Kについて

Kとは私の働いている会社の社長の弟で、仕事で数回しか会ってないのにも関わらず、私は既にKが好きなのである。


まず簡単にKについて紹介をする。
男。年は推定45~50。金髪。
この町で車の板金屋を営んでいる。
宮川大輔に似ている。
超簡単に紹介するとこのように何の変哲もない人間なのである。


Kと初めて会ったのは、Kが私の働く会社に訪れた時だった。
Kは限りなく三輪車に近い自転車で登場した。赤の、幼児サイズのサドルの低さで車輪はジムにある一番軽量なバーベルみたいなやつだった。しかもヘルメットしてる。
会社のゆるやかなカーブのある駐車場を、車輪がそんなんなので超ペダルを回して漕いでいた。
まずそれが光景として面白くて、最初は何者か分からなかったが後に社長の弟であることが判明してからは、動向を注目するようになっていった。


実はKの話は会社内でも度々話題に上がる。
Kはこの周辺の会社所有の土地で夜な夜なショベルを操縦して深い穴を掘っているらしい。
社長夫妻が午後8時頃、3キロのウォーキングをしていた時のことだ。
暗闇から重機の音が聞こえて誰がこんな夜に、となって近寄って行き、懐中電灯をショベルの操縦席めがけて照らしたら、Kだった。


社長夫人が言う。
「ほんとおかしいの、どうかしてる。近所迷惑だし何で穴掘ってるの?ってきいたら、操縦席からゆっくり降りてきて言ったの。温泉掘り当てたる!って。」
その一日だけで、ショベルが埋めれるくらいは深い穴になってたらしい。
それでさらに好きになった私は、Kについてのエピソードを聞き漏らすまいと耳を研ぎ澄ましながら仕事をするようになった。


すると、その数日後、私の働く会社の20人くらいの人のLINEにKがメッセージを送っていたことを知る。『一緒に温泉掘り当てよう!手伝ってください。』
全員から既読無視をされたらしい。

偶然、Kのインスタのアカウントを見つけてしまった。
これは本当に偶然だった。
私が月に数回行ってるカフェのアカウントのストーリーにKがいた。


Kがタグ付けされていたため、プロフィールを見てみると自己紹介文がめちゃめちゃ面白かった。一部分だけ紹介すると、『軽トラ選手権世界大会出場』とある。正直めちゃくちゃ面白い。

 今日、そのカフェに行ってみることにした。いつもの奥の席に座る。私は注文したモーニングを食べながらYouTubeでかまいたちのエゴサしてみた動画を見ていた。
すると、Kが来た。まさしくその声はKだった。

 K「東ティモール、モーニングD」
東ティモール、モーニングDはまさしく私が頼んだものと一緒だ。
かまいたちの動画を一旦停止してマスターと喋るKの話を盗み聴きした。

「クロワッサンをプレスする意味が分からない」について話している。

私はもはや、Kが何について話をしていても笑える。


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