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未来の建設業を考える:建設論評「新入社員に贈る「松・竹・梅」」(2022年4月1日)

木造建築に注目

 竹中工務店は高さ70mの木質超高層ビルの着工を発表し、住友林業も高さ350m、地上70階建ての開発構想を公表するなど、地球温暖化対策もあり、木造建築に注目が集まる。
 確かに、木材は地球環境にやさしい素材だ。その理由は、①木製のCO2排出量は、金属製の2割程度と圧倒的に少ない。②伐採、製材された木材でも、約6割のCO2は排出されず固定され、蓄積可能、③木質系残廃材の環境負荷はとても小さい、④伐採、植林による森林管理をきちんと行えば、国内木材需要の7千㎥に対し、それを上回る年間樹木増加量1億㎥が確保でき、持続再生可能な材料となるからだ。

伊勢神宮の式年遷宮

 古くから日本では、木材が建物の材料として使われてきた。
 1300年続く伊勢神宮の式年遷宮はその典型だろう。遷宮に使われる主要な木材は国産のヒノキ。樹齢100年を超え、中には400年以上の巨木も使われるそうだ。この木材の準備だけでも、4年もかかる。伐採後、2年間は貯木池に沈め、木の余分な油を抜くために水中乾燥させる。その後、1年間は野ざらしにして、四季折々の厳しい自然条件に木をならす。その後の1年で製材をして、はじめて利用できる材料となる。じっくり時間をかけて準備した木材は、割れや反りに強いしっかりとした品質の木材になるそうだ。
 工事には1万本ものヒノキの良材が使われ、木材の切り出しに始まり、製材、乾燥、刻み、建て方と続く全工程は8年もかかる。大工職人も、20代の見習いで初めて遷宮を経験し、2度目は40代で作業の中心を担い、3度目は60代の棟梁として後継者づくりに携わる。

世界で最も古い木造建築

 ところで、世界で最も古い木造建築は、皆さんご存知の「法隆寺」だ。建設年は607年。670年の落雷による火災で再建されたことが日本書紀に記載されているが、それ以降、大地震を経験しながらも、地震で倒壊した歴史はないそうだ。世界の木造建築の古さの順で、10位までがすべて日本の建築だ。2位以下は、法起寺(706年)、薬師寺(730年)、海龍王寺(731年)、新薬師寺(747年)、當麻寺(750年)、手向山八幡宮(752年)、正倉院正倉(756年)、東大寺(758年)、唐招提寺(759年)。現存するヨーロッパ最古の木造建築は、スイスの「ベツレヘムの家」で、それから遅れること1287年の建物だ。

「縁起木(えんぎぼく)」の代表「松・竹・梅」

 木の話題の最後は、「縁起木(えんぎぼく)」の代表「松・竹・梅」だ。
 「松」は寒い冬でも変わらず緑をたたえる力強い姿と、長く生き続ける特徴が、「めでたさ」や「長寿」につながるとされた。「竹」も、雪の重みに耐えなからまっすぐ成長することから、「志(こころざし)を曲げない心」、「成長力」の代名詞となった。「梅」は、まだ春も遠い寒い時期に、他の草木に先駆けて花を咲かせることが、「強い生命力」や「華やかさ」の象徴とされた。
 ぜひとも、きびしい競争をくぐり抜けた新入社員のみなさん、日本の優れた材料「木材」に習い、じっくりと長く、強く成長し、それぞれの職場で花を咲かせてくださいね

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