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未来の建設業を考える:建設論評「プラネタリー・バウンダリー」(2021年11月4日)

第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)

 先般、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が英国グラスゴーで開催され、わが国の岸田首相がアジアなどの脱炭素を巡る技術革新に新たに5年間で最大100億ドル(およそ1兆1400億円)の追加支援を表明したり、インドなど温室効果ガス主要排出国の実質ゼロ目標や温室効果ガスの吸収源となる「森林伐採」の抑制で合意したりするなど、一定の成果をみることができた。

ヒト(学名:ホモサピエンス)の数が、ここ数十年で急速に増加

 COP26の課題は、温室効果ガスの排出抑制であるが、そもそも温室効果ガスが増加した根本的な理由は、ヒト(学名:ホモサピエンス)の数が、ここ数十年で急速に増加したことにある。ヒトの数は、2000年前はわずか3億人、1700年代でも6億人、1800年で10億人、1900年で17億人、ところが、2000年には60億人、2020年には80億人と急速に増加している。当然ながら、ヒトが生きるためには人口分の食糧が必要で、食料生産や生活を豊かにするためのエネルギーに、これまで地球深く二酸化炭素を蓄えていた石炭や石油を大量に消費した結果、ここ数十年で急速に二酸化炭素が増加したのが実態だ。

九州と四国を合わせた面積に等しい約6万平方㌔の土地が砂漠化

 国連環境計画(UNEP)によると、世界では毎年、九州と四国を合わせた面積に等しい約6万平方㌔の土地が砂漠化している。砂漠化の原因の87%は過剰な放牧や開墾など人為的要因と考えられている。一方、毎年喪失する森林面積も、本州の約3分の2と同じ面積にもなっている。
 その結果、二酸化炭素排出量は1960年の年90億トンから、年335億トン(2018年)に増加。大気中の二酸化炭素濃度も、産業革命前の280ppmから2014年の400ppmとなり、過去80万年の中で最多となっている。
 1906年から2005年の間に世界平均地上気温は0.74℃上昇し、20世紀を通じて平均海面水位は17cm上昇した。また、最近50年間の気温上昇の速度は、過去100年間のほぼ2倍に増大しており、気温上昇の大きな要因は温室効果ガス濃度の増加であると言われている。

「プラネタリー・バウンダリー」を超えつつある

 国連の予測では、この先人口は2050年には97億人にまで膨らむと予測されており、人間活動の限界を超え、地球環境に不可逆的なダメージを生じさせる「プラネタリー・バウンダリー」を超えつつあるとの指摘もある。「プラネタリー・バウンダリー」では安全域や現価値を示す9つのプロセスを定めているが、すでに気候変動、生物多様性の損失、生物地球化学的循環は2009年時点で限界を超えたともいわれている。
 ヒトを減らすことはできないが、エネルギー諸費を抑え、温室効果ガスを抑制することは新たな技術で可能なはずだ。
 ローマ帝国はセメント製造やローマ風呂の原料となる「薪(まき)」を求めてアフリカまで領土を拡大したが、最後は、資源が枯渇し、ローマのインフラ維持ができなくなり、巨大な帝国は崩壊していった。
 我々地球の資源も限界に近づく。プラネタリー・バウンダリーを超えようとしている今だからこそ、建設業界に携わる我々自ら、既存施設も含めて、地球環境にやさしい省エネルギーや二酸化炭素削減技術、新たな設備の導入を進め、我々の住まいである地球が永続的にヒトや動植物の基盤であるよう、全力を傾けていきたいものだ。手遅れにならないためにも。

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