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沈黙の寝台

金木犀の鮮やかな絨毯に
眠るわたしを思うとき


最後までドラマティックに
らしいわ、と口々に笑われ偲ばれるであろうとの
夢想

銀木犀の謙虚な絨毯に
横たわるわたしを思うとき


最後はやっと優しい舞台を
選んだのね、と口々に笑われ偲ばれるであろうとの
夢想は出来ない

的礫たる
わたしの願うサマとは異なるからだ

物心ついたときより生まれ培ったわたしの意地、信条を
最後の最後、変える気など毛頭ない

木犀は設定に無理がある?
そうね、行き倒れの老女にしか見えないわね

じゃ、わたしの最も愛する薔薇にいたしましょ


赤薔薇でなければ白薔薇でもいい
わたしの顔を剣山みたく突き刺してもいいわ

もう血も出ないでしょうし


大仰な最終章、死の舞台
らしいわ、とわたしの友は皆口々に言って下さるわ

見栄っ張り、虚勢、どんな形容だって受け入れるから

せめて最後くらい


沈黙の寝台に横たわるわたしを
誇らかに飾って

よく生きたわね、と褒め称えてよ!

わかるでしょ?
わたしは、もう十分に頑張ったわ
あなたは、いつかこの詩に辿りつくでしょう

此処に書き記しておきますからね

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