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第12話 しょうちゃんがペットショップに連れて行かれちゃう!?

今日はいい天気だ!

南側に向かったリビングから明るい日差しが入ってくる。

お日様の光がまぶしいくらいだな。


ママも、娘のしょうちゃんも、ケージのカギを閉めないからボクはリビングの好きなところに自由に行ける。

だけどボクがケージに入れば、おやつをもらえることになっているよ!

何かおやつが欲しい時はこのケージに入ると大抵もらえるんだ。

こんな事はペットショップではなかった。

ご飯は毎日、おやつも時々もらえたけど、自分から欲しいとは言ったことはないよ。



あーボク、幸せかも…。

ボクには友達もいないけど。

やることもないけど。

食べることが一番の楽しみだもんね。


二人が出かけるときは、タイミングをみてサッとケージに入るんだ。

そうすると、ジャーキーや煮干しなんかをもらえるよ。


おやつがもらえたのを確認して今度は玄関に急ぐ。

二人が出かけるから、ワンワン吠えて見送るため。

ケージの中のおやつが気になるけど、お見送り。これ飼い犬の仕事だよね。

仕事はね。

やりたくなくても、遊びたくてもやらなければならないんだ。

二人の匂いが玄関のドアの向こうに消えたらOK。

二人はエレベーターに消えた証拠。

もうしばらくは戻ってこないんだ。

急いでケージに戻って、もらったおやつを急いで食べるよ。

すぐに食べないと、誰かにとられちゃうかもしれないもんね。


でも今日は、ケージに入ったのにおやつが出てこない。


いつも同じ服を着て急いで出かけるしょうちゃん。

だけど、今日はいつもの服とはまるで違うものを着てるし、慌ててもいない。


ママもだ。

お茶なんか飲んで、余裕のカンジ。


明らかに二人とも変だよね。

どうしたのかな?

ボクは二人の会話からその理由を聞き漏らさないように、耳をピンと立てた。


「そろそろ出かける?」とママ

「うーん」と、しょうちゃん。

ソファに深く座った両腕を大きく上にあげて伸びながら、返事ともあくびともつかない声でそう言った。

しょうちゃんは「行く」と返事をしながら、あまり乗り気ではなさそう…。

しょうちゃん、ホントは行きたくないのかも。

ママが誘っているところは、イヤなところなのかも。

まさか、次のペットショップに行くとか…。


ボクは、これまで店員さんの「出かける」という言葉の後で、楽しかった事は一度もなかったことを思い出していた。

車に乗って長い長い距離を何回も移動したんだっけ。

たくさんの仲間たちと大きなケージに入れられて、揺れる車の中でビクビクしていたんだ。

車が揺れるたびにボクの胸は気持ち悪くなったし、これからどうなるか心配で心配でたまらなかった。

そして着いたところは、いつも同じようなペットショップだったけど、その度に威張ってるヤツがいたし、臭いも前とは違うし、ホントにイヤだったな。

そんなひとつひとつのシーンがボクの頭の中をグルグル駆け巡る。

ボクは眠くもないのに目がトロンとして、おまけにフワ~とあくびをしていることに気が付いた。


しょうちゃん、かわいそう・・・。

ボクは聞き耳を立てるのを止めて、二人に気づかれないようにそーっとケージに入った。

ここにいると安全のような気がするんだ。

危険が迫ってるのは、ボクではなくてしょうちゃんなんだけど。



そう思った次の瞬間、しょうちゃんがソファーからいきなり立ち上がってケージの前に立った。

「ポッキー、行くよ」

ボクの心臓は飛び出しそうになった。

明らかにボクを引きずり出そうとしてる!

ギョギョッ!

ボ、ボクを連れてくの?イヤなところに?


ボクを見下ろすしょうちゃんの体は大きい。

ケージの中のボクには巨人のように見えている。

ボクは片方の前足を浮かせて、逃げの体制に入った。

だけどしょうちゃんがボクを引きずり出して抱っこするのに時間はかからない。

ボクは、死に物狂いで体を激しくゆすって抵抗した。



ヤダー!

ボクはやっとここにたどり着いたんだから。

もう次のペットショップには行きたくないんだ!


今にも床に落ちそうに抵抗するボクを、ママが横から入ってボクをしょうちゃんから引き離した。

右手をボクのおしりから通して腕に乗せ、指で首を挟んで抱っこした。

ボクの脇も他の指でしっかり固定された。


ボクの体の動きはピタリと止まった。


「ポッキーちゃんのリードを買いに行くんだよ」

ボクはそれを聞いてホッと胸をなでおろした。

ママの口角は少し上がり、首を傾けてボクに「イイね」の合図をした。

ボクは思わずママの指を、言い訳程度にひと口なめて、上目づかいでママを見上げていた。





今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。犬のあくびは人間のそれとは違うようですね。
後で知ったのですが、犬はストレスを緩和するためにあくびをするようです。

また次回ポッキーの話を聞いていただけるとありがたいです。


















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