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『ホームの執念』 FA Cup 準々決勝3/18Man United vs Liverpool [マッチレポート]


展開予想(3/16時点)


今大会両チームの勝ち上がり
United
vs Wigan 2-0
vs Newport 4-2
vs Nottm Forest 1-0

Liverpool
vs Arsenal 2-0
vs Norwich 5-2
vs Southampton 3-0

ユナイテッドはどういった戦術でゲームに入るか。
前回対戦、アンフィールドでのリーグ戦17節。結果として0-0に終わったこのゲームだが、リヴァプールのシュート34本に対し、ユナイテッド6本。XG(ゴール期待値)は2.38と0.75。端的にいうとワンサイドゲームだった。ここ最近リヴァプールへの苦手意識が拭えないユナイテッド。

一方で、好材料も。リヴァプールは3/15にELを戦ったのに対し、ユナイテッドは直近のエヴァートン戦から8日間の準備期間があった。試合前の会見でテンハフはホイルンドの復帰を明言。ユナイテッドはこれらのプラス要素をどう活かすか。リヴァプールはクロップ政権ラストのFAカップ。カラバオ優勝の勢いそのままに取れるタイトルは全て狙っているはずだ。怪我人の復帰もあり、両チームの力量を見ればリヴァプール有利のゲームである。

試合展開としては、ゲームの入りはユナイテッドはやはり、ビルドアップにチャレンジすると考えられるが、依然としてマルティネスがいないことや、これまでの対戦を見てもうまくいかないことは明らかである。結局オナナからのロングボールになるが、こうなれば高いリヴァプールの最終ラインの背後を高速の前線3枚で突きたい。コンパクトに守り、カウンターを決め切ればユナイテッドにも勝機は見えてくる。対するリヴァプールはいつも通りのハイプレスで中盤辺りで奪い、ショートカウンターを狙いながらも、アバウトになったボールはCBで回収し攻撃を仕掛けてくるだろう。絶好調のヌニェスが背後を狙うことで下がったユナイテッドのDFラインと中盤のギャップをうまく使って攻撃できればなお効果的だ。

スタメン予想

1st half

カゼミロは怪我でメンバー外。さらにサラー対策か、ワンビサカを左SBに配置。リヴァプールは予想通りのラインナップとなった。

スターティングラインナップ

・出足で勝るユナイテッド
ホームのユナイテッドは押しかけた大観衆の声援を背中に、アグレッシブな切り替えを軸に前線にポジティブな雰囲気を生んだ。問題視されていたビルドアップは、立ち上がりということもありリスクを避け、サイドに丁寧なミドルボールを入れる形で攻撃。リヴァプールは勢いに押され、イージーなミスも散見される立ち上がりになった。
明確な戦術というよりもユナイテッドにはサポーターも含め、「今日は負けられない」という覚悟が見え、素晴らしいスタートだった。

そして10分。先制点である。前節のエヴァートン戦でも見られた、ラッシュフォードが持ったときのガルナチョのポケットへのランニング。中で待つマクトミネイが押し込みゴール。リヴァプールはクアンザがサイドに引き出されてしまい、中の人数が足りなくなってしまったのと、ガルナチョのランニングへのケアがなかった。対応のミスが生んだ必然的なゴールだった。

引き出されたCBのスペースが空いた

・徐々に移る主導権
しかし相手はリヴァプール。ここで崩れるわけもなくボールを保持しながら隙を狙っていく形。ユナイテッドはミドルのブロックを組むシーンが増えていった。これに対しユナイテッド、メイヌーのワンアンカー起用は上手くいっていた。IHがCBに出ていくタイミングで数的不利になる中盤をぼかしながら上手く守っていたからだ。

メイヌーのアンカーでの守備

ユナイテッドは失点するまでの時間、この形でリヴァプールの攻撃を外循環にさせて、守れていた。しかし、失点シーンである。ユナイテッドの左サイドに深く侵入されたあとのプレーだったためアンカーのメイヌーはスライドが間に合わず、一時的にその役割をラッシュフォードが務めることになった瞬間の出来事だった。制限をかけたブルーノの次にクアンザの持ち出しに対して、ラッシュフォードが出て来れず簡単にゴール前で数的有利を作られた。
それによる失点シーンだった。

ラッシュフォードの守備戦術の無さ

・やはり、やはり拭えないビルドアップの課題

テンハフへの最大の懸念点。2年目にしてビルドアップの構造が見えないことである。2失点目はそれが失点へと直結した。
リヴァプールは左SBのワンビサカがビルドアップを苦手としていることを知ってか、右CBに出た時にマクアリスターが右SBのダロトを切ってプレス。意識的に左への誘導が見られた。
本来ならばCBが早くGKの両脇に立ち、SBを押し上げることでプレスを受けにくい形を作れるが、一番プレスのかけやすいコーナーのスペースでビルドアップの苦手なワンビサカ(パス成功率 両チーム含めたDFラインワースト  72%)が受ける。そして失点である。よく分からない。
ヴァランのビルドアップ能力は乏しく、ワンビサカもそうならば、時間帯も頭に入れ、オナナからのロングボールが最良の判断だっただろう。

プレス回避方法の1つ
失点直前のシーン

37分、遠藤が幻のゴールを決めたシーンも同じである。ワンビサカがコーナーで受ける。もし、マルティネスがいれば左足でプレス回避が、、それは言っても仕方のないことである。

遠藤幻のゴールの直前

最高の入りを見せておきながら、1-2での折り返し。細かいミスを重ねるユナイテッドはやはりリヴァプールには勝てないのかという感じの前半であった。


2nd half

・リヴァプールのビルドアップ時の変更点
後半入りから押し込むリヴァプール、カウンターのユナイテッドという構図が続いた。
リヴァプールは後半、2CB保持時ジョーゴメスをインサイドへ入れることで中盤の位置でプラス1を作り、優位にボールを保持するシーンが見られた。(後半ポゼッション率61%)(前半59%)

中盤での4vs3

この変更に対しユナイテッドは対応しきれず、メイヌーの脇でマクアリスターとソボスライが受ける形が生まれ、DFラインは下がらざるを得ない状況になってしまった。
ユナイテッドは、オナナ中心に後半は耐えた、凌いだという形だった。

・同点弾 テンハフ決死の交代策

ユナイテッドは、復帰明けでおそらくプレータイムに制限のあったホイルンドとワンビサカを71分に下げマグワイアとアントニーを投入。ラッシュフォードをCFに置き、ガルナチョを左へ配置。リヴァプールは数的優位を作れていた中盤にクリエイティビティに長けるエリオットを投入。トドメの3点目を取りにきた交代策だった。
この時間帯あたりからだろうか。ELをミッドウィークに戦ったリヴァプールに疲れが見え始めた。特に中盤はセカンドボールへの回収率が時間を追うごとに悪くなってきていた。

84分。ヴァランをアマドと交代。ユナイテッドは配置を変え、パワープレーの体制に入った。ブルーノを後ろに配置し、フリーな状態でロングボールを蹴らせるように変更をした。

ブルーノを後ろへ配置

そして86分同点弾である。今季不調が続いたアントニーのゴール前でのイマジネーションが生んだ奇跡的なゴールというのはもちろんだが、ゴールの前のシーンではブルーノが後ろからのロングボール。少しミスキック気味だったがここに来てテンハフの采配は当たったと言えるだろう。

そして2-2で延長を迎える。

Extra time

・シーソーゲームの行方
ユナイテッドは引き続きブルーノを後ろに配置。ビルドアップは避けロングボールを前線へ送る形。延長戦らしい戦い方をとった。

後ろでフリーのブルーノ

105分リヴァプールの得点。エリオットのミドルがディフレクトしゴールへ吸い込まれた。ユナイテッドのボールへの圧力が弱まった一瞬の隙であった。これで勝負ありかと思われたがまだゲームは終わらない。

・再びの同点弾
延長後半開始とともに、ユナイテッドはリンデロフに変え、怪我明けのマウントを投入。さらに前線の枚数を増やし得点を狙った。
そしてマグワイアはブルーノにボールを渡すと前線へ。超パワープレーである。

終盤の配置

112分。左サイド低めの位置で受けたヌニェスの痛恨のミスからラッシュフォードがワンタッチでゴールを揺らした。ヌニェスはこの数分前ゴール前で判断が遅れアマドに奪われるシーンも。集中力の限界だったか。

・そして…
120+1分。コーナーキックのカウンターの形からアマドの逆転弾。
からのセレブレーションでアマドは退場。カオスであった。

ラストシーン


・まとめ

今試合に関してはホームのユナイテッドの執念勝ちといったところだろう。確かにテンハフの交代策は当たっていたし、土壇場での起点を利かしたブルーノCB配置も効果的だった。しかしこれはFA CUPである。トーナメントにおいて評価できる戦い方をしたもののユナイテッドの根本的な問題解決へはこれからのリーグ戦へ、依然として疑問が残る形だった。
対してリヴァプールは試合前からの懸念点の1つだった疲労がマイナスに働きすぎた。運動量的なところでも集中力的なところでもだ。
果たしてラストシーンのコーナーキック。リスク管理をしていれば。などと考えてしまう、振り返って見ればもったいないゲームだった。

延長にもつれたこともあり、長くなりましたが読んでいただきありがとうございました!

アドバイス、意見よろしくお願いします🙇

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