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雨の表情

昨日、今日と立て続けに、夕方の土砂降り。
「今年はゲリラ豪雨みたいなのが目立たなかったなぁ」などと呑気に思っていたら、なんだかんだと帳尻を合わせにくるから天気は侮れない。

以前、何かの舞台制作に関する本を読んでいた時、「雨の降らせ方」について記述されていたことがあった。
その舞台では公演中、舞台上に本当に「雨」を降らせることになったのだが、困ったのは大道具さん。はてさて、いったいどのように降らせましょうか…と額を寄せ合って相談したそうな。
これでどうだ!と、(たしか)穴を開けたパイプか何かを頭上に張り巡らせて、そこに水を流してみたところ、それを見た舞台監督さんがこう言った。

「違う!こんなふうに表情もなく均一に降る雨があるもんか!!」

雨の降り方にも「表情」を求めたのである。
悩みに悩んだ大道具さんたちは、どうにかこうにか、(これまたたしか)空気を送り込む装置を取り付けるか何かして、強くなったり、弱くなったりする雨を表現することに成功したのだった。

…以上のことはあやふやな記憶に頼って書いているため、詳細はかなり怪しい。けれども、「雨に表情をつける」という考え方がとても新鮮で、「舞台ってすごいなぁ」と思ったことを覚えているのだ。たしか、「雨が、まるで呼吸しているかのように降らせる」ということも書かれていたような。

今日の雨はまさしく、そんな「表情がある雨」だった。
降り始めたと思ったら一気に土砂降りになり、しばらくするとやや小降りになり、さらにまた風も伴った土砂降りに…といったように、刻一刻と降り方が変わっていく。

そんな日に限って本を買った上にスーパーで買物までしてしまった私は、鞄の中にしまい込んだ本だけは濡れませんように!スーパーで買った食品は最悪濡れてもいいから…!と必死の形相で、スーパーの袋をぶん回しながら帰ってきた。幸い本は濡れなかったが、食品は濡れ、おまけに降雨のクライマックスと思しきタイミングで強風も吹いていたために革靴の中まで濡れた。

やっぱり、雨に降られるのは苦手だ。詩の中の雨はとても美しいのに。

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