obscures
基本、車で移動が多かったので遠くに旅することになっても『まず飛行機』ではなくてフェリーの時間帯と値段をしらべるのが日常的だったのだ。
わたしたちがそれぞれ別の場所で次の日常を過ごすことに決めたときにもまずはフェリーの時間帯と値段を調べることから始めた。荷物なんてそんなには多くなかったし大きな家財道具なんてものは『秘技 実家預かり』を駆使すれば容易いことだ。
いつもどちらかがどちらかを夜中のフェリーターミナルまで送ってく。昨日の続きのなんてことない話をしながらどちらかがどちらかのために車を走らせる。一緒に選んで貸りたのにとうとう観ることのできなかった映画のことをふと思い出すけど口にはださない。
時々黙り込んで、ちいさくあけた窓から外へながれてくたばこの煙をじっと見つめる。さめかけたコーヒーをすする。
おおきなおおきな暗いターミナルにおおきなおおきなしろい船が静かに浮かぶ。
ちいさなこどもをいたわるみたいなハグをする。ついでみたいにキスをする。
埠頭に止めた車の運転席からくらい海のしろい船を眺める。
おおきな船のしろい柵のこちらがわからくらい海の向こうの街灯りを眺める。
先週観そびれたあの映画をひとりでわたしは観るのだろうか。 彼もどこかで思い出し何かのついでにTSUTAYAにいくことがあるだろうか。
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