試作 わたしの詩はすぐ終る

顔もわからない読者よ
わたしの詩はすぐに終る 本(スマホ)を出たら
まっくず路があるはずだ
埃っぽい日がな一日かけても 終わりまで着かない
しまいには蟻の行列のように
あちらからも こちらからも
あつまってきた一隊で
くたびれはてた活字のように
また一冊の試作ができそうだ


とにかく本(スマホ)を出たら
まっすぐ路があるはずだ
善の空をよけ 悪の風をよけ 魔の旅館をよけ
魅せられるはずの愉しみには
触れないようにして
できるなら一度も顔をかげずに
うつむき加減に歩いて
後ろ姿からちいさくなって
しまいは影のように
得体のしれないかたちになって
うごめいた群れに

顔もわからない読者よ
わたしの詩はすぐ終る 瞳を閉じれば
後ろには路はあるはずだ
霧っぽい靄が夕刻を漆黒へ 引き返せる筈はない
しまいにはキリギリスのように饗宴を始める有り様
あちらからも こちらからも
あつまってきた群集で雪崩れて
くたびれた情報のように
また一冊の試作が出来そうだ




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