、という最悪の事態は免れたことに安堵し、胸を撫でおろしました。

いざ。
防波堤を超えて、外洋の揺らぎが本格化します。


なんとか島へ

ずっとデッキの喫煙所の近くにあるベンチでうとうとしていたら、島が近づいてきました。下田を出て、約2時間半、神津島多幸港までの至福の船旅の時間です。多幸感に包まれております。今まで乗った船の中で、一番揺れたような気がしますが、ディズニーランドのカリブの海賊と比べたら、可愛いもんです。

徐々に島が近づいてくる。
海は信じられないくらい青い。
初めて見る海の色だ。
二次関数みたい。
多幸港。

先ほど、電話にて旅館の予約をしたときに送迎バスも来てくれるとのことを聞いております。ここは、島の中心部の反対側の港。送迎バスに乗り込んで、まずは旅館に向かいます。

島の反対側へ。


はじめまして神津島

島の第一印象は、「海の見える坂の多い町」という感じです。耳をすませば、どこにいても波の音が聞こえ、潮の香りが漂い、背後に聳える天上山の圧倒的見守られている感が僕らを向かい入れてくれます。

目を閉じて、肌で感じる、島時間。天国のような島に来てしまったみたいです。

海。
山。

急遽、お世話になることになった山下旅館は、部屋から海が見える木造のゆったりとした旅館でした。

僕たちの部屋は「うめ」

島には島の、丁寧な暮らしが営まれております。

カーブミラーが目に留まる。

お昼ご飯を食べて、もうちょっとだけ、島の中を歩きます。


バスに乗ってぶらり

ひととおり、島の中心部を散策したら、レンタサイクルでもして、島の先っぽにある赤崎遊歩道というところに行ってみることにしました。

と、その前に、明日の帰りの便の変更をしてもらおうと港に立ち寄ります。行ってみると、東海汽船の窓口が「本日は多幸港にいます」とシャッターを閉めおろしていたので、まごついてしまいました。

ふと窓の外を見ると、赤崎遊歩道まで行く村営のバスがちょうど出発しようとしているところでした。レンタサイクルの予定は変更です。早速、バスに乗り込みましょう。

初めて見たけど、トラスの部分は流石に木じゃないのか。
ここら辺を歩いている時に、防災無線で観光課から、
「本日の花火大会は、高潮のため延期です。」と。
そんなに、話がうまくいくはずがないよなあ、と。
ちなみに、次のバスは1時間来ない。
なので、周りも少し散策。
うたたねの平石。どんな伝説があるかはよく分からない。
多分、採石で使ったトロッコ廃線跡。
大黒根トンネル。
片側の入り口は岩でふさがれていることで、大変有名(?)。

てことで、バスに乗ってまた街に戻ります。

途中、一瞬だけザーザーぶりに。


サンセットの街を歩く

皆との窓口で、東京までの帰りのジェット船も変更してもらい、夕食の時間まで、まちをぶらぶらしました。

原付のある暮らし。
耳をすませば。
ミャオ。
横道展望台。

本当にいい島だ。同じ東京都だとは思えない。東京にもこんな暮らしがあったのか。

宿に戻って夜ご飯です。

本来なら、この島にもこの宿にも来るはずじゃなかったんだけどなあ。

夜、お互いの卒論テーマについて熱く語り合いました。薬学や情報工学、景観工学、それぞれの分野が専門的になりすぎてて、学術的背景は全く理解できず。それでも楽しいのが、高校同期との会話なのです。

寝る前に、神津島の星空を撮りに行きましょう。この島は、全国でも珍しい星空保護区と呼ばれる地域に指定されています。

街灯も下を向き、空が明るくならないようになっております。あと歩きながら気づいたのですが、灯台が見当たりません。徹底的に暗くしているのですかね。

雲がいい感じ。


目覚めの知らせ

2日目、台風6号が迫っているので、心配してはいたのですが、起床と同時に今日の船情報を見てみます。


をい。


僕の「えっ!」という声で部屋に寝ていたほかの3人が起きてしまうほどの驚きであったことは間違いありません。

下田と神津島を結ぶ、昨日も乗った神進汽船だけが条件付就航ということだったので、再び下田を経由して帰ることになりました。

まじかよ~と思いながら、朝ごはんを食べに行きます。

下田のフェリー発着所に電話すると、昨日の朝にも話したおばちゃんが電話に出てくれて、「散々だね~、予約しとくよ」と受け入れてくださり、無事帰路を獲得することができました。

全く、船旅とは大変なものです。つい数時間前まで考えていた旅程が、一瞬で水の泡になることが多々あるのですから。

ということで、船も早着するということなので早々とお土産を買って、バスで多幸港まで向かいます。

バスで山を越えて、多幸港へ。


奇跡の帰還

港に着くと、今日を逃したらずっと島から抜け出せなくなることを懸念して、多くの観光客が窓口に列をなしています。

電話で先ほど予約した僕たちは、切符の購入を済ませて、船が下田から到着するのを待機することになりました。

この時の盛り上がりは、島内でも珍しいことらしく、どうやら我々はとんでもないときに島旅をしてしまったようです。

船の待ち時間で、多幸港周辺を散策します。

11時半ごろ、ついに船が見えてきました。

来たー!
〆の一杯。
眼前の海をつまみに。
行きの船と違って、満席。

出発当初は、全く思い描いていなかった旅行になってしまいましたが、なんとか帰還することができました。二転三転してもどうにかなるのが、旅というものなのです。

ついに。

下田港から駅までは臨時で有料のバスが運行されるほどです。僕たちは、歩いて駅まで向かいました。

帰りは踊り子で、東京へ戻ります。


旅の始めから終わりまで、島旅を舐めに舐めまくった結果ですが、振り返ってみてもなんだかんだ、とても素敵な島旅になったと思います。

ハプニングがなければ、神津島にも訪れなかったし、あの星空も見ることもなかったとすると、旅は道連れ、世は情けというわけです。島に住む人は、この言葉をしっかり理解して、僕たちを向かい入れてくれたのように感じます。

島を訪れると、海や台風など自然の脅威と隣り合わせであることを感じざるを得ず、そういえば日本は島国だったということを思い出させてくれます。

夏の旅先に、伊豆諸島。ぜひ振り回されて、忘れられない島旅を楽しんでみてもいいかもしれません。


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