「揚げ」

最近まで気付かなかったが冷え性だ。靴も靴下もしっかり履いていても、家を出て一分も経たない内に指先はヒエヒエだ。方の中で悴む指を感じながら、なんでこんなにしったりと爪先に体重を乗せてあるいているのに温かくならんのだろう?と思って進んでいる。こんな事をスマホを取り出し書いていると手の指ももげるのではないかと思う。もげるって曲がるって書くんだね。ともかく寒い。

自宅に着いてお風呂に入る。髪を洗って身体もあらって、お湯を十分に浴びる。それでも指先はまだ冷たい。温かい湯船に片足を入れた直後に思うのは「あ゛ち゛い゛」だ。幸せなはずのお風呂でさえ、ゲンよろしく「ぐぎぎ」なのだ。

身体が慣れた頃にふと思った。石川五右衛門が釜茹でになったことを。一説には煮えたぎる油の中に沈められたとか。油だ。入れた瞬間じゅう〜といっただろうか?着物を着ていたなら、サクッと揚がるかもしれない。着物に含まれた空気がしゅわーっと油面を泡立てるであろう。かといって、成人男性1人をスッポリと漬けることごできる釜などなかろうとも思う。そうなると半身ずつ揚げられたか?着物はパリバリしてくれたろうか?そんなことを思いながら風呂上がり、カサカサの肌に油分を塗りたくる。

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