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ウルトラセブンへの想い2

以前、ウェブに掲載していた2004年頃の古い原稿の修正版です。作品を振り返りながら、私なりの感想を残します。根拠がない与太話と割り切ってお楽しみいただける方にお読みいただければです。
(以下:本文)

第1話 「姿なき挑戦者」
場面1 オープニング
ナレ 「地球は狙われている。宇宙に漂う幾千のから。恐るべき侵略の魔の手が伸びようとしているのだ」
 オープニングのナレーションが、ウルトラマンとは違うセブンの世界観を示しています。このナレーションの「地球」を「日本」、「星」を「他国」として、当時の時代背景を踏まえて考えると、冷戦構造の中、諸外国の侵略に狙われる日本の姿が浮びあがります。
 セブンの世界観の根底にあるのは、当時の「現実世界の日本」なのです。

場面2 路上の場面
 検問中の警察官の前で、車の中の人間が消失する。
 オープニングのナレーションから路上の場面にかけて考えると、この場面は侵略者(外国)に対する警察官の治安維持能力の無力感を表現しているようです。
 日本の警察官は犯罪捜査等に関しては、当時から世界でも優れた警察であったと思われますが、「侵略者」に関しては全く無力であることを感じさせます。(ちなみに「ウルトラ警備隊西へ」では、キリヤマ隊長に「日本の警察は世界一優秀だ」と語らせています。)
 また、この場面で注目したいのは「消失」という侵略行為です。これは、当時、日本海側で頻発していた「拉致事件」を彷彿させます。それに対し、警察は全く無力である現実を風刺しているようです。
 この、侵略と拉致の因果関係について、この後、作品の中で語られています。

場面3 地球防衛軍基地
ナレ 「ここは宇宙のあらゆる侵略の魔の手から地球を守るために作られた地球防衛軍の秘密基地である。(以下省略)ウルトラ警備隊なのである。」
 ここでも、セブンとウルトラマンの世界観の違いが明確に示されています。
 ウルトラマンでは登場するスタッフ(人間)は「科学特捜隊」という名称で、その活動は「怪獣を倒す」ことよりも「未知なる事件の解決」が主たる目的で、「警察」と「探検隊」を掛け合わせたような組織でした。
 しかしセブンでは「地球を守るために作られた地球防衛軍」という組織、「ウルトラ警備隊」という、軍隊として定義されています。「守るため」という言葉からは、「専守防衛」を任務とした「自衛隊」の姿が浮びあがります。

場面4 パトロール中のダンとの出会い
ダン  「あなたたちを助けに来たのです」・・・①
ダン  「やつらは、地球を侵略するのに、数年前から実験用の人間の標本を集めていたんです」・・・②
ダン  「ご覧のとおりの風来坊です」・・・③
ダンが登場する場面のダンの台詞を抜き出してみました。
 ①からはダンが現われた(地球に来た)目的が示されています。やはりウルトラマンとは大きく異なる位置付けとなっています。ウルトラマンが偶発的な「事故」による「つぐない」「被害者救済的」に「科学特捜隊(人類)」に奉仕したのに対し、セブンは明確な「守る意志」を持って自発的(おせっかい)に、「ウルトラ警備隊(人類)」の前に現われています。
「何故、人類を守るのか」の理由は示されていませんが、「セブン」を「アメリカ」と捉えれば、その理由は示す必要もないわけです。というより、その理由を言葉にすると、「自国の利益」と現実的になりすぎ、夢も希望もなくなってしまうのです。

 「何故、人類(日本)を守るのか」、それは「自国(アメリカ)の利益、安全保障のため」でしょう。しかし、アメリカ同様セブンは、そのようなことを口にすることなく、ウルトラ警備隊(日本人)以上の圧倒的な力(情報力、物理的力)を見せ付け、恩着せがましい態度をとっています。
 ②の台詞からは、この蒸発(拉致)事件の根の深さが感じられます。まず、偶発的な事故的としての「蒸発」ではなく、首謀者のいる「拉致」という事件であること、その目的は「侵略」であること、そして「数年前」と、継続して実施していることが伺えます。
 それに対し、ウルトラ警備隊は、全くの「無知」の状態です。「専守防衛」に徹する中、情報戦略、危機管理に弱く、アメリカからの情報に頼る自衛隊を風刺しているようです。
 ③の「風来坊」からは「開拓者」としてのアメリカを感じることができます。
 また、この場面は「地球防衛軍基地の近く」と設定されていますが、「神奈川県警察」のパトロールカーが現われるところを見ると、基地は神奈川県内にあると考えられます。米軍や自衛隊の基地が東京より神奈川県に多く存在していることを彷彿とさせます。

場面5 作戦本部
キリヤマ 「宇宙船には拉致された地球人が乗っているんだ。攻撃できん」
 ここで、何気なく「攻撃できん」と言うキリヤマ隊長が、シリーズ後半ではどう変節するか、興味深い台詞となっています。特に「狙われた街」や「ノンマルトの使者」最終回「史上最大の侵略」で顕著となっています。
アンヌ 「ダン、あなたの地球がピンチに立たされているのよ。何か方法はないの」
 侵略者が「姿の見えない敵」と知った後のアンヌの言葉です。
 ここでは、「あなたの」という言葉に注目してみたいと思います。通常の会話であれば、わざわざ「あなたの」と付ける必要はないはずです。「地球がピンチ」でも充分です。
 ここで「あなたの」と付けるということは「関係ないと思っているかも知れないけど、このピンチはあなたにも関係するのよ」と、訴えているようです。
 つまり「地球(日本)は、実質的には同盟国なんかじゃなく、占領下におかれている属国で「あなた(アメリカ)の国」も同然なのだから、本気で助けて欲しい」と懇願しているようです。
 同時に「何か方法はないの」という言葉には、戦略、兵器開発などの先進国アメリカ、後進国日本という悲しさを感じさせます。

場面6 ウルトラホーク発信
管制室 「フォース ゲート オープン」
 地球防衛軍で勤務するのは、北は北海道から南は九州まで日本全国津々浦々から集められた隊員であり、日常会話、作戦会議は日本語です。しかし、管制室では英語が使用されています。また、挿入歌の歌詞も英語となっています。
 とことん、アメリカの影響を受けながら物語は進行していきます。
 なお、現代であれば「日本全国津々浦々」という場合「北は北海道から南は九州、沖縄まで」と表現されるところですが、ウルトラ警備隊は、九州止まりとなっています。返還前の沖縄、占領下の沖縄という暗い影が、ここにも表れています。

場面7 ウィンダム登場
ダン 「ウィンダム頼むぞ」
 侵略者のUFOに対し、カプセル怪獣「ウィンダム」が登場します。
 「空軍」対「偵察部隊(空軍)」という図式になっています。セブン=アメリカ第7艦隊の本体が出動する前に、偵察部隊を出動させ、敵の戦力を削ぐ。という戦争における最もオーソドックスな作戦がとられています。

場面8 拠点基地(UFO)
 セブンは、人間サイズになり、拠点基地(UFO)に潜入、拉致されていた人々を救出するとともに、破壊工作を行います。
 ウルトラマンは「光の巨人」でしたが、ウルトラセブンは必要に応じ大きさが変わります。ファンタジーからの決別であり、現実的な戦略上の必要性から、このように変化したようです。
 スパイ映画さながらに、人質を救出するウルトラセブンですが、ここでは「拉致事件」の被害者に対する希望を表しています。

 「拉致」は敵国の情報の収集を主たる目的として行われ、ここでは「人間標本」として生きたまま監禁されています。しかし、目的を達成した後は、生かされることはないと考えるのが一般的でしょう。その不安に対し、この場面では「全員生きていて、救出される」という、祈りにも似た希望のメッセージを送っています。
 もっとも、この作品の中で、被害者を救出してくれるのは、ウルトラ警備隊(自衛隊)ではなく、ウルトラセブン(アメリカ)となっています。
 そして、この作品から30年以上を過ぎた2004年現在、その希望は一部しか叶えられていません。
 アメリカの圧力のおかげで、一部の救出が叶えられたことを感謝しながら、私たちは、この第一話に込められた希望を忘れず、「全員の救出(救済)」に向け努力しなければならないのかもしれません。

(本文ここまで)
 長い話をここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。繰り返しますが「与太話」「こじつけ」です。けど、まぁ、20年振りに読み返しましたが、大きく修正する部分はありませんでした。私は20年前から精神的には、ほとんど成長していないようです。
 この後は、もう少し短くなりますが、もう少し「ウルトラセブン」について語らせてください(騙らせてが正しいかもです)

 なお、若干ネタバレになりますが、序盤は「ウルトラセブン=米国」が次第に「地球人の中で孤独なウルトラセブン=日本で孤独な沖縄人 金城哲夫さん」に変化していくように感じています。
 また、その孤独感は「視聴率や経営」で苦悩する金城哲夫さんの姿とも重なるのです。「夢と希望」に溢れていた「ウルトラマン」が光だとすれば、「ウルトラセブン」は影や闇を感じてしまうのです。

#何を書いても最後は宣伝

 歴史や事実には「語られる」「記録される」ものもありますが、「語られないもの」もあると考えています。とあるワイナリーを巡る「記録にない物語」がこちらです。


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