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南会津・伊南川タケナグラ沢(沢登り)

季節はすっかり秋めいてきたが、紅葉の盛りには少し早い10月半ば、南会津の渓を訪れた。国道352号線が檜枝岐村に入る少し手前、小豆温泉の目の前で伊南川に流れ込むタケナグラ沢という小渓である。
伊南川を渡る錦秋橋という橋から滝が連なっているのがよく見える。ネットでも滝の写真がいくつか紹介されているスポットだ。

国道352号の錦秋橋からタケナグラ沢出合を見下ろす

出合からいきなり滝が始まるが、大きな滝ではなく小滝が連なって高度を上げて行く。過去に大きな雪崩で国道が閉塞するなど被害が出たためか、途中に何か所か丈夫そうな雪崩防止ネットが架かっている。いきなり始まる小滝群をどんどん登ってしばらくすると、少し大きめな7m滝。ここは直登せずに左岸から小さく巻いて滝の上部へ出て水流右を登って越えた。

出合から30分ほどの7m滝は左岸を小さく巻いて越えた
7m滝の落ち口から振り返ると、下の方に小さく小豆温泉の駐車場が見える

さらに続く小滝群を登って行くと、前方にかなり大きな滝が懸かっているのが見えた。近づくと見上げるような大滝である。3段になって落ちてきており、全部で20m超の規模。ここも直登は避けるのが賢明と、右岸のざれたルンゼを上がって小尾根に取りつき、滝の上部へ回り込む。
1時間近く高巻いて沢に戻るとちょうど滝の落ち口で、うまく巻いたなあと悦に入っていたら...ちょっと早とちりだったようだ。この早とちりの顛末については文末をご覧いただきたい。20mという高さは、うまく巻けば1時間もかかるものではない。

Co1000付近には20m級3段の滝が懸かっている
右岸の小尾根に取りついて高巻くが、なかなかの急傾斜だ

大滝から上は傾斜も緩み、困難な滝もなくなる。が、沢が開けて陽が差し込むからか、藪が被ってきて煩い。大滝を越えてからすっかりヤブ沢と化した流れを登って1時間強、Co1260付近の小さな流れから黒檜沢へ乗っ越す。鞍部へは15分くらいで到着。周囲のブナの森がとても美しく目を奪われる。黄葉(ブナは黄色く色づくので敢えて"黄"葉)が始まろうという時期で、最盛期ほどの鮮やかさはないが、快晴の青空の下で輝くブナの森はもう勝手に顔が綻んでしまう情景だ。

明るい陽の光の中でブナの森が輝いている

コルから少し下ると、小さな湿原(といっても今の時期は泥沼状態だが)に出る。ここから流れを降って1時間ほどで黒檜沢Co1100付近に降り立った。
出合付近は幅の広いゴーロ。そこから大岩の上を伝ったり、台地の踏み跡を辿ったりして1時間ほど下降を続けると、前方が狭まりゴルジュになる。

もうすぐ登山道だが、渓はゴルジュとなり奥には滝が落ち込んでいる

そのまま下降するのは難しそうなので、左岸台地の踏み跡をしばらく辿ると、ルンゼに突き当たって踏み跡が不明瞭になった。もうすぐ登山道というところなので、ルンゼの右岸の斜面を登って登山道へ詰め上げることにする。途中からルンゼに入ってぐんぐんと登ると、今日の相棒が前方に道らしき平場を発見。よじ登ると立派な登山道に飛び出した。
三岩岳の登山道としては近年歩く人も少なくなった道だが、よく踏まれてはいる。途中、相棒はキノコやムカゴを探しながらゆっくりと降りて来る。沢の中でもナメコを少し採ったりしていたが、下山の道でもそれなりに収穫があったようだ。
登山道に出てからは1時間ほどで登山口へ降り立つ。登山口のすぐ脇が黒檜沢に架かる橋なので、入渓点や橋の前後に懸かる二重滝を見学してから車に戻った。

駐車場で片づけをしてから、駐車場から車で1分の窓明の湯でのんびり温まる。その後、舘岩経由で東北道に向かう途中の地元商店にて地酒を仕入れて帰路に就いた。

で、前述の早とちりについてだが…
帰る途中の車内で相棒がスマホをいじりながらああっと大きな声を出した。何事かと思ったら、他会がネットで公表しているタケナグラ沢の唯一の遡行記録(福島登高会さんの1992年9月の記録)を見て、大高巻きをした滝は実はさらに3つの(三段のではなく)滝が続く連瀑帯だったことを改めて発見したのであった。
...いや、事前にその記録には目を通していたのだが、遡行できる渓だねという程度の認識を得たのみで細かくは見ていなかったから、巻き終えて落ち口ぴったりと思った落ち口は下から見上げた3段瀑の最上段の落ち口だとばかり思いこんでしまっていた。

大滝を巻き終わると落ち口ぴったりの場所に出てきたのだが…

ところが、本当はさらにその上に懸かる連瀑帯の最上段(件の記録によると、一番下の三段瀑の上に20m2段、10m、3mと滝が連っているらしい)だったのである。
結果としては全部を巻かないと越えられなかったのだろうが、途中の滝を見逃したのは残念と言うか迂闊というか、なんか修業が足らぬという気持ちになったのであった。


  • 日程:2023年10月14日(土)

  • 天候:晴

  • メンバー:tapiola(L)、nt

  • 地形図:檜枝岐、内川

  • コースタイム:小豆温泉スノーシェッド駐車場(8:10)-タケナグラ沢入渓(8:40)-大滝上(10:53)-Co1260枝沢出合(12:15/12:35)-黒檜沢Co1110枝沢出合(13:55/14:00)-三岩岳登山道横断点(16:15)-三岩岳小豆温泉登山口(16:40)-小豆温泉スノーシェッド駐車場(16:48)

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