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大坂なおみ選手うつ病告白で日本スポーツ界の精神風土が変わってほしい


テニスの大阪なおみ選手がパリ大会を棄権することになった。
発端は試合後の記者会見拒否を表明したこと。
個人的に、大坂選手のファンのため、これ以上パフォーマンスが見られないのかと思うと何とも言えない気持ちになった。


うつ病告白で流れが変わった?

大坂選手が記者会見拒否を発表した段階ではまだ、否定的な意見の方が優勢を占めていた。しかしその後、2018年の優勝時以来、ずっとうつだったことを公表するや否や、大坂選手を擁護する声の方が多数を占めるようになったと感じる。

メンタルヘルスの問題は、日本より西欧諸外国の方が敏感だ。日本人に比べ外交的な性格の人が多い海外では、心の落ち込みや憂鬱も「病」としてとらえられがちなのかもしれないが、それでもスポットが当てられ、周りに知ってもらうことで、少しでも状況を改善しようという方向に向かうのが、個人的には「羨ましいな」、とさえ思っている。

今回、大坂選手がうつを告白したことで、彼女に対し同情的な目で見る人が増えたのは、問題を提起したという点で見れば、結果的は良かったのだと思う。(彼女自身は同情されたくはないのかもしれないが)。

世界のトッププロスポーツ選手が鋼の肉体を持つのと同様、心も鋼だと我々庶民はつい思ってしまうが、実はデリケートなハートを持っている人もいるのだと、今回の件で分かったはずだから。


心を鍛えるという名の暴力

メディアの記者会見だけでなく、多くの指導者、特に日本の指導者は、スポーツ選手に対し、肉体の鍛錬以上に、精神の鍛練を課す傾向が顕著だ。確かに、過酷な試合では、心の持ちようが戦績に大いに影響するから、メンタルを鍛えることは大切なトレーニングの1つと言えるかもしれない。

しかし、科学的な根拠に基づいた指導ならともかく、多くが、「自分が受けてきたから」という理由だけで、やたら心を傷つける言動・行動をとってはいないか。

自分の言うことを聞かなかったというだけで過度な体罰を加えたりする、中高生の部活指導者など、もはや犯罪とさえ感じる。それを容認する生徒の父母も、実はそうした指導の下で育ってきたからなんとも感じないし、感じる人がいても同調圧力が働いている組織では声を上げることができず、結局辞めざるを得ない事態に追い込まれる。

パリ大会の棄権を表明した今回の大坂選手も結局同じではないのか。
自分の発言が波紋を広げ、場の同調圧力を乱した責任をとろうとする日本人らしい発想と言えるのではないか。


スポーツ選手が心の病を訴えても受容される時代へ

ただ、今回は世界が放っておかなかった。
もしこれが日本国内だけだかったら、大坂選手が悪者に仕立て上げられ、退場するのもやむなしとされたかもしれない。

しかし、西欧世界は先に述べたようにメンタルヘルスに敏感だ。
心の不調を訴える人に対し、排除せず、見守っていこうという機運が興っている。多くの人が大坂選手の心情に理解を示してくれた。
かつては鍛えられて当然とされたトッププロスポーツ選手の心のありようを、「病/健康」という側面で受容される時代へと変わったのだ。

体を鍛えてもけがをしたり病気になったりするように、心も鍛えてもけがをしたり病気になったりする。そこにアスリートと一般人の区別はないと、今回初めて世界は認めたのではないか。

内向的でシャイで、とてもピュアで真摯な大坂選手は、BLM問題も含め、本当に世界の人に大きな大きなプレゼントをしてくれる。

こんなにチャーミングで素敵な若い女子が日本人であるって、ものすごい誇りに思う。

大好きだ、なおみちゃん。


部活やスポーツ界は選手のメンタルを尊重してほしい

今回の件を通じて、世界のスポーツの流れが、選手のメンタルヘルスをもっと意識するように変わっていくだろう。日本も、対岸の火事と思わず、積極的に変わっていってほしいと願う。

メディアの対応の仕方、指導者の指導の在り方、選手を取り巻く私たちファン。この3者がともに、選手をモノ扱いせず、豊かなハートを持ったセンシティブなひとりの人間に対応するんだということを意識するだけで、状況は変わると思う。

なによりも選手の最高のパフォーマンスのために。


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