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たかが石ころ、されど石ころ

アウトレンジ攻撃
戦いの基本は当たり前だが味方の被害を小さく、敵の損害を大きくすることである。そこで一番安易にこの条件を満たせるのが、敵射程距離外からの攻撃、アウトレンジ戦法である。人類史上5回の兵器革命があったが、3回は武器の射程距離の大幅な延長である。(1回目は投石・弓。2回目は車輪。3回目火薬。4回目は軍用機。5回目は原子爆弾。)

スリング
投石兵器の発明はこの兵器革命の1回目にあたり、中石器時代(紀元前1万年前)から使用されていた。投石用の紐を頭上で振り回し、遠心力を加え放り出す。この投石用の紐をスリングと呼び、「旧約聖書」でもダビデが巨人ゴリアテを倒すときに登場している。同時期に発明された弓より遠距離に飛ばせ、殺傷力も高くまた弾の調達も容易であった。当時の弓は複合弓(複数の材料を張り合わせる事で射程と破壊力を向上させた弓)でなく、精度も射程距離も殺傷能力もそこまで高くなかった。しかし、頭上で振り回すので密集した陣形で使用できないこと、紀元前3000年ごろから複合弓が登場したことにより、陣形が複雑化すると遠距離攻撃は弓主体となっていった。

攻城兵器としての投石
スリングや弓が発明されると、防御側も城壁を作り要塞の発展が進んだ。それに伴い、攻城兵器が発展していった。その一つに大型の投石器・カタパルトが発明される。いつ発明されたか不明だが、古代ローマやギリシアなどの大国で頻繁に使用されていた。紀元前400年頃、ねじりばねが発明されると4kgの弾を320mまでとばせるようになる。以後大砲が登場する、中世まで攻城兵器として改良が重ねられ、攻城兵器の主力として使われていく。

終わりに
石を投げて戦いをすると聞くと、とても原始的に聞こえるが形こそ変え中世まで石ころを飛ばして戦っていたのである。火薬の登場で日の目を見ることがなくなったが、第一次世界大戦でも使用された記録があるし現代でもスリングショット(Y字の投石機・通称パチンコ)という名で遊具として使われているのである。日常において、たかがと思っているものも強力な武器となるということを忘れてはいけない1例である。

参考資料 
図解 古代兵器 水野大樹 新紀元社
戦闘技術の歴史 1 古代編 サイモン・アングリム他 創元社

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