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僕の義母は寄せ箸系

僕は季節に関係なく鍋料理が好きだ。そのことを知った僕の義母が、特製の鍋料理を振る舞ってくれるという。

しかし、僕は「他人」の作った手料理を食べるのが苦手だ。愛する妻の手料理を食べるのは幸せだし、お店の人が作った「商品」としての料理は美味しく頂ける。でも、それ以外の人の作った料理はできれば食べたくない。

だから、義母の手料理は本音を言えば食べたくない。でも、そんなことは言っていられない。今日はたくさん食べなければならないし、「美味しい」と言わなければならない。

今後の関係を良好にするためには、わがままは許されない。僕は心して妻の実家に足を踏み入れた。

義母が用意してくれたのは、キムチ鍋であった。「隠し味にヨーグルトを入れている」らしい。しかし、僕にとって隠し味は無意味だ。なぜなら、今日は味がしないから。おっと、いけないいけない。「美味しいです!」僕は笑顔を作り続けた。

そして、このときに気づいたことがある。結婚して3年経って初めて気づいたことだ。一緒に鍋を食べなければ、一生気づかなかったかもしれない。

僕の義母は寄せ箸をする人だった。

なるほど、そういうことだったか。誰かの影響を受けないと寄せ箸なんてしないもんな普通。お義母さん、娘さんはお義母さんの教育によって立派に育っていますよ。

しかし、お義父さんはこのことについてどう思っているのだろう。見たところ、お義父さんは寄せ箸をしない。

聞いてみたい。できれば、お義父さんと語り合いたい。

「寄せ箸は嫌ですよね。やめて欲しいですよね。僕は我慢したんですよ、だいぶ」

お義父さんなら、この気持ちをきっとわかってくれるはず。

でも、聞くことでお義父さんとの良好な関係が崩れてしまうかもしれない。「寄せ箸ごときを気にする、心の狭い男」と思われるかもしれない。それは嫌だった。

どうしよう。

僕はそんなことを考えながら、シメの麺をすするのだった。



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