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伽藍の祠

ある時から、少女は一切に口閉ざし、
少女だけの秘密の場所に息潜めました。

大人たちの言葉は無意味で騒音で
全てが嘘っぽくて

露店の毒々しい果汁ゼロ%の色水に似て

信じて一口飲めば、林檎の味も桃の味もせず
少女の舌には、その鮮やかなる着色料がこびりつき


何度、舌を歯ブラシで磨いても
なかなか取れずシブトクテ

だから、少女にとって、そんな偽の禍々しい飲料の如き
表層の言葉は有害でしかなく

油断して、その空間から一歩足踏み出して
運悪く目を合わせたならば、

これ幸いとばかりに
その歪んだ口から毒の淫靡なにほひを吐き散らす
ある種の大人のオトコが近付くことを知ったのです。

少女は伽藍の祠にこもり
そこに少女の清らな寝台をせっせとこしらえて


いつまでも、これ以上、痛めつけられないように

そう、秘密の花園に隠れたのでした。

とうに大人のオンナとなった自分の姿に気付くこともなく

もし、鏡を見たならば
誰かと接触したならば

その幻想の空間は消え失せ
無垢な瞳を持った愚かな脆い少女であったモノは、
自身が
とうにマガイモノの毒ジュースに変わっていることを
知らされるでしょう


絶望は無垢と無知に潜む
無知は、無邪気と同義

無邪気は残酷を産む。
残酷なるは、無垢なる凶器。

その、かつて少女だったモノは
道端に捨てられようと、拾われもしない
古びた時代の
ぼろぼろの人形に成り果てておりましたとさ。

 

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