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フィレンツェで抱いた大盛り恋心

卒業旅行のあの日、ささやかに人生を狂わされた。

友人とイタリアのフィレンツェに行った。

割と遅くにロンドンから飛行機で到着。

とりあえず、ホテルから近いしフィレンツェの大聖堂でも見に行くか。

2017年とある日のフィレンツェ

大聖堂は厳かだった。静かに佇んでいる。

頂上だけは灯りで明るさを感じるが、街並みは暗く
ミステリアスでゲームの世界に迷い込んだ気分だった。

もっと大聖堂の雰囲気を感じていたかったが、
お腹が轟々と音を立てていた。

いつも通りのノープラン。僕達は特に予約もせずに
良さげな店にとりあえず入ることにした。

香川で食べるうどんはどうやっても美味い。
なんか家庭感のある店だったら尚更。
イタリアで食べるパスタもどうやっても美味いだろう。
何か照明が暗そうで小洒落た店なら尚更。

ノープランな僕達はそんなステレオタイプと直感を胸に
意気揚々と何も考えずに暗闇に吸い込まれていった。

さあ、何を食べようか?

直前に頼んだハウスワインを片手に吟味中。

僕の当時のパスタ遍歴。
ジョリーパスタでは、大盛りカルボナーラ。
サイゼリアでも、大盛りカルボナーラ。
カルボナーラにするかあ・・・

いや、せっかくイタリアに来たのだ。おすすめに習おう。

店員におすすめを聞いてみた。

「I would recommend ジェノベーゼ」と一言。

大盛りカルボナーラ一択男には
全く知り得なかった一皿だった。
バジルがふんだんに使われているとか。

明日もパスタは食べる。チャレンジだ。オーダーした。

緑色のパスタがテーブルに到着。

ジェノベーゼとの初めての出会い

とても美しい一品ではあるが
カルボナーラばかり食べてきた
僕には敷居が高いように思えた。一口。

口に入れた途端、バジルの優しい甘みで包み込まれていく。
甘いでもない、苦いでもない、濃厚で芳香に満ちた味。
パスタの麺もいい。もちもちとした感触が食欲をそそってくる一方、
バジルソースと上手く絡んでいて、油加減もちょうど良い。これぞ、逸品。

完食。

ご馳走様でした。と言うつもりが、
おかわり。と言っていた。2皿目も即時完食。

こんなお洒落なお店で、はしたないなと少し後悔しそうになってはいたが、
無口な店員に、二皿食べれちゃうよね。と共感された。ナイスお薦め。

最高の一日を過ごした後も、充実した卒業旅行を過ごすことが出来た。
本場のカルボナーラはやっぱり美味しかった。大満足の卒業旅行だ。




帰国後、友達とイタリアンの店に行く機会があった。

カルボナーラもいいな。ナポリタンも好き。鯵のパスタ、珍しい!

大好きなパスタが一杯あるのに関わらず、
いつもパスタはジェノベーゼ。

何年経ったか。残念ながら、あの日のジェノベーゼには出会えていない。

あの日、偶然出会った人にきっと何処かで会えるんじゃないかと、
ひょっこり出てくるんじゃないか、そんな期待を胸に逢いに出かけ続ける。

何処にいても、探し続けてしまう。
この世に同じものは存在しないとは分かっていても。

出会った場所はローカルの人々が集まる庶民の店だった。
高いレストランにはよく似た人はいるのかもしれまいが、
あのジェノベーゼはそこにはいないと思ってしまう。

頭がグルグルする。一皿への大盛り級の恋心。

自分で作って、会えばいいじゃないって?

馬鹿いうなよ、追っている時が一番楽しんだよ。

La Cantinetta Osteria con Cucina

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