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詩 ある図書館で過ごしていると小さな男の子が私の手を握ってきた。

ある日図書館で過ごしていると小さな男の子が私の手を握ってきた。
「お父さん?」と子供は尋ねた。
私は「あれ?迷子かな?」と声をかけた。
「ううん、違うんだ」と言って子供は手を離した。
暫く沈黙が続いた。
そしたら小さな男の子は答えた。
「僕にお父さんはいないんだ」
私は暫く黙って「そうか」としか言えなかった。
そして私は外に指をさして言った。
「雪だね」
外は雪が降っていた。
男の子は「あっ本当だ」と答えた。
二人で笑顔になった。
暫くして、男の子の若い母親ががやってきた。
男の子は、嬉しそうに母親の元に駆け寄った。
暫く、男の子は私をちらちら見ていた。
私も時々、彼に目を向けた。
が暫くして私の前から消えていった。
私はそれから今年最初の雪を眺めてから、暫く読書をした。
そしたら、また男の子がやってきて満面の笑みでハグしてきた。
私は「どうしたの?お母さんは?」と言った。
子供は、「あっち」と遠くを指さした。
暫く二人で沈黙のまま読書をした。
男の子は、私にくっついて読者をした。
そしたら母親がやってきた。
男の子は私にバイバイをした。
私もバイバイをした。
私はそれから、深々と降る雪眺めてから、暫く読者をした。
それから男の子は来なかった。
お父さんのいない男の子。まだ幼稚園児か、小さな身体と精神で戦っていた。
私は何故か寂しい気持ちになった。
孤独になった。
故郷を思い出した。
父や母、祖父母の愛が余儀った。
東北の冬は心さえ凍えさせる。
そうしてから時がたった。
いや時は止まっていた。
哀しみがとまらなかった。
きっと男の子は無意識でお父さんを探していたんだろう。
大人は罪深いと思った。
しかし他人の子供に何が出来るだろうか。
その時ふと男の子が忘れた本が置いてあった。
星の王子さまだった。
雪がふり雪が止んだ
地面の白が透明な水溜にかわる
凍った水面は揺らぐことはない
時がとまったのだ
夕暮れが永遠を告げ
孤独なる憂鬱が幕をあげる。

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