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『〈証言と考察〉 被災当事者の思想と環境倫理学』山本剛史 編・著 言叢社刊

今日現在255ページ、本の半分を少し越えた。分厚い、難しそう、なにより読むのが苦しそう、と恐れをなしつつ、序文を読んだら、おもしろい。なんか『野生のしっそう』とつながってる気がするし、リベラル・アイロニストなんじゃない?
まだ寒かったころ、『100分de名著』のローティの1回分だけ見て、うれしくなって番組テキストを読んだ。「リベラル・アイロニスト」っていうのを知った。「よりよくなる可能性に開かれ」「人が受ける苦しみや、人類がなしうる残酷さというものが減少していくことを望む」あり方に感銘と衝撃を受けた。すぐに嫌になって閉じこもるわたしは、それでも、よりよくなる可能性に開かれていたい、そして惨いことが少しでも減ってほしいとも思っている。

第一部の当事者の証言を読んで、途中で本を閉じた。もう開かないかなと思った。非常に疲れた。怒り、皮肉、自責、非難、さまざまな感情があった。なだめたり、わかったふうをしたり、抑圧しないで不快を感じた。根本に自分の親との、対自分との関係があって生じた不快だとわかって、本を開く気になった。本を開いたら、怪しむほど平静に読めた。

第二部の考察に入った。難しそうなのに読めるなーと思って、気がついた。著者の山本剛史さんは、「これは説明するまでもありませんね」っていう論の進め方をしていない。なんもわかってないわたしでも、字が読めればわかるように書いてくれているんだ。ありがとう、山本剛史さん。そして熱い思いがありつつ正義を振りかざさしていない。でも権威・権力者には歯に衣着せぬ。

つぶしがきく──この本は、原発過酷事故という災害に限定されない射程を持っていると、物知らずが恐れも知らず、言います。



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