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不可解参(狂)の感想

2022年8月24日(水)、日本武道館で行われた『不可解参(狂)』に行ってきました。これはその体験の、浅漬け並の熟成で書かれた感想です。もしかしたら、しゃぶしゃぶ程度の湯通しでお出ししているかもしれない。ただし、どんなメディアや他者の感想も通していない、自分だけの感想です。質? 根拠? そんなものは無い。

思えば、自分が武道館で行われるライブに行ったのはEvery Little Thingの2000年前後のライブ以来なので、20年ぶりぐらいです。動画で観たYMO武道館ライブのぼんやりした映像も記憶に混じり、親に聞くとビートルズが来日公演をやった伝説の会場だという。そう、特別な意味を持つ場所であります。プロデューサー氏は是非とも花譜ちゃんをここに立たせたかったのでしょう。だから「狂」とは、強い思い入れによる「どうかしている」「正気ではない」おこないの意味であると、この頃は捉えていました。

会場物販はなんと午前10時から開いています。開演は午後6時なので、そんなに早く行く必要はありませんが……観測者は集まっていました。事前のツイッターTLによると、自作のグッズを交換するために集まった方や、SNS上の知り合いに会うための待ち合わせをしている方など、なんだか同人即売会でも行われるような盛況ぶりです。
さて、まずは物販です。長い名前で面白い「さくらんかいアイス(略した)」を購入しました。花譜ちゃんの好物であるアイスクリーム、真夏に季節外れのさくら味で「不可解な季節感」という凝ったプロデュースの品です。さらにライブではおなじみの「お水助かる」と「かふかふ」が印刷されたクッキーが一枚付いています。
観測者としては、氷菓に特別な思いがあります。自分は知らないのですが、一番最初に行われた、今や伝説のライブ『不可解』では、物販でアイスが出たのです。だから、ライブでアイスクリームを食べたらどんな気持ちになるのか常々知りたいと思っていました。実際に食べたらですね……、美味かったですね。あっという間でした。ライブでアイスを食べる。アイスがグッズ。やっぱり不思議ですね。次はチロルチョコが置いてあったりするんでしょうか。

で、時間が4~5時間ほど大きく飛んでライブの感想なのですが、セトリ順にお話ししましょう。物販で買ったペンライトを握っています。ノイズのかかった壊れたような歌が流れていて、武道館の天井は岩盤のようで、席の反対側は異常に遠く感じられ、崖のへりに座っているようで正直不気味です。不可解参(狂)の第一印象は、決して良いものではありませんでした。舞台に大小の四角い格子があるのは、予告動画で出ていた超立方体(正八胞体、テセラクト)でしょう。これが何かの仕掛けなのでしょうか。

1.魔女
2.畢生よ
3.夜が降り止む前に
セットリストが四部構成なのは後からパンフレットで知りました。まずいきなり魔女です。色々と重要な曲なので、ここぞという時に流れるイメージでしたが、一発目に来ました。立ったり座ったりしながら考えて、やっぱり立ってペンライトを振っていました。ペンライトが自動で光るのは、カチカチ光の色を合わせなくてよいので、焦らずに済んで大変有り難いです。完全に色の揃ったペンライトの波は、とても美しいものでした。最初から見たことのないお姿で、花譜ちゃんが出てきたように思うのですが、既出なのでしょうか。ちょっと分かりません。

4.ニヒル
5.アンサー
6.命に嫌われている(カンザキイオリCover)
どれも本当にいい歌だなと思いまして……既に心動かされていました。今回のライブは、最後でどんどん音を上げていくアレンジが幾つか含まれていて、それもまたMAD(狂)ということで、お祭り騒ぎの意味を含むのかな、と感じ始めておりました。

10.化孵化
11.流線型メーデー
実を言いますと、このあたりまで演出に混乱しています。音と光が凄まじいのは分かるのですが、これが武道館の天井の岩盤のような圧迫感と相まって、終末の雰囲気を醸し出しているように思えてなりませんでした。もしかしたら、武道館の外は荒涼とした砂漠で、自分達は核シェルターで最後の馬鹿騒ぎをしているのではないか……と思えてきたのです。MAD(狂)であればあるほど、勝手に脳内で滅びを認識してしまい、何を考えているんだと我ながら思いつつペンライトを振っていました。

12.組曲「飛翔するmeme」withたなか
13.組曲「イマジナリーフレンド」with大森靖子
14.表裏ガール
ついに舞台の超立方体が活き始めます。立方体の内側にゲストの方々が転送され、花譜ちゃんと共に歌う。たなかさんも良かったですが、大森靖子さんの渾身のパフォーマンスが凄かったです。大森靖子さんの偉大さを寡聞にして知らないのですが、取り憑かれたような動き、歌、引っ張られました。そして、本当に下の舞台からダンサーのイマジナリーフレンドが出てきた時、自分は少し泣きました。空想の友人が現実に現れる瞬間とか、そういうシチュエーションに弱いです。ゲストの可不ちゃんはかわいい。

15.K.A.F DISCOTHEQUE
いきなり始まった花譜ディスコ。今まで以上に激しい音と光。おそらくこれが休憩時間のようなものでしょうが、全く休まりません。刺激的です。可不の曲がいくつか流れたのは覚えています。そういえば、今回のライブは各曲の1番だけしか流さないということが多いです。なかなか詰め込んだのかもしれないし、既に知っている人の多い曲は全体の構成で重要でなければ省略していくぞ! ということかもしれません。

16.ダンスが僕の恋人 with MIKEY(東京ゲゲゲイ Cover)
超立方体から転送されてくる、真っ黒なMIKEYさんのダンスがビシッと止まって格好良かったです。

17.CAN-VERSE with ORESAMA
以降は事前には明かされていなかったゲストの方々です、ORESAMAさん。新曲です。

18.神聖革命バーチャルリアリティ with VALIS
なんとオリジンの姿で登場。もうバックダンサーという感じではなく、花譜ちゃんを奥にして前面で歌って踊ります。キレッキレです。凄すぎる。

19.V.W.Pメドレー
いきなり未来のクルマに乗ったドライバーの幸祜さん、春猿火さん、異世界情緒さんの三人が現場に急行するドラマが始まり、見慣れない少年が手伝おうか? と提案。途端、らぷらすの魚影が現れ、車を背に乗せて空を泳ぐ。らぷらす……お前、ショタだったのか。
この映像の未来感は好きです。
そして、渡米して居ないはずの理芽チまで!
このサプライズに、自分はびっくりしました。帰国していたなんて……! 観測者芽組は泣いた方もいそう。

20 共鳴
岩盤のような武道館の天井がやっと気にならなくなってきました。今までの演出に見られた「尖り」と、それが起こす戸惑いから、いつものV.W.Pのメンバー集結という奇妙な安心感で、会場や演出の意味を再度考える余裕が出てきました。MAD(狂)とは何なのか……「どうかしている」「正気ではない」おこないの意味では、ないのではないか。『共鳴』は、まさにこのためにあったのではないかというペンライトの光とともに、大いに盛り上がりました。

21 過去を喰らう
22 海に化ける
23 人を気取る
24 不可解
25 未観測
26 狂感覚
『過去を喰らう・海に化ける』に続く『人を気取る』、『不可解・未観測』に続く『狂感覚』。どちらも第三部楽曲があると初めて知らされ、そんなに続きがあるのかと衝撃でした。『人を気取る』も『狂感覚』も、なんだろう……花譜ちゃんを通してカンザキさんの心境の変化を感じるというか、やさしい歌だと思います。一度、尖った演出で惑わし、V.W.Pで従来の感覚を取り戻させ、再び花譜ちゃんのワンマンに回帰する……やっと理解できた気がします。何かに夢中になること。愛することに心を全開で傾けることもそうでしょう。MAD(狂)とは……肯定的な意味だったのです。それは幸せということかもしれません。最初に受けた戸惑いや終末感は、自分の側のチューニングがズレていたのです。このライブは最初から、それを伝えようとしていたのだと知りました。

27 マイディア
バーチャルシンガーから、バーチャルシンガーソングライターへ。花譜ちゃん作詞の曲が、歌われました。
これを聞いた自分の気持ちは、成長したな……BIGになったな……ありがとう、とか、そういう言葉だけでは一言で説明できない満たされたものであります。神椿を追っていて良かったな……と本当に思いました。


自分はこれから冬コミに向けて書かねばなりません。誰が期待しているとか関係なく、やらねばならないことだと思っているので、頑張らねば……。
花譜ちゃんの成長を見せられ、愛を見せられ、創作のこころも刺激する、武道館に相応しい良いライブでした。
ありがとうございました。

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