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186. そんなこと言わないでよ。ずっとずっと生きていてよ。

そう先は長くないよ。
もう役目は終わったような気がするし。

帰省中、父がぼそっと言ったこと


帰省中、父がぼそっとそう言った。


心がざわざわした。


そんなこと言わないでよ。
そんな悲しいこと、言わないでよ。
ずっとずっと生きていてよ。

私の心の声


そう叫びたかった。
心のなかで叫んでいた。


でも、声には出せなかった。
なぜか。


わかったからだ。
なんとなく、そう言ってしまう父の気持ちが、わかったから。

近年、父の大切な人が次々と
天国へと旅立ってしまったのを知っているから。

私が父だとしても
そんな風に思うかもしれないと思ったからだ。


父は私のような「おしゃべり」ではない。
多くを語らない。
言いたいことも心に秘めていることが多い。

だからこそ、
ぼそっと言ったひとことは、
本音なんだろうなと
子どものときから思っていた。



言わないだけで。

寂しいんじゃないかな。
心細いんじゃないかな。
不安なんじゃないかな。

私だったら、きっとそうだから。

でも、そんなこと言えない、言わない人だから。

弱音の一つでもはきたくなったんだろうな、と思う。



父は今、一昨年の12月に亡くなった母(私にとっての祖母)に
寄せる文集をつくっている。

それをきかっけに、
父に思い出してもらえたら嬉しいことがある。

それは、父が祖母に対して抱いていたであろう
ただただ「生きていてほしい」と願う心である。

祖母が「生きている」と思うだけで、
心が温かく灯される気持ちである。




明日は、父の誕生日だ。
どうか、父にとって、健やかで幸せな1年になりますように。
それだけを願って、父の大好きなビールを贈った。

1日早いが、今日、ちゃんと届いたらしい。
すぐに、「ありがとう」のメールをくれた。
父のそんなところも大好きだ。


読んで下さるあなたがいるから、今日もnoteが書けています。 またお時間のあるときに見に来てくださると嬉しいです。