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【宇宙】私たちの生活を支える宇宙の"眼"たち - 人工衛星の今

現代社会は人工衛星に大きく依存しています。天気予報、通信、測位システム、災害監視など私たちの暮らしは、衛星が無ければ成り立たなくなってしまいます。
しかし、一方で宇宙空間の混雑や衝突の危険など、衛星を運用する上での課題も山積しています。本記事では、人工衛星の役割と現状、そして将来の展望についてお話しします。

人工衛星とは

まずは今一度、改めて人工衛星とは何なのか簡単に説明しますね。
人工衛星とは、人工的につくられた地球の周りを周回する人工の天体のことを指します。ロケットによって宇宙に打ち上げられ、一定の軌道を周回しながら、様々な任務を遂行しています。

人工衛星の種類と役割

  1. 通信衛星
    通信の中継を担う衛星で、地上からの電波を受信し、別の場所に送信することで遠距離通信を可能にしています。衛星放送、インターネット通信、携帯電話の中継などに利用されています。

  2. 測位衛星
    GPSの基幹を成すのがこの測位衛星です。そのほとんどが米航空宇宙局(NASA)によって運用されていますが、ロシア、欧州連合、中国、日本なども独自の測位衛星システムを運用しています。

  3. 気象衛星
    大気中の温度や湿度、雲の動きなどを観測し、気象データを地上に送信する役割を担っています。天気予報の精度向上に大きく貢献しています。

  4. 地球観測衛星
    地表の様子を監視するのがこの衛星の役割です。
    資源探査、環境監視、災害把握など、地球の状況を常時モニタリングできます。

  5. 科学観測衛星
    宇宙物理学や天文学の研究に携わる衛星です。
    太陽や惑星、銀河など、宇宙に関する貴重なデータを観測・収集しています。

人工衛星の現状

https://japimage.blogspot.com/2016/02/blog-post_95.html

現在、地球周回軌道上には約2,465個の人工衛星が飛んでいます。
この情報は、Wikipedia の「地球周回軌道」のページに記載されています。地球周回軌道上には、これまでに16,291個を越える物体が地球から打ち上げられてきました。
また、古くに打ち上げられた人工物体の残骸(デブリ)が大量に存在しており、6,216個のスペースデブリがゴダード宇宙飛行センターによって監視されています。この数字は年々増加しており、宇宙空間は次第に混雑してきています。このことから、運用中の衛星との衝突が危惧されているところです。

実際、過去には衛星同士が衝突する深刻な事故も起きました。2009年、ロシアの通信衛星と米国のレーダー衛星が高度800kmの軌道上で激突し、大破してしまいました。この事故で生じた新たなデブリが数千個も放出されたと考えられています。

このように、宇宙空間の混雑は重大な問題であり、適切な管理が欠かせません。

将来の展望

人工衛星の需要は今後も増え続けるとみられています。
通信・放送の発展、宇宙開発の進展、地球規模の環境問題への対応など、人工衛星の活躍が期待されるからです。一方で、前述した通り、宇宙空間の混雑を回避するための対策も急務となっています。

たとえば、デブリを除去する技術の確立が課題の一つです。レーザーやロボットアームなどで地球の大気圏へとデブリを落とす試みが検討されています。また、再使用可能でデブリが出にくい新しい衛星の開発も重要でしょう。

国際社会では、宇宙空間の持続的な利用に向けた規範作りが進められています。宇宙活動に関する原則や指針を定めた宇宙空間平和利用条約をはじめ、様々な国際条約や取り決めが存在します。各国の宇宙機関が連携し、ルール作りや技術開発を進めていくことが重要視されています。

宇宙を私たち人類の「共有地」として守り続けることが、現在そして将来に課せられた大きな責務といえます。

まとめ

人工衛星は現代文明を支える重要な基盤であり、今後もその需要は高まるものと予測されます。一方で、宇宙空間の混雑やデブリ問題など、人工衛星の運用には課題も山積しています。

しかし、デブリ除去技術の開発や新しい衛星の設計など、解決に向けた取り組みも進んでいます。技術の進歩と人類の英知を結集して、宇宙の持続的利用を実現することが何より大切です。

私たち一人ひとりも、この問題に関心を持ち続けることが重要でしょう。人工衛星がいつまでも私たちの"眼"でありつづけることを願っています。

参考文献
人工衛星の防災活用について』 - 宇宙航空研究開発機構 衛星利用運用センター 内藤 一郎
JAXA宇宙科学研究所 パンフレット』 - JAXA
宇宙大全 これからわかる謎の謎』 - 二間瀬敏史
人工衛星を使ったスマート農業の最前線とは? 〜宇宙航空研究開発機構(JAXA)』 - SMART AGRI


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