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[電子契約のススメ]電子契約とは?

ここでは、

「そもそも、電子契約ってワードはよく聞くけど、電子契約って、どういうものなの?」
「電子契約って、法律的に問題ないの?」
「電子契約にすることで、どんなメリットがあるの?」
「電子契約っていってもどんなサービスがあるの?」

と言った基本的なことについて触れていこうと思います。


そもそも「電子契約」って法律上大丈夫なの?

ここで基本的なことを触れる理由としては、「契約」という行為自体がどのように成立するのか、ということについて知っておく必要があります。

それは「民法」で定義されています。

(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

民法(eGovより)

簡単に説明すると、サービスやモノを売る人と買う人との間で、売り手が「この商品を1000円で売りたいのですが、いかがでしょうか」というのが「申込み」にあたります。そして、その「申込み」に対して、買い手が1000円を支払うことが、「承諾する」ということです。

つまり、スーパーやお店で買い物をするということも、契約行為にあたります。

そして、気付いたかと思いますが、上記の契約には特に契約書などは発生していませんね。それが、第2項に記載されている内容で、「契約の成立において、法律で特別に決められていない限り、特に契約書面などはなくてOKですよ」という話があります。これを「契約方式の自由」と言います。

そのため、書面(=紙の契約書)で契約書を作成し、締結する旨を法律で規定されていない限りは「電子契約」サービスを使って契約を行うことになんの問題もありません。

また、昔は「書面」で作成、交付、保存をすることを義務付けられていた契約書類の多くも、最近の法改正で「電磁的記録」(=電子データ(メールやPDFファイルなど)での作成や保存もOKになっていますので、現在ほとんどの契約行為が「電子契約」で行うことができるようになりました。

なので、今会社で取り交わされている紙の契約書は、ほぼ全て「電子契約」に置き換えることが可能です!(どんな法律が絡んでくるかは、また別途詳しく説明させていただきます!)


「電子契約」の定義

で、電子契約が違法ではないことはわかったけど、電子契約と言っても、上記の内容をそのまま理解すると、Amazonや楽天で買い物をするのも「電子契約」ですし、オンラインでレストランや歯医者の予約などをするのも「電子契約」です。そういったものも含めると議論が拡散してしまうので、今回はビジネスの場面で利用する「電子契約」ということで、以下の定義で説明をしていきます。

「電子契約」とは、1)「電磁的記録(電子データ)として作成した契約書を、2)インターネット等の通信回線を用いて、契約当事者へ開示し、3)契約当事者全員が、開示された契約書の内容への合意の意思表示を、電子署名法第2条第1項で規定された方法で行うことで、契約の締結を行う もの。

つまり、電子データ(PDFファイルなど)で作成した契約書を、2)メールや、Web画面上で契約当事者に共有し、3)確認の上、契約当事者全員が、その内容に対して合意の意思表示を、紙で行う記名押印に代わるものとして「電子署名」や「電子サイン」を行い、契約を締結します。

(「電子署名」「電子サイン」については、別途説明します。)

電子契約は「今まで、社内や取引先との間で紙で取り交わしていた契約書面を、電子データに置き換える」ことを可能にします。

「電子契約」のメリットは?

これまで紙で取り交わしたり、保管をしていた契約書を電子契約に置き換えることで、諸々メリットはありますが、まとめると以下のことです。

  • コスト削減
      
    紙で作成・締結並びに保管を行ってきた契約書を電子データに変えることで、まず、「印刷」「製本」「郵送」に関わる費用(例:紙代・切手・封筒代 など)が削減されます。また上記の業務を行う際の人件費も併せて削減できます。また、紙ではなくなるので、紙の保管コスト(法定保存期間分の倉庫代、管理スペース)や廃棄コストも削減できます
      また、よく言われるのが「印紙税」の削減です。電子契約は印紙税法第2条に規定されている課税文書には当たらないため、(理由:書面で作成していないため)印紙税の対象外となります。今後、不動産売買のような高額の取引も電子契約の対象になるため、印紙税の削減は会社だけでなく、不動産を購入する個人にとっても大きなメリットになります。
    (国会においても、課税対象文書ではない旨、総理大臣の答弁があります。)

  • コンプライアンス・セキュリティの向上
    電子データで作成・保管をすることで、電子データの閲覧・検索・共有がシステム上で可能となり、社内においては内部統制並びに情報セキュリティの強化につながり、また、取引先との間との間でも安全にデータの共有を行うことができます。
    特にテレワークを行う際にクラウドサービスなどを用いて情報の共有・管理を行うことができるので、操作履歴なども残ることで、不正アクセス・ダウンロードなどの操作の抑止力になります。

  • 業務効率化による生産性の向上
    紙で契約締結をする場合、書面での作成・印刷・製本・郵送を行なった後で、契約当事者全員の記名押印を集めるまでに時間がかかります。中には一向に契約書を返送してくれず、再発行するといったケースもあります。電子化されると、上記のような業務は一掃され、インターネットを介したデータ共有を行い契約の締結が可能になります。最も早い場合、契約内容が合意できて契約書の内容が確定次第、即日で契約締結が完了します。特に、対面でないと手続きが進まなかったような契約の場合、リモートで契約が可能になれば、契約業務にかかる時間が大幅に削減でき、その時間で新たな営業活動や製品・サービス開発など他の作業などに時間を割くことが可能となり、生産性の向上に繋がります。

「電子契約」サービスの種類

そして、電子契約サービスですが、大きく分けて以下のサービスに分かれます。

電子契約の分類

1.  電子サイン
2. 電子署名
 1)当事者型(ローカル)
 2)当事者型(クラウド)
 3)事業者型(立会人型)

あ、また出てきましたね。「電子サイン」「電子署名」、そして「当事者型」「事業者型」「立会人型」。。。。新しい言葉が出てきました。

正直、いまだに相談受ける時に、この辺の言葉の違いで混乱されている方、たくさんいらっしゃいます。なので、こういう言葉の意味もきっちり説明していきます。

が、詳細な説明ば別の記事に譲るとして、今回は、ざっくりとサービスの種類について書いていきます。

1.   電子サイン

電子サインですが、文字通り「電磁的に行うサイン」を合意を表するもので、形式としては、

  • 「電子データ上に直接ペン(Apple Pencil など)や指で、サインをする」

  • 「陰影のあるハンコや署名イメージを画像として貼り付ける」

  • 「電子メールアドレスと紐付けて、書類を承認する」

といった形で契約を締結するものです。メリットとしては導入がしやすいことですが、合意に対する信用度・信頼性は後述の電子署名よりは落ちます。

とはいえ、社内利用や社内承認、対外的にもNDAなどで利用するには気軽に締結ができますし、双方対面などで本人確認ができている場合などは、双方合意の上で利用すれば問題なく使えるかと思います。

2. 電子署名

電子署名は、電子証明書を用いて合意を表するもので、電子サインに比べて信用度が高い電子契約の形です。信用度・信頼性は上がります。特に当事者型の電子署名は「実印相当」にあたる電子証明書での合意も可能であり、紙の契約と変わらないレベルでの契約の締結が可能になります。一方で、事業者型のような「電子サインの手軽さ」に「法令対応」を組み合わせたサービスも存在します。

2-1. 電子署名:当事者型(ローカル)

まさに「契約当事者」が電子のハンコにあたる「電子証明書」を用いて、契約書に対して合意を行うことを指します。ローカルというのは、ICカードなどに格納された電子証明書(例:マイナンバーカードの電子証明書/認定認証業者が発行した電子証明書/HPKI(日本医師会が発行した医療関係者の電子証明書)を用いて、書類データに署名をすることです。

契約当事者本人が本人確認をした上で信頼される第三者機関より発行された電子証明書を用いて署名を行うので、実印相当の真正性を書類データに対して担保することが可能です。ただし、電子証明書の発行コストやICカードリーダーを用意するなど用意すべきものは多く、導入コストがかかります。

なので、高い真正性が求められる契約書や、法律で特定の証明書を用いることが決まっている書類などはこのサービスを利用することを勧めます。

2-2. 電子署名:当事者型(クラウド)

前述の契約当事者の「電子証明書」を電子契約サービスに登録し、契約書に対して合意を行います。ICカードリーダーは必要なく、クラウドサービス内に登録されている電子証明書を利用するため、ローカル型よりは使い勝手はよく、さらに第三者機関より発行された電子証明書を利用するので、真正性は担保されます。ただし、クラウド上に証明書を置くことによるセキュリティリスク(特に証明書の盗難・消失や不正利用リスク)は担保されているかどうか、など、サービス利用の際に留意すべき点はあります。

なので、高い真正性が求められる契約を締結する際には、お勧めしますが、導入の際には証明書のセキュリティに関しては確認することが必要です。

2-3.電子署名:事業者型(立会人型)

カッコで括っている「立会人型」という言葉の方が世の中には広まっている感じがしますが、ここでは実体を表す言葉として正確性を期したいと思い、「事業者型」という記載をします。

「事業者型」というのは、契約当事者が書類に対して合意を行う際に、リクエストを行い、電子契約サービスを提供している事業者の電子証明書を、その契約当事者の情報とともに署名を行うことです。契約当事者の署名ではなく、サービス提供事業者の署名が入っているので「事業者型」といいます。

「立会人型」と言ってしまうと、あたかも有資格者(公証人や弁護士など)が契約に対する署名を確認し、承認したかのような心象を与えてしまうのですが、実際には「事業者」がサービス上に登録されている書類にユーザーのリクエストにより「書類に対して承認行為がされた」ということを確認しているので、正確を期し、「事業者型」と言っています。

なので、立会人型だとあたかも書類の真正性が高いような印象を持つかもしれませんが、実際は上記の通りなので、それを理解した上での利用を勧めます。

おわりに

以上、電子契約について、全体感を説明してみましたが、すでに電子契約サービスもだいぶ普及してきており、今後本格導入が進んでいくと思いますが、導入する際には

  • 自社で取り扱っている契約書は電子化可能か

  • 留意すべき法律・規定は何か?

  • どのくらいのセキュリティレベルが必要か

  • 既存システムとの連携について

  • 導入コストはどれくらいか

  • 導入後の効果は

と言ったことは検討する必要があると思います。
たくさんあるので、書かないといけないことはたくさんあるのですが、おいおい触れていきます。

次回以降は、電子契約を取り巻く法律の話をしていきますが、

・ 民事訴訟法/電子署名法
・ 電子帳簿保存法
・ 電子契約法
・ 電子委任状法
・ 地方自治法
・ 下請法
・ その他、諸々書類の作成・発行・契約の締結に関係する法令・規定類(建築業法/宅建業法/特商法 などなど。。。)

と山のようにあるので、一個づつ説明をしていきます。




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