tari

1週間168時間のうち4時間を創作に充てるべく、始めました。

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1週間168時間のうち4時間を創作に充てるべく、始めました。

最近の記事

隣で

冷たく、硬くなった。 そこにある形あるものを 愛おしく思っていたのではなかった 寄り添って話しかけて来たことを 思い出しているのではなかった 冷たくなってから触った時の少しの驚きが消え 長い息を少しずつはきながら 安らぎが私の体に入り込む。

    • ためらい

      • 穏やかな絶望

        • 灯りを消した廊下を 部屋の扉から漏れる光が 少しだけ明るくしている 光が動く 彼女はまだ起きている 僕は静かに通り過ぎる この扉を 開けたいことを 悟られないように

          癒えたようで 元には戻らない傷がある そんな 忘れてた傷が痛む時 その傷が僕に問いかける 傷を負う前よりも 強くなったつもりなのかと 痛みが僕に語りかける この傷は一生治らないと この痛みからは逃れられないと そして 逃れようとして弱くなれと

          呼吸

           息をはかずに吸い込む息が深すぎると、僕らは過呼吸で意識を失ってしまう。  でも僕はある時期、毎日意識を失わずに、深く深く息を吸いながら暮らしていた。  誰かを少しだけ傷つけることが心地よく、傷つけたことで自分の心も痛むことがまた心地よかった。  日々接する友達とは、映画を見て音楽を聴いて酒を飲み、河原辺りで転がりながらくだらないことを言い合い、朝になれば分かれた。  いつもどこか醒めていることで、そして深く深く息を吸うことで、体の中から出ていかない爆発しそうな気持ちや取り返

          夜に

          家に帰り 途中で買った惣菜を並べ 酒で流し込み かけていたピアノの曲より  飲み込んだ 喉の音の方が大きくて 曲を止め 体の中の音が止まるのを待った 外でバイクが走る 虫が鳴いている 誰かが歩いている 風が窓を揺らす 部屋の蛍光灯は 耐えきれずに 小さなノイズをたて始める グラスの酒は 何も語らなくなり 一日が終わったことを知らせる 今日が 昨日と  何も変わらなかったことに 安堵とあきらめのため息をついた

          急行列車

          映画も終わり街に出て まぶしさに慣れないまま 最初の言葉を選びあぐね 二人無言で歩いた パステルカラーに染まった女の子達の横を過ぎ 少し息苦しくて 駅へと急いだ 人が周りにいると自然に話せないその理由は 僕には分からないけど、君にも分からないようだった 人の波に流されて 作られた夢背負って 停まることも許されず 僕たちの急行列車 そんな列車の窓から外を 眺めている君を見ると こんな世界に生まれたことが いつもよりずっと悲しく思えた

          急行列車

          たそがれ

          学校からの帰り道を 変えてみた 高2の秋 登り切った坂からは 僕の町が全て見えた ブレーキ握りゆっくりと降りると 風が涼しく優しかった 冬の初めの強い雨に 濡れながら家路を急ぎ 背中越しに名前を呼ばれ 振り返ると彼女がいた 「入ってく?」と傘を指さしたけど 「大丈夫」と声を出した 中ニの頃 隣の席になり 好きな本と音楽の話をした 今も同じクラスだけど  目の合う力が強くて 話しかけられずにいた 雨に打たれて風邪をひいて 3日休んだ帰り道に 自転車押して坂を上ると 彼女が

          たそがれ