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父よ

くわっ!と、その目を見開き

”お前は!”と、怒声を発せよ

入道雲の如く

大岩の如く

圧倒的な畏怖を

わたしに味あわせよ


父よ

 

事の推移

 わたし自身の風邪にて一週間訪れなかった間

 父は隔離室に入れられ点滴を受け

 頬削ぎ落ち目は窪み

 久し振りに会う父は死に行く人の如く

 変貌遂げていた

 お父さん!と声を掛けても眠ったまま

 「何も食べないからです。」介護士が憎憎しげに答える

 「風邪では無いのですね?他に何らかの病気だという可能性も無いと?」

 「分かりませんけどね」

 「は?・・・感染病室ですよね?此処。それって・・」

 「だから、お母さんは入れてませんよ」

 「え?・・・」

 話にならぬので、翌日、介護主任との面談

 結果

 元居た母の部屋に戻される

 その日から、父の好む食べ物を持参

 ようやく 口開き うすらと涙する

 「お前はもう来んかと思うた

 腹が減った」

 果汁を取り出し口元に持っていく瞬間

 クダンの訳分からんちん介護師登場

 「まだ何もあげないで下さいよ。」

 「唇もひからびていますけど?医師の通達ですか?」

 「○○さん!お腹空いたんね。じゃ、何故ホームの食事を食べんのよ。」

 何たる口調か。そりゃぁ、父の性格は知っている。腹も立とう。がー

 衰弱した入所者への対応ではあるまい。

 「・・・まずい。辛い。受け付けん」

 

 やや父らしさ復活の兆しあり

 栄養失調であるという旨は三ヶ月毎の更新時、栄養士さんとケアマネさんより

 詳細を聞き及んでいた。

 だから、父に毎日差し入れしていたのだ。咎められることは無かったのだ。

 今回のGWまでは。

 まるで罰の如く

 日頃の憂さを晴らすかの如く

 重篤患者の部屋に入れ

 家族に何の連絡も了承も取らぬという施設の対応に

 疑念と憤怒を覚えるも

しばし静観。

 事荒立てることも、無駄に批判する気もない。

 父はともあれ、母の部屋に戻されたのだから。

 

 経口摂取出来る間は、特に高齢者の場合

 点滴は不適切な選択だ

 (去年の母がそうだったのだ)

 釈迦に説法かと思うも、クダンの介護師には

 駄目もとでモノ申した。わたしの意向、伝達せよと、穏便に、しかしきっかりと。

 

 母に向かい開口一番

「おい、俺を覚えとるか!?」

耳の遠い父の声は、以前にも増して大きい

 

 母は父の不在を認識していたろうか

 分からぬが、父観てニコリと笑う母に

 父はまたしても号泣す

 今後、不誠実、不適切、対応の杜撰さがあれば

 腹くくり、煩い娘と言われようが、対峙せねばならない

 覚書

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