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第5話 どうやらここは安全らしい…だけどちょっと大事件が

飼い主さんの家に来て、一夜が開けた。

昨日の夜、二人が寝てしまった後は救急車のサイレンが聞こえた位だった。

昨日はご飯やお水を十分貰えたし、沢山遊んでももらえた。

それに、寝床はペットショップに居たときと同じ物だったから安心できた。

お姉さんとお母さんは、髪の毛をとかしたり、口に赤いものをつけたりしている。

「ポッキー行ってくるね。お留守番しててね。」

暫くすると、二人は何処かへ出かけてしまった。

急に静かになった。
このおうちに、ボクだけ残されてしまった。

ふと部屋を見回すと、白い紐が目に入った。

かじってみると、かなり硬い。ボクはその紐をかじるのに夢中になった。


そのとき、扉の向こうで人の声がした。
ボクは耳をピンと立てる。

足音と共に通り過ぎる声がする。
でも知らない人の声ばかり。

ボクはつまらなくなって床にアゴを付けてしばらく眠った。


また人の声。ん?この声は…あの二人だ!

ボクは扉の前に走っていった。

「ただいま!」

その声でを着て、ボクはその場でクルクル回って尻尾を振った。
嬉しいときは、体が勝手に動いちゃうんだ。

娘さんがボクを抱っこした。やっぱ彼女の抱っこは不安定だな。
落とされそうで怖い。
ボクは体をグイグイひねって下ろしてもらった。

すると、先に部屋の奥に入ったお母さんが驚いたような声を上げた。

「ウワーッ」

何だ?

お母さんの声を聞いて、娘さんも急いでその部屋に入っていった。

「あーっ」

お母さんと同じような驚いた声がした。

「なにこれ!コードが穴だらけになってるよ。もう使えないよ。」

お母さんは怒ってるみたい。

なんかいけないことをしちゃったのかな?
ボクは思わず顔をそむけた。

するとお母さんはボクを乱暴に抱き上げ、ボクがかじった紐の前に連れて行った。

そうして、鼻先を紐に近づけて

「ダメだよ、こんなことしちゃ。」

とボクに叱りつけた。

この紐…かじったらいけなかったのか。

だけど、大事な紐ならしまっておいて欲しかったよ。

「あらあら〜」

と娘さんの声。

娘さんの言い方は、お母さんの怒りを面白がってるようにも聞こえる。

ボクは体をなるべく低くして、お母さんの怒りが収まるのを待った。

ごめんなさい、もうしないから許して。

お母さんはボクの反省した気持ちが通じたのか、ふぅと小さくため息をつくと、他の部屋に行ってしまった。

今度は娘さんがしょげているボクにこう言った。

「これは、かじるものじゃないからね」

そして、そのひもをくるくると巻いて高いところにしまった。

このお家ではやってはいけないことがたくさんあるみたい。

ボクはこれからいいコで暮らせるのかな?
また叱られるようなこと、しちゃうかも。

そう思うと、心配になってきた。

ポッキーがかじってしまったこの紐がなんだったのか。
スタンド型電気シェードのコードだったんです。そりゃお母さんも驚きますよね。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。

次回もお楽しみに。























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