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noteになにを求めるか

 前回の文学フリマに参加したときの話だ。

 大学生くらいの男の子がふらりと立ち寄って、拙作を一冊買ってくれた。お金のやり取りをしながらの雑談の中で聞いてみたところ、表紙に惹かれて初見で買ってくれたらしい。大変にありがたい話だ。

 そんな会話の中で「どこかで連載しているんですか?」と聞かれたので、素直に「noteで連載しています」と答えた。が、その回答に彼はすこぶる驚いていた。

 曰く、こうだ。

「えっ。noteって連載とかできるんですか!? 捨て垢でお気持ち長文書くところじゃないんですか!?」

適材適所という言葉があるけれど

 noteに小説を求めてくる層は、恐らくかなり少ない。

 これは450日に渡る連続更新の中での肌感覚に近い物ではあるが、最近は確信に変わりつつある。

 1年以上にわたり、メインコンテンツたる小説だけでなく、感情の赴くままに書いた追悼記事広義のお気持ち長文クリエイター向けお役立ち情報、note感想文、その他もろもろを公開してきた中で、やはりウケるのは感情(特に悲しみや怒り)に訴えかける、共感性の高い記事だ。たまにイベントでスキが増えることはあるけれど、View数的にもスキ数的にも多いのは圧倒的に共感性記事だ。

 補強するものとしては、ここ最近の「note編集部によるおすすめ」がある。半年ほど前にこんな記事を書いたのだけど、他と比べて小説がピックアップされることがとても少ない。これ、小説の供給の多寡の話なのかと思っていたのだけど、きっとそうではないなと思い始めた。たぶん、単純にnote編集部が記事を届けたい主要ターゲット層として「小説を読む層」が設定されていないんだと思う。

 そう思っていたら、更に更に補強材料がきた。バールさんの短編小説「機械仕掛けの墓標」が編集部オススメに選ばれた(超めでたい。バールさんの小説はみんなもっと読むべき。これを見つけてピックアップした編集部担当者は勲章を与えられるべき)けれど、他の記事のView数にはほとんども影響しなかったという話。

 この件について、原因を「noteに小説を読みに来ている人が少ない」ことと考えれば辻褄があうなぁなんて考えている。

「note編集部のおすすめ」に載ったから「機械仕掛けの墓標」を読む。ここまでは良い。ただそこから、「面白いな、この人の他の小説を読んでみようかな」と思う人が少ない。なぜなら、彼らは小説を読みに来ているわけではないから。 ……といった流れなんじゃないかなと。

 なので、この短編作品単発でとった100以上のスキは本当にスゴイことだし、誇っても良いどころか誇るべきことですよバールさん。いや実際すげー面白かったから。毎度のことだけどホント悔しいくらい面白かったから。ただ、小説そのものではなく「小説の作者」に興味を持つタイプの読者が少なかったという話なんだと思うんですよ僕は。

 私信はこれくらいにしておこう。

 僕やバールさんをはじめとしたパルプ小説を書いて公開している人たちはみんな、「逆噴射小説大賞」というイベントをきっかけにnoteに入植してきた。2018年の第1回小説大賞に続き、2019年にも開催され、更に多くの小説家がnoteにやってきたと思っている。

 そういうわけなので、僕の身の回りにはnoteを主戦場として活動する小説家も、noteに小説を読みに来る人も、そこそこの数がいる。

 ……とはいえ、noteのユーザ全体数からするとそれは微々たるものなんだと思う。

なおこのイベントの主催者はダイハードテイルズというサークルで、ニンジャスレイヤーという小説を連載している。トンチキな文体に惑わされがちだがはちゃめちゃに面白いので読んだことない人は読んでほしい。

僕個人のスタンス、そしてみんなに勧めたいこと

 上述の通り、「noteには小説を読みに来る人が少ない」。でもだからと言って、ここで小説を書くのを連載をやめるつもりはさらさらない。

 僕の認識としては、noteの利点は「続けられる」ことにあると思っている。ランキングやデイリー閲覧数やブックマーク数なんかの数値を見ずに済むし、スキという好意的な反応だけを受け取れる。

 僕は誰もなにも見ていないところで小説を書き続けられるほど「書く」に夢中になれる人間ではないので、まず「反応がある」ことが重要だし、更に昔「小説家になろう」にいるマウント取り野郎にぶち切れたこともあるので、「好意的な反応だけを受け取れる」というポイントもチョー魅力的。

 なので、続けるためにはnoteでやるのが最適解だと思っているし、そうしようと思っている。

 とはいえ一方で、小説を売るとなると話は別だ。

 note上で活動を続けて、出来上がったものを然るべき場所で然るべき方法で公開するということも、やっていく必要がある。これは以前書いた「書いてオシマイってわけにはいかない。売るのも自分の仕事だ。甘えんな」という話とも通じているのだけれど、その売り先はきっとnoteだけではない。というか、noteの外をメインターゲットにしないと、パイがあまりにも小さい。

 今の僕の活動で言えばコミケや文フリで物理書籍を出すことだけど、この調子で話数が増えていったならば、どこかのタイミングで他の小説投稿サイトに投稿するということも考えようと思っている。なんせ、小説を求めている読者の総数はそちらの方が圧倒的に多いのだから。

いじょうだ

 ここ最近身近なところでこの手の話題があったので、僕なりの考えをしたためました。が、よくよく考えるとちょっと前に似たようなことを書いていた。あれだ、仕事の疲れで記憶が飛んだんだ。やはり労働は悪。

 なお、僕個人のファンを増やすという意味でコラムやらエッセイでこちらの考え方とか日常とかも発信する価値があると思っていて、そういう話はnote上に大きな需要があると見ているので、それも続けていきたい。こんな風に。

 それはそれとして、公式でやったストーリーコンテストでこういう状況なのは流石にマズいと思うのだけど、その辺どうなんすかねnoteさん?


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