白から赤への軌跡、ジュリアと中野たむーワールド戦試合決定マイクパフォーマンスー

当記事は、ジュリア選手と中野たむ選手のワールド戦が決定した際に書いた文章を加筆修正したものです。全ての情報媒体を確認できていないため、情報不足や間違った解釈をしている場合があります。二人のワールド戦決定の興奮と、そのマイクパフォーマンスで過去の発言が踏襲されていた感動でこの文章は生まれました。以下の文章では敬称を省略しています。

2023.3.4『TRIANGLE DERBY Ⅰ~優勝決定戦~』代々木大会、ワールド・オブ・スターダム選手権試合後中野たむがリングに現れ、2023.4.23横浜アリーナ大会でジュリアと中野たむによるワールド戦が決定した。
この時二人が交わしたマイクパフォーマンスから永遠のライバルと評される二人の歴史を紐解いていきたい。 

バックステージコメント


2022.3.4代々木大会試合後マイク

ジュリアと雪妃真矢の試合後、会場に姿を現した中野たむ。中野はまず次のようにジュリアに呼びかけた。 

「ジュリア、しけた顔してんねえ。アンタ言ったよね。ジュリアには、中野たむが必要だって。私にも、あんたが必要だ。スターダム最大のビッグマッチ、横浜アリーナ! ジュリアの相手は、中野たむしかいないでしょ」 

2023年3月4日 『TRIANGLE DERBY Ⅰ~優勝決定戦~』

ここで中野が挙げた「ジュリアには中野たむが必要」というのは、2023.1.21『STARDOM AWARD 2022 in Takadanobaba』ベルサール高田馬場大会で行われた10人掛けマッチ試合後にジュリアが発したものである。

「中野たむ、私にはオマエが必要だし、オマエもそうだよな?」 

2023年1月21日 『STARDOM AWARD 2022 in Takadanobaba』

また、ジュリアは10人掛けマッチ前の東スポインタビューで、中野たむについてこのように語っている。

「ここ最近元気なくて、ぱっとしないというか、たむらしくねえなと。今何かが足りてないんじゃないのかな?」
「それを言ったら私にも一つ、物足りなさがあってさ。だからお互い、いつだってやり合ってないとダメなんじゃないかなって」 

ジュリアが明かす10人掛けマッチの〝裏テーマ〟「10の人間物語を見せられたら」

中野の第一声「ジュリア、しけた顔してんねえ」もジュリアの発言と呼応しているのではないか。最高の好敵手とリングで対峙していないジュリアはどこか物足りない“しけた顔”なのだろう。だが、ジュリアにしてみればそれは中野も同じだった。この状況を変えるにはリングで命を燃やせるライバルが必要だ、それはお互いに自分たちだろう?そんなジュリアの問いかけに中野も答えたのだ。そして、中野のマイクは次のように続いていった。 

「この、赤いベルト、懸けて、私と闘ってほしい」
「また、中野たむかよ。あれ、月山の子守は終わったのか?」
「終わってねえよ!終わってないけど、月山のことも勝たせるし、私はあんたが持つその赤いベルトがほしいんだよ!なに懸けたっていい。髪だって、財産だって、名前だって、なんだって懸けるよ!奴隷になったっていい!」 

2023年3月4日 『TRIANGLE DERBY Ⅰ~優勝決定戦~』

中野の「なに懸けたっていい」という言葉は、二人の過去の試合を連想させる。二人を代表する試合と言えば、2021.3.3に行われたワンダー・オブ・スターダム選手権試合、通称敗者髪切りマッチである。この中野の言葉は、髪切りマッチが決定した2021.2.7新木場大会のマイクと重なる。

当時白いベルト王者だったジュリアに挑戦し敗れた中野が再びシングルマッチを希望し、ジュリアは2021.2.6新宿大会試合後のマイクで髪を賭けることを提案した。その翌日2021.2.7新木場大会試合後、中野は次のように答え髪切りマッチは正式決定した。

「アンタとやれるんだったら、鼻の骨だろうが、奥歯だろうが、髪の毛だろうが、何だって賭けてやってやる。丸坊主になって、宇宙一ブサイクなアイドルレスラーになったってかまわない。アンタとやれるんだったら、なんでもするよ」

2021年2月7日 『新木場大会』

「あんたと闘えるなら何だってする」というのは、二人が白いベルトを巡って争っていた時、頻繁に登場した言葉である。今回のワールド戦の要求でも、中野は同じように全てを懸けると口にしているのだ。
また、二人の試合において「奴隷」という言葉が飛び出したのも初めてではない。2020.10.3横浜武道館大会で行われたジュリアvs中野たむのワンダー・オブ・スターダム選手権試合前、記者会見でジュリアは中野に「負けたら私の奴隷になれ」と要求していた。

二人はこれまで何度もぶつかり、乱闘を繰り広げ、SNSでは罵り合い、遂には髪を賭けて遺恨が決着した。そんな過去をなぞるように中野は、ジュリアと闘うために何でも懸ける覚悟で赤いベルトに挑戦表明した。しかし、ジュリアは中野の挑戦表明に対してこのように答えている。 

「まあ、今のさあ、私たちだったら、別にこのベルト懸けるだけで十分なんじゃねえのか?だがしかしよ、たむ、オマエをまた地獄に突き落としてやるから楽しみにしとけよ。」 

2023年3月4日 『TRIANGLE DERBY Ⅰ~優勝決定戦~』

ワンダー戦と同じように全てを懸けてジュリアとの試合を望んだ中野に、ジュリアはこのベルトだけで十分だと返す。これは、中野たむへの最大のリスペクトではないだろうか。
思えば伝説の髪切りマッチから2年が経ち、二人はスターダム、ひいては日本のプロレス界を代表する選手へと成長した。ジュリアは「5★STAR GP 2022」を優勝し赤いベルトの王者に、中野は白いベルトやタッグベルトの王者として実績を積んできた。そして、いつしかジュリアvs中野たむは、スターダムきっての黄金カードになった。 

中野「(ジュリアの髪をつかみ)また宇宙に漂う塵にしてやるよ!」 

2023年3月4日 『TRIANGLE DERBY Ⅰ~優勝決定戦~』

中野に髪を掴まれ挑発されたジュリアは笑っていた。その表情は、ようやく永遠のライバルと闘えることを心から楽しんでいるようだった。武道館より大きな横浜アリーナで、団体最高峰の赤いベルトを懸けて、声援の戻った会場で、ジュリアと中野たむが闘う。狂気と情念の邂逅で、今度はどんな伝説が生まれるのか。白いベルトから生まれた永遠のライバルたちは、今新たな赤の物語を紡ごうとしている。


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・代々木大会直後の中野インタビュー

・『週刊プロレス No.2235』ジュリアのお騒がせ症候群〈98〉「"アンタが必要"の意味」

・横浜アリーナ大会記者会見

・煽りV

・『週刊プロレス No.2239』ジュリアのお騒がせ症候群〈101〉「相容れぬ中野たむ」

・ワールド戦入場シーン

・『We are STARDOM!!』ワールド戦ダイジェスト(試合の流れがわかりやすい)

・試合ハイライト

・試合後マイク、バクステ


























































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