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謎の獣耳~AIイラスト・失敗作の愉しみ~

 AIイラスト生成をやっていると、思いもよらぬ絵が出てくることは誰もが経験することですね。
 三本目の手が生じるとか、指の数が4本になったり6本になったりするというのは、みんな頭を悩ませるところでしょう。
 それ自体を楽しむのも一興ですが、たまに、そういう「歪つ」とは別の形で、奇抜なものが出てくることがあります。

 その例が、たとえばこれ。

熊耳のカリスト


 前回取り上げた、「熊になったカリスト」の絵をつくる中で出てきたものです。
「変身前後」ということで、「熊と並ぶ美しいニンフ」という趣旨のプロンプトを入れました。具体的には ”a beautiful nymph standing alongside a brown bear” という具合です。ちなみに ”brown” を入れたのは、ギリシャにいるわけもないシロクマ(ホッキョクグマ)が時に出てきたことがあるのでその防止です。

 ところが、美少女と熊が並んで描かれる代わりに、美少女に熊耳が生えた姿が描かれてしまうことも時々起こるのです。
 他の方の話でも、「動物と女の子を一緒に描こうとすると獣耳が女の子に生えてしまう」事故は起こるらしいです。「女の子と猫」を描こうとして “girl” “cat” をプロンプトに入れると、AIが “cat” を “girl” の属性の一部として認識してしまった、という具合のようです。
 人間ならば当然持っている「常識」というのをAIが欠いているから起こるアクシデントの見本です。

 当然上の絵は失敗作なのですが、これはこれでなかなか可愛い。
 本来の神話ではカリストは女神ヘラ、あるいはアルテミスの呪いによって熊に変えられ、美少女としての姿は完全に失ってしまうのですが、こんなふうに熊耳だけで済んでいれば良かったのに、と思えてしまうところです。

 こういうものを拾い上げるのも、AIイラスト生成の愉しみの一つでしょう。
 AIからすれば一定のアルゴリズムにしたがって出力した結果でしょうが、そのアルゴリズムが少なくとも一般のユーザーにとってはブラックボックスそのものです。擬人的に言えば「何を考えているかわからない」。

 それはクリエイティブとも言えますが、そこに創造性を見いだして拾い上げるのはあくまで人間です。
 少なくとも現時点でのAIは「意味」というのを全くわかっていないわけで、人間が意味を見いだして初めて、アルゴリズムの生成物が「絵」となる。これはあらゆるAIの働きについて言えることでしょう。

 奇抜な生成結果を奇抜なものとして理解することも、それを「愉しむ」ことも、人間がすることです。

 AIとの付き合い方の基本は、まずこういうところにあるのでしょう。

 ということで、熊とも並べてもう一枚。


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