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始動6話

始動6話


 ある考えに達し、ホルスは漸く口を開いた。


「…わざわざクリーチャーを使ってまで俺達をおびき寄せた目的ってのはーー」


「ーー分かってんだろ? お前等の始末さ」

 ホルスの言葉の続きを、インディ兵長は愉快な笑いと共に繋げた。


「……ご苦労な事で…」

 ホルスは少々嫌みげに納得し、インディの方へ構えを向ける。



「…そういう事ね」

 あらかた事情を理解したセイラは、ホルスに倣い制服のサイドに装備している拳銃、P229を取り出した。


「…た…闘うんですか……?」

 弱々しく言い、サリアもまた装備していた長さ五十センチ程の楕円状の棒を取り出す。その棒を右手で垂直に持ち軽く上下に振ると、上部と下部から同じ形状の棒が伸びるように飛び出した。下部分は持つ部分と同じくらいの長さである【柄(つか)】になり、上部から飛び出したのは約八十センチの刃で、彼女の武器は、【薙刀(なぎなた)】である事がその形状で分かる。


「当たり前だろ! いいかっ、落ち着いて行動しろよ?!」

 サリアに怒鳴りながら激励するホルスの武器は己の拳。彼は拳銃も使うが得意とするのは格闘術だった。


「…うぅ~…。僕、足手まといにならないかなぁ……」

 と、泣きそうになりながらもノヴァは左腰に装備していた剣を鞘から抜き出す。



「ーー手加減はしんぞ」

 低く言い放ち、拳銃の銃口をピタリとノヴァに向けるインディ。



(…くそっ、囲まれてるな! このメンバーじゃあ、いずれは力尽きる……早いとこ突破口を開かないと……!)


 ホルスは内心、臍を噛む。ノヴァとサリアはSD配属となって間も無く、実戦経験も浅い。それを考慮しての戦闘は正直キツいものがある。一人……いや、経験豊富なセイラとなら何とか出来そうだが、SDとしてまだ未熟な二人をサポートしながらの戦闘となれば――焦りは死を早める。何とか冷静に対処しなければ……。




「ーーさぁて、どうする?」

 インディは見抜いていた。SDのノヴァとサリア二人が実戦経験の浅い事を。それは長年、戦に身を任せてきた者なら自ずと分かるようになる。邪魔なSDを簡単に始末出来る――インディはそれを確信した。

(ならば、後に控えた兵士等は必要なかったかな?)

 勝利への余裕からか、そんな考えさえ浮かぶ。




 SD四人は動けなかった――いや、動くことが出来なかった。


 北天騎士等に周囲を塞がれており、こちらが少しでも行動を起こそうものなら、ノヴァに向けられているインディ兵長の銃口が火を噴くことになる。突破口を開くことは疎か、身動き取れない以上は、相手の出方次第の防衛戦となる。



 そんな状況を作り出し、もとよりSDを逃すつもりのないインディは、兵士等数人に視線で合図をとり戦闘開始を促した。


 途端に──ホルスの前に立ちふさがる北天騎士の数人。ホルスは防御しつつも兵士等を当て身なとで沈黙させる。それを発端に、セイラ、サリアとノヴァも行動を興す。


 ──セイラは、サリアやノヴァのサポートを務めた。ホルスが作り出した突破口から抜け出し、離れた場所から援護射撃をする。お陰でサリアとノヴァの戦闘初心者二人組は安心しながら戦えた。


 そんな中、サリアをサポートしているセイラの後ろ辺り――身を潜めながらセイラに切りかかろうとする一人の北天騎士、兵士Aを見つけたノヴァ。


「…っ! セイラさんっ危ないよ!」

 叫び、セイラのもとへ駆けつけるノヴァ。


 セイラは振り返る。目前に迫った、輝き帯びた切っ先──


 ──キイイィィン!


 乾いた金属音。

 セイラはとっさに瞑った目を開ける――間一髪。自分に向けられた切っ先は、息を切らしながらも駆けつけたノヴァの剣によってその動きを止めていた。

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