「ズッコケ怪奇館 幽霊の正体」の感想

エンディングまで、泣くんじゃない。いよいよ48作目、残すところあと2作。今回もハカセが大活躍だ。ズッコケシリーズは、割りと民俗学押しなところがあってそこが好きなのだけれど、今回はもうしっかりと、ハカセが「民俗学」という言葉に出会う。自分が興味をもって調べていたことは、立派な学問なんだ!ということに気づく瞬間は最高にエモい。熱い。間違いない。

物語の舞台は、ミドリ市から少し車で走ったところにある、勝坂トンネル。暗闇坂と呼ばれているこの場所で幽霊を見たという噂が流れる。興味を持ったハカセは、なぜそんな噂が流れたのか、そして、幽霊の正体はなんなのか調べだす。

すると、地元の人たちは暗闇坂とは呼んでいないことや、幽霊話が登場したのは比較的最近であることなどが分かる。どう調べたかというと、まずは実際にトンネルに行ってみる、そして、地元の人の話を聞く。これまさに、フィールドワークである。ハカセたちはフィールドワークなんて言葉は知らずして、民俗学の研究方法を思いつき、実行にうつす。ここに、ハカセの頭のよさがある。知識があることよりも、どうすれば分かるかを考えつく方が大事だ。

俺は、ハカセが学校の成績はふるわない、という設定にだけは納得がいかない。こんなに勉強熱心で粘り強く記憶力もいいハカセが、テストの点だけはとれない。タクワン先生の作るテストによほどの問題があるんじゃないだろうか。そうでなければ、描写されてないだけで、実はハカセは極度のあがり症なんじゃないだろうか。たくさんの人間とひとつところに入れられると、パニックを起こして思考が停止してしまうんじゃないだろうか。だとしたら、学校というシステムと相性最悪だし、そのことに誰か大人が気づいてやってほしい。

話がそれたが、そんなわけで今回は、というか今回もハカセが大活躍だ。粘り強い調査の結果、幽霊の正体をつきとめる。この辺の面白さは、京極の巷説百物語シリーズに通ずると思う。もちろん、理屈で解決できない部分を余韻として残すところは、相変わらずの語りのうまさである。

今回、もうひとつ面白いのが、おそらくはじめて、登場人物がメタ発言をする。ハチベエがするのだが、このパターンは今までなかったので、これは推測だけど、どこかで一回だけやろうと作者が思っていたのではないか。

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