見出し画像

「言葉は星に似ている」

昨日、NHKのEテレ(つい、「NHK教育」と言ってしまいそうになる)で「ドキュランドへようこそ『星の王子さまの世界旅』」という番組を観た。

ドキュメンタリー番組好きの私は、いつの間にか始まっていたこのシリーズも好きでとりあえず録画しておいて気になったものを観ているのだが、この回は特に素晴らしかった。

小説「星の王子さま」を翻訳し、失われゆく希少言語を次世代に伝えようというサハラ砂漠や北極圏、中南米やチベットの人々…“ことばの力”を追う、ファンタジックな旅。

子どもの心を失いかけた大人をドキリとさせるサン=テグジュペリのベストセラー文学が、ダリジャ語を使うサハラの遊牧民や、北極圏のサーミ人、エルサルバドルで民族語を失いかけた先住民の“教科書”となった。「井戸」「キツネ」「バラの花」などその土地にない言葉も多いが、人々は類似の表現を編み出していく。4Kで撮影したダイナミックな景観に、「大切なものは、目に見えない」といった言葉が重なってゆく、至極の世界旅行
(番組Webサイトの説明より)

これまでの私の人生において、『星の王子さま』はあまり大きな意味を持っていなかった。チラッと読んだことがあるかなぁ、という程度。
それが、語学塾こもれびに出会い、その面々の一人の人生にこの本が大きな影響を与えたことを知ってからは、何かと気になる存在になったものだ。

そんなわけで、『星の王子さま』を見かけるたびに「おっ」と気持ちを向けているのだが、この番組はそれだけではなく、番組の冒頭にモロッコのベルベル人が登場する。ベルベル語の一種であるという「タマジクト語」に翻訳された『星の王子さま』の朗読が響き、現地の風景の映像も相まって心が奪われる。

実はこれまたこもれびのメンバーの一人が先日モロッコに旅立ったばかりで、モロッコも最近の私が注意を向ける対象の一つ。

総合するならば、「言葉」、『星の王子さま』、「モロッコ」と、なんとも見事な「こもれび番組」である。

さて、番組の中でフィンランドのラップランドという地域の「サーミ語」という言葉の翻訳家、ケルトゥ・ヴオラッブ氏が、以下のような印象的な言葉を語る。

私が思うに、人が暮らしていくうえで一番大切なのが、言葉です。

私たちは、言葉を使って互いに助け合います。
世界中には、たくさんの言語があります。

言葉は、少し星に似ていると思います。
星空をじっと見上げていると、だんだん見える星の数が増えていくようです。
言葉も使えば使うほど、理解の幅が広がっていきます。

でも、一つの言語を完璧に理解することは、誰にもできません。
なぜなら、言葉は時とともに変わっていくからです。消える言葉もあれば、必要に応じて、新しく生まれる言葉もある。
それは、古い星が死に、新しい星が輝き始めるのと同じです。

「言葉は星に似ている」。美しい表現だと思う。

以前、友人にもらった『ブタノくんのほしみがき』(作: 小沢正/絵: にしかわおさむ)という絵本のことを書いたが、星を磨く人たちは、言葉をも磨いているのかもしれない。

もし何かに共感していただけたら、それだけでもとても嬉しいです。いただいたお金は、他の方の応援に使わせていただきます。