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葦になったシュリンクス~ギリシャ神話美少女シリーズ~

 今回はシュリンクス。アルカディアに住む森のニンフの1人です。
 処女神アルテミスを崇拝し、自身も女神に倣った姿で狩りに携わっていたため、当の女神と間違われることもあったとのこと。逆に言えばそれだけの美しさだったということでしょう。
 そのため牧神パンに見初められ、執拗に言い寄られたので、彼女は必死に逃げました。


 ですが目の前の川に逃げ道を阻まれ、進退窮まった彼女は、仲間の川のニンフたちに頼んで、姿を変えてもらいます。
 そうして葦の茂みの中に姿を消しました。
 その姿のまま元に戻らなかったとも、一時的に群生する葦の中に身を隠しただけとも言われますが、こうして思い人を見失ってしまったパンは、失意のうちに生えていた葦から草笛を作って、それをシュリンクスと名づけ、実らなかった恋を偲んで奏でたという話です。

 ということで、「変身前後」のイメージで、葦とともに描きました。


 このエピソードは『変身物語』では、ヘルメス(メルクリウス)の口から語られています。牝牛に変えられて監禁されたゼウスの愛人・イオを救い出すため、見張りの百目の巨人アルゴスの気をそらそうと、ヘルメスが語って聞かせるという状況です。
 こんなふうに変身譚を作中人物が語る、「劇中劇」の手法が多用されるのもこの作品の特徴です。
 中にはその語り手自身が後のエピソードで別のものに変身してしまったりします。


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