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桃之字の #逆噴射小説大賞2020 作品制作日記

 よくきたな🍑

 この記事は、逆噴射小説大賞2020への応募作5品ができあがるまでの悩みとかを不定期に書いた文章を貼り付けたものです。誤字脱字を整えた以外は原文ママとなっています。

 特に5作目「タソガレ・デッド・バレット」が出来上がるまでの迷走っぷりが凄まじく、「ライナーノーツよりもこれ公開した方がウケそうだな」と思ったのでこちらをお出ししてライナーノーツの代わりにします。

 さてこの手記だが、桃之字が2020に参加するにあたり考えたことをまとめるものだ。応募上限数を投稿し終えたり、「今回はもうここまでで良いな」と思ったら、その後に投稿する。「あとがき」のようなものだが、あくまで構想の段階であるので、ここで書いたこと考えたことがそのまま作品になっているかどうかは、今の僕にはわからない。
     (本文より抜粋)

 ご覧の通りめちゃくちゃ長い(2万文字超え)ので、各日付でなんの話をしているかを注釈しておいた。目次で見れるので確認して、興味があるところだけ読むことをオススメします。

 それでもめんどくさくなったら今日の日付(11/1)だけ読んでください。これはさっき書いたので。

 それでは行ってみよう🍑

はじめに:桃之字の応募作品

2020/9/29
 やりたいこと・意志表明

 本日は晴天なり。

 逆噴射小説大賞の開幕を目前に、note/twitterどちらのタイムラインもソワソワした雰囲気が漂い始めている。既に慣らし運転・真剣素振りなども始まっているようだ。

 レギュレーション発表は明後日だが、噂によると昨年と大きくは変わらない見込みだそう。「物語冒頭800文字まで」「応募はひとり5本まで」。もしかしたら応募上限は減るかもとの声もあるが、文字数はそう大きく変わらないだろうと思っている。

 さてこの手記だが、桃之字が2020に参加するにあたり考えたことをまとめるものだ。応募上限数を投稿し終えたり、「今回はもうここまでで良いな」と思ったら、その後に投稿する。「あとがき」のようなものだが、あくまで構想の段階であるので、ここで書いたこと考えたことがそのまま作品になっているかどうかは、今の僕にはわからない。

 さて、前置きはこのくらいにして思考の整理に入ろう。

「冒頭800文字だけ読んで一番面白そうな小説を書いた奴が優勝」の逆噴射小説大賞、過去2回参加してきたけれど未だに正解がわからない。わからないけど、わからないなりに色々と考えて、今回はテーマを持って作品応募してみようと思った次第。なお、1年目は小説家復帰のためにとにかく我武者羅に書いた→2年目は予選通過だけをターゲットにして書いたと来ているので、まぁ順当なステップアップだとは思う。

 さて、まずは根本のおさらいから。

 まず「冒頭800文字だけ読んで」の記述に関しては「800文字書けば良い」というわけではないことは明白だ。

「800文字で物語が動かないもの」は論外。「800文字で事実上物語が終わっているもの」も論外。転じて、「800文字で物語の結末が見えちゃうもの」も選外。故に、「先を想像させつつも結末がどうなるかわからない」ものを出すことが必須条件である。

 これをやるためには800文字分だけでなく、物語のある程度の区切り、場合によっては完結までをしっかりと考えておくことが必要となる。要は新作の小説を最初から最後まで考えろってことで、特に1年目はこの辺りが全くできておらず、本当に冒頭だけを考えて出していたので全部選外になった。

 というわけで「先を想像させる」にはある程度世界観であったりキーワードであったりを開陳しておく必要がある。とはいえSF的な世界観やファンタジー的な世界観を書こうにも、800文字だと説明だけで終わっちゃってしまい、上記の通り論外となってしまう。2年目で悩んだのがここだ。

 どうにも、世界観やキーワードを開陳する際に「ほぉらここがフックだよ!」と言わんばかりの出し方になってしまうところがある。いわゆる「文章が笑っている」というもの。お笑い芸人が自分で笑いながらネタをやったら面白くないでしょ、という話。

 800文字の中で、この辺りのバランスをどうとっていくか、というところがこのコンテストの命題であると考えている。

 以上の前提の元、今回試してみたいものがいくつかあって、ひとつはこういうやつ。

「作り込んである設定からにゅっと出てきた結果だけ置いておく」

 自身を顧みてみると、アマガサなんかは割とそういう感じなんだけど、もっと極端に見せ方を考えていきたいなと思っている。今年一年のインプットの多くは漫画だったのだけど、どの漫画も世界観説明は後回し、最初の3〜4ページは「結果だけ」を描いていることが多いなぁと思っていて、ちょっと真似してみようかなと。そのためには事前にちゃんと設定をコネコネしておかなきゃなので、腹据えて考えてみやつと思う。

2020/9/30
 やりたいこと・決意表明2

 本日も晴天なり。

 思っていたより1日早いが、レギュレーションが発表された。昨年と同じく、800文字の5本上限だそうだ。

 昨日、手記を書いてる途中で仕事に戻ってしまったので書きそびれてしまったのだけど、今回もうひとつ試そうとしていることがある。それは、「既存の世界観のキャラ名だけ変えてお出しする」というもの。具体的には、刻命戦隊クロノソルジャーか碧空戦士アマガサの新しい話を書いて、あとはタイトルとキャラ名だけ差し替えてお出しする、ということ。

 昨日書いた「結果だけ置いておく」にも繋がるのだけど、ある程度できあがったものから出力することで「先を想像させつつも結末はわからない」ものを描けるのではないか。そして、連載中の作品の続きのつもりで書くことは「設定の開示パートを短くする」ことにも繋がるのではないか、という仮説から、この試行もやってみようと思っている。今、アマガサの5話をちょうど連載中なので、次はクロノソルジャーかなぁ。でもしっかり練ってあるのはアマガサのほうなんだよな。悩むなぁ。

 加えて今回、3000文字〜1万文字くらいの短編を書く(もしくは構想する)ところをしっかりやって、そこから抜粋して応募するような形にもしたいと思っている。

 これらは、ずっと抱いている仮説の検証のため、という理由が大きい。

 逆噴射小説大賞の「冒頭800文字だけ読んで一番面白そうな小説を書いた奴が優勝」というレギュレーション、これ、最大の肝は「演出」にあるのではないかと思っている。

 物語世界内での時系列があり、その中で主人公が活躍する部分にフォーカスして描かれるのが物語そのものなわけだけど、小説として形にするにはそこからさらに「それを面白そうに見せる」という「演出」の行程が入る。音楽でいうとサビを先頭に持ってくるとか、キャッチーなフレーズをイントロに入れるとか、そういうやつ。「①世界観を考える→②物語を構築する→③演出を施す」の3ステップ。

 逆噴射小説大賞は、③の演出工程を競う戦いである、という仮説だ。勿論これまでもそのつもりで臨んではいたのだけど、どうにも書いている最中で①~③を混同してしまいがちだった。それゆえに「オモシロ設定一発勝負」になっていたり、「800文字でオチてしまう」状況が発生していた気がする。なので、①〜③のステップを着実に踏んでから戦うということをやろうと思う。

 そういうわけなので、時系列ベースで整理して短編や長編第1話を書き切るほうが安定感が増しそうだなと思っている。

 とっ散らかった思考を整理するために書きだしていたはずなのだけどさらにとっ散らかり始めた気がする。まぁいいか。

 それにしても、なにを出そうかな。ネタ帳には単語単位でしかメモがないので実質ほぼゼロベースでの検討だ。

 タイトルとしてずっと頭に残っている言葉があって、それが「ドレッド・レッド・バレット」なんだけど、これをなんとか消化したい。恐るべき赤き弾丸。末尾に「・バラッド」も追加して、「恐るべき赤き弾丸の哀歌」とするのも良いかもしれない。

 思いついているのは「金さえ積まれればどんな組織でも壊滅に導く赤い服の女の話。もちろんドレッドヘア」という短い設定のみ。これをどう膨らませていくか、というところから考えていこう。

 最終的に「哀歌」に繋ぐとして、ハードボイルド文脈か。自身の使命のため、身を守るため、なんらかの理由で人の命を投げ出したり、裏切らなきゃいけなかったり、裏切られてしまったりする。もしくはお別れする、とかが真っ当なオチだろうか。

 タイトルからオチが想像つきやすい分、そのオチに辿り着く道のりの想像がつかないようにすることが必要だろう。つまり、キャラは3人必要だ。主人公(A)と、最後にお別れする人(B)と、それ以外の誰か(C)だ。

 Bをトンチキな存在にして、AとBが出会ったところで800文字というのは悪手だろう。さらに捻りを加える必要がある。

 ……と、演出を考える前にちゃんと世界観と時系列を整理しよう。

2020/10/02
 ドレッド・レット・バレット構想

 本日も晴天なり。っつーか暑い。秋はどこいった。

 昨日は手記の手を止めて、Qoso側で構想をまとめたりしていた。とりあえず「ドレッド・レッド・バレット」という主人公のことを深掘りしてみる。

画像1

「フリーランスの”鉄砲玉”」という言葉からマフィアやらなんやらを着想した。フリーの鉄砲玉ということは色々な組のカチコミに使われているはずで、不死身もしくはそれに近いくらいの耐久力or回復力があるはず。そして、色々な組のカチコミがあるってことは抗争中……?とかとか考えてみた。

画像2

 ハードボイルド文脈に落とすなら、主人公のナリアは「ベテランの鉄砲玉」にするのが良かろうと思う。そうすると、マフィアの抗争もある程度終わっている、もしくはナリアがキーとなって終わらせたくらいの世界観が良いのかも、とは思う。頭を過ったのはGANGSTAの世界観。

 抗争が終わって膠着状態のマフィアたち、そこに流入する別勢力。そこと手を組み周りを出し抜こうとする某勢力。定番はチャイニーズマフィアかな。

 GANGSTAの世界観が最初に頭にあるせいで、そんなナリアが誰かを拾うとか誰かと出会うとかっていうところで考えてしまうが……それだとその人が死ぬ、もしくはなんやかやで仲間になってオシマイ、なんだよな。あまりに定番なので先が見えすぎるな……。

 名探偵コナンは事件を解決するし、コブラは死なない。それでも面白いのは、結果までの過程に予想がつかないから、というところはあるよな。そう思うと仮定の想像をつけないようにする、という方向性で考えてみると良いのか?

「最終的にこいつは死ぬんだろうな」に対して、「でもこいつ不死身なんだよな…」とか。「最終的にこいつ仲間になりそうだよな」に対して、「でもこいつ敵組織の親玉なんだよな…」とか。逃げ道を塞ぐというのはひとつの手ではあるし、そこが自由にできるのはパルプの良いところだと思う。

2020/10/3
 ドレッド・レット・バレット構想2

 今日も秋晴れである。目が痛い。1ヶ月ぶりに馴染みの居酒屋に顔を出したらヘベレケになるまで飲んでしまった。頭も痛い。

 三国志みたいな世界観の夢を見た。徐州・豫州という名の兄弟が、一度は別々の勢力に身を置くものの、二人とも抜け出して合流して新たな勢力となる話だ。夢の中では徐州視点だったり豫州視点だったりしたが、なんとか優秀な者たちを引っ張って出ていこうと四苦八苦していた。

 ドドトド(ドレッド・レッド・バレット・バラッドの略)もそんな話にできないだろうか。流入してきた第三勢力に知己がいて、独立を持ち掛けられる。「お前とならやれる。この街で成り上がるんだ」と。

 ナリア本人は別に今のポジションに不満を感じてはいないので、彼女には彼女で別の目的を持たせる必要があるかもしれない。

 ナリアにとっての恩人、エリック。死んだと思っていた彼が現れて上記のようなことを言い出す。あとはマフィアの若頭から「組を立てたい」と言われつつ、そのマフィアのトップから「裏切り者を殺したい」と言われるとか。やれることはたくさんだな。どうしよう。そしてどれもありがちだな。どうしよう……。

2020/10/4
 ドレッド・レット・バレット あらすじ書いた

 明るいけれど曇天だ。今日はワイフの誕生日である。めでたい。これからもよろしくな!

 さて、昨日までに考えたあれこれを元に、ちょっと粗筋をしたためてみよう。

「ナリアを味方につけたやつが勝つから」という理由で抗争を終わらせてしまうほどの力を持つナリア。その無類の強さと、どれほど撃たれても死なない頑健さ(生きる意志がめちゃくちゃ強い)故に、人々はいつしか彼女を"不死身のナリア"と呼ぶようになる。

 抗争が終わって数年。ナリアは、3組織の領土の境界にある街に拠点を構え、日々起こる小競り合いや厄介ごとを解決して暮らしていた。各組織から定期的に金が入る。ナリアは自分の口座を公開していて、どこかの組織がナリアに裏金を渡そうとするとすぐにバレる仕組みになっている(そもそもナリアの願いは"平和"なので裏金は受け取らない)

 そんなある日のことだった。真紅の弾丸によって、マフィア組織Aの幹部が殺された。ナリアの口座に動きはない。ナリア自身も心当たりがない。しかし、真紅の弾丸を使うのはナリアだけであり、組織Aは残りのBとCが戦争をはじめようとしていると主張する。ナリアは街の平和のため、そして自身の潔白を証明するため、事件の調査に乗り出した。

 ナリアのスペックはバキの勇次郎パパをイメージしている。まぁあの父親は自分の身の潔白を証明する必要なんてないと思うけど。

 勇次郎パパにもできないことはなんだろう、と考えたとき、IT系のような"物理的な強さではない強さ"に関してはサポートが要るだろうと思う。忍殺のナンシーやタキのポジションだ。また、ナリアは範馬勇次郎と違って「守る」ための戦いを続ける存在であるので、自分の不在を任せられる存在も必要だ。つまり【それなりの強者もしくは武力】と、【通信網】そして【技術者】がいる。そうするとキャラクターが増える。

 ひとりは引きこもりのエンジニア。好物はポテトチップス(うす塩)。伸ばしっぱなしの緑髪をツインテにまとめ、そばかすだらけの顔には汚いメガネをかけている。彼女は拠点から出ず、日がな一日ポテチを食べながらネットワーク上を探検している。

 もうひとりは青い髪の武道家。過去に単身ナリアに挑み、ボコボコにされて以来居座っている男だ。中国拳法の使い手だが他の武器もひと通り扱うことができる。シンプルに「拠点を守る」だけでいうと彼ひとり居れば大抵大丈夫だ。

 わかりやすく色で判別できるようにしたい。ナリアがR、オタクがG、武道家がB。あと増やすとしたら白と黒かな。追加人員はそのあたりにしよう。

 名前は……G:モス(ハンドルネーム)、B:ブルース(あだ名)とか。ナリアの名前も赤に寄せたほうが良いかなぁ。ローズ……ルビー……バッカス……ガーネット……リンゴ……いやどれも鼻につくな。いいやナリアで。

 真紅の弾丸事件の犯人はナリアの育ての親・エリックだった。死んだと思われていた彼は実は海外に逃げ延びており、新興組織Dの"鉄砲玉"としてこの地に戻ってきたのだった──

 エリックとナリアの因縁が事件①。これだけだと全然"普通"である。

 ここにさらに、「一見すると関係なさそうな事件」が同時並行で起きている、というのはどうだろう。作中人物にとってはそれらは全く無関係の事件である。しかし読者にとっては、「同時に語られるということは、この二つの事件はつながっているのでは……?」と思える。どう繋がるかは冒頭ではわからず、徐々に細い糸が見えてきて、終盤にそれが繋がる……という仕掛けだ。

 これをやるためには世界の根っこを繋げておく必要がある。というわけで、もう少し世界を考えてみよう。

 ナリアの暮らす街は非武装地帯にあたるが、小競り合いも多く、暮らすに当たって命の保障はない。故に、この町に好き好んで居を構える奴はワケありか移民か、面倒ごとを好む物好きか、そのどれであってもそれなりに腕の立つ者たちであるはずだ。

 そんな街で、「ひとりきりの子供が死なずに生き残っている」ということはなかなかに異常事態だ。「不死身の子供がいる」としてナリアのもとに相談に来る者がいてもおかしくない。

「不死身の子供」。この世界は魔法がない世界と想定しているが、例えばナノマシンとか麻薬だとかで実現させてみるか。忍者と極道みたいな話になってきたな。

 ナリアの住む街……そうだな、トラインと名付けようか。トラインの周辺に縄張りを持つ組織は、アストラル・ファミリー、バーレスク・ファミリー、クライスト・ファミリーの3つだ(それぞれA,B,C)。三つ巴となっている3マフィア、その中心にあるのが中立地帯トライン。守り神はナリアだ。

 そんな地域に、新興外資系のマフィア集団ドミニク・ファミリーが入り込もうと活動をはじめた。ABC各組織は非常に戦力が高く、また抑止力として君臨し続けるナリアの存在も無視できない。ゆえに、ドミニクファミリーがはじめにとった行動は"戦力の強化"だった。

 ドミニクファミリーはナノマシンによる人体強化技術を開発しようとした。細胞の代わりにナノマシンを活用し、身体能力の向上、そして非凡なる回復力を授けるというものだ。

 しかし、全身のナノマシン化は拒絶反応が相次ぎ、うまくいくことはなかった。故に身体の一部をナノマシンに置き換えた兵士たちが量産されることとなる(しかしそれでも、その戦闘力は一般の人間のそれを凌駕していた)

 そんな中、ひとりだけ「全身のナノマシン化」に成功した者がいた。非検体番号777。幸運の数字を背負うその人物は、齢14歳の少年であった。

 ナノマシン兵の活動実験はトラインで行われた。それはトラインのトラブル解決人・ナリアの目には「ドミニクファミリーとABCの小競り合い」と映っていたが、内実としてはドミニクファミリーによる実環境実験であった。

 そうして小競り合いが起きていた頃、事件が発生する。アストラル・ファミリーの幹部が殺されたのだ。それも、ただ殺されたのではない。それに「赤い銃弾」が使われたのである。

 赤い銃弾、ドレッド・レッド・バレット。それを使うことが許されているのはナリアのみである。その圧倒的武力で中立派の象徴となった彼女のトレードマークであり、その銃弾が撃ち込まれるのはトラインの治安を乱す者のみとされている。

 そんな赤い弾丸が、アストラル・ファミリーの幹部に撃ち込まれた。B/Cからすれば「Aがなにかやらかした=戦争がはじまる」だ。Aからしてみれば「B/Cがナリアを買収した」となりそれも戦争の引き金となりうる。そしてナリアからしてみれば「殺した覚えがない奴が死んでいる。誰かが街を陥れようとしている」となる。ABCともに、ドミニクファミリーのことは忘れていた。ドレッド・レッド・バレットはそれほどまでに強い意味を持つ。

 トラインの議事堂で、ナリアとABCの各幹部が顔を合わせる。怒号が飛び交う会議の末、ナリアが提示した落としどころは「自分が犯人を見つけて身の潔白を証明する」ことだった。期限は2週間。それまでに真犯人を見つけ出すことができなければ、アストラル・ファミリーによって戦争の火蓋が切って落とされることとなる。BもCも臨戦態勢だ。ナリアは「2週間の間、各陣営はアジトから出ないように」と言い含めて調査に出ることとなる。こうしてナリアもまた当事者としてステージに上がる羽目になったのだった。

 さてこの一連の事件、裏にいるのはドミニクファミリーである。ドミニクファミリーはナノマシン兵に加え、もうひとつの隠し球がいた。それこそが、ナリアの育ての親であり師、エリックである。彼は過去の抗争で死んだと思われていたが、ドミニクファミリーに拾われて一命を取り留めていたのである(彼もまたナノマシン兵である)

 エリックはトライン周辺の地理にも詳しく、また、兵士たちの教官としてドミニクファミリーの戦力向上に大きく貢献した。ファミリーの長に次ぐポジションまで出世した彼は、ドミニクファミリーを利用してABC(=自らを死に追いやった者たち)への復讐を企てた。

 教え子であるナリアが今トラインのキーとなっていることを知ったエリックは、ドレッドレッドバレットの精巧な偽物を作り、アストラルファミリーの幹部を射殺したのだった。

 エリックにとって想定外だったのは、ナリアの影響力が想像以上に強かったという点だ。すぐにでも抗争がはじまると考えていた彼は、なかなか動かないABCそしてナリアに対し焦りを覚える(「2週間の猶予」のことを知る由もない)。

 結果として、エリックは抗争を引き起こすための次なる手段に出る。それは、「自分は実は生きていた」と嘘をつき、Aファミリーに転がり込むことだった(Aファミリーはエリックの知己である)。そうして「ナリアには気を付けろ」と偽の警告を語った上で、翌日Aファミリーの拠点裏で自害する。実際はその心臓はナノマシン製であり、しばらくすると彼は生き返るのだが、Aファミリーの面々は知る由もない。
 そうして彼らはナリアが師すらも手に掛けたこと、そして「調査の猶予の2週間」でそのようなことを行うのは証拠隠滅以外の何者でもないという考えから、戦争の開始を早める決断をするのだった。

 しかしその裏では、さらにもうひとつ想定外が起こっていた。被検体番号777が研究所を脱出したのだ。彼は自力でトラインに辿り着き、そして「不死身の子供」としてトラインの住民からナリアに引き渡されたのだった。

 777はエリックがナノマシン兵であることを知っている。どうにかして彼女らを引き剥がすか、口止めせねば。そう考えたエリックであったが、その心配は杞憂に終わる。777は記憶を失っていたのだ(X-MENでもあったが、脳が破壊されれば再生しても記憶は消える)。

 こうしてエリックは"勝ち筋"を見つけるに至る。自らの"娘"を陥れ、ABCの抗争の火蓋を切り、互いに潰しあった後にDファミリーが侵略する。そんな勝ち筋だ。
 
 しかしエリックは、大事なことを失念していた。否、知らなかった。

 今この地を守るのは、マフィアではない。ドレッド・レッド・バレット。ただひとりの女が、その武力をもって守っているのだ。

 抗争がはじまった。それと時を同じくして、777の情報を元にモスがナノマシンのことを突き止める。さらに、ブルースがドミニカ・ファミリーにカチコミを駆けた際、エリックがナノマシン兵であり、まだ活きていることが発覚する。

 不死身の二人が戦場で躍る。ナノマシンはナノマシンで無効化できる。777は自身の爪や髪を赤き弾丸に込める。"鉄砲玉"によって無力化されてゆくABC、そしてドミニクファミリーの兵士たち。

 そうして、エリックとの最終決戦がはじまる。エリックのナノマシンを纏った一撃が、777の胸板を貫いた。777ははじめて、死の恐怖を感じる。しかし彼はそれを振り切り、エリックに噛み付いた。エリックのナノマシンが無効化され、身体能力が普通に戻る。

「さらばだ、”ニードルバレット”。私はもう、ひとりで生きていける」
「ちくしょっ──」

 ドレッド・レッド・バレットが、エリックの脳天を貫いた。

 モスの計らいで、最終対決の模様は全組織に生中継されていた。ドミニク・ファミリーはABCによる総攻撃にあい壊滅。再びトラインには平和が訪れる。

 ナリア、モス、ブルース、そして不死身の子供を迎え入れ、今日もトラインの治安は守られる。

 ナリアは人知れず、エリックの形見を燃やす。「さよなら、父さん」。そんな言葉は、トラインの風に流れて消えていくのだった。

 …………書けた!!!(書けてない)

 俯瞰してみると、エリックが絶頂の時から書いていくのが良いかもな。演出を考えるフェーズに移ってみよう。

2020/10/05
 ドレッド・レット・バレット 試し書き→没

 今日も曇天。ひと雨きそう。

 冷静に昨日の手記を見返したんだけど、既にあらすじ骨子の時点で2900文字くらいあるな? 誰だ「3000文字くらい書いてから抜粋する」とか言ってたの。これ普通に書くと1万2万いくやつやんけ。

 過去の自分への愚痴はさておき、試しに以下の部分を書いてみた。

 結果として、エリックは抗争を引き起こすための次なる手段に出る。それは、「自分は実は生きていた」と嘘をつき、Aファミリーに転がり込むことだった(Aファミリーはエリックの知己である)。そうして「ナリアには気を付けろ」と偽の警告を語った上で、翌日Aファミリーの拠点裏で自害する。実際はその心臓はナノマシン製であり、しばらくすると彼は生き返るのだが、Aファミリーの面々は知る由もない。
 そうして彼らはナリアが師すらも手に掛けたこと、そして「調査の猶予の2週間」でそのようなことを行うのは証拠隠滅以外の何者でもないという考えから、戦争の開始を早める決断をするのだった。

 しかしその裏では、さらにもうひとつ想定外が起こっていた。被検体番号777が研究所を脱出したのだ。彼は自力でトラインに辿り着き、そして「不死身の子供」としてトラインの住民からナリアに引き渡されたのだった。

 ばーっと必要そうな会話を書きだしてみたら、だいたい1200文字くらい。ここから頑張って削っても1000文字前後、800文字に収めるには不自然になっちゃう。難しいな…。

「話が違げぇだろ! まだ4日しか経ってねぇぞ!」
 ナリアは怒鳴り、テーブルを殴りつける。抗争の際には弾避けとしても使われるほどの強度を誇るそれが、いとも容易く真っ二つになった。
「“話が違う”はこちらのセリフだよ、ナリア」
 組長ドーラはしかし、無表情のまま言い返す。そして彼は、右手で弄んでいたものを机上に置いた。
 金の意匠が施された、赤き弾丸。この街の秩序を法に代わって守る凶弾。"公平なる恐怖"の象徴。ドレッド・レッド・バレット。
「ナリア。お前しか使えないはずのこの弾丸で、我が息子トニーは殺された。しかしお前も、残りの2組織の連中も心当たりがないとかトボけやがった」
 赤き弾丸を机上に打ち付ける音が、コツ、コツと部屋に響く。
「だから猶予をやった。2週間。お前以外に、真犯人とやらが本当にいるなら連れてこいってな」
「だから今その調査をしてんだろ」
「ハッ。証拠隠滅の間違いだろう?」
 そう言ってドーラは、2枚の写真を投げ寄越す。
 写っているのは死体だ。1枚目は上から見下ろした構図。胸から夥しい血を流し、壁に寄り掛かって事切れている、ひとりの男。そして2枚目は──被害者の顔。
「……は?」
 それ見て、ナリアは瞠目する。金髪、無精ひげ、似合わないテンガロンハット、右眉の上に傷。
「親父……?」
 それは、ナリアの育ての親・エリックだった。
 5年前に、死んだはずの。
「ちょ、待、これいつの写真だ!?」
「とぼけるのも大概にしろ。昨日お前が殺したんだろう。この赤い弾丸で」
 ドーラが机に叩きつけたのは、彼の息子を撃ち抜いたのとは別の、赤い弾丸。
「っざけんなジジイ! 親父は5年前に死んだ! アンタも知ってるだろう!?」
「行方不明になっただけだ。奴は言っていたぞ。“ナリアの周りがきな臭い”とな」
「なっ……会ったならなぜ言わなかった!」
「言わずともこうして殺しておるだろうが。自らの親ですら殺すとは落ちたものだな、ナリア」
 そうしてドーラは立ち上がり、奥の書斎へと去ってゆく。
「待ちやがれ!」
「もはや期日を待つ必要はない。準備が出来次第、開戦する。以上だ」

             ***

「おいナリア、ちょっといいかい?」
「なんだ婆さん、今気が立ってんだ後にしてくれ」
「あらまぁ。そうすると……この子はどうすりゃ良いかね?」
「あん? この子?」
「……どうしたんだそれ、隠し子か?」
「違うわい。最近街で噂になってた、"不死身の子供"だよ」
「は? 不死身?」
「そ。うちの店先で死んどったとこを片付けてたら、急に生き返ってアタシャ死ぬかと思ったよ」
「とりあえずこの子引き取っておくれよ」
「はぁ!? 明日には抗争がはじまるっつーのになんでだよ!? アンタが連れて逃げろ!」
「面倒ごとに巻き込まれるのはごめんさね。それに、あんたならなんとかしてやれんじゃないかい。"不死身のナリア"だろ?」

 ……うん。なんか各セリフが説明くさいな。あんましよろしくない。ボツ。

 そもそもの話で、事件①と事件②の発生するタイミングがこれでなければならないってわけでもないんだよな。例えば既に777がナリアに引き取られてるとか、あと14日で犯人を探さなきゃならないってときに777がくるとか。

 上記の1,200文字に入れようとしていた要素を並べてみよう。

・ナリアの強さ/性格
・14日の期限が急にゼロになった
・ナリアはハメられている
・相手はマフィアで、激オコである
・ドレッド・レッド・バレットの由来
・ナリアがハメられた面倒ごとの概要
・ナリアの師・エリックが殺されたこと
・でも5年前に死んだはずだった=生き返っていたこと
・街で戦争がはじまること
・777“不死身の少年”
・“不死身のナリア”

 いや多いな。800文字に収まるわけないわ。あと、「14日の期限が急にゼロになった」のところが唐突感がすごいんだよな。そもそも14日後に戦争が起きるって時点で十分わけわからんのだから正攻法でそこから攻めてみるか?

2020/10/07
 ドレッド・レット・バレット 悩む

 曇天のち大雨。台風が近づいているらしい。逆噴射小説大賞の応募期間がはじまった。スタートダッシュ組がソワソワしている。「もう○作書けた」なんてマウント取り合いも発生していたりする。元気だな。

 それはさておき、改めて書き直しをしてみた。ドーラの息子が殺された。その凶器がドレッド・レッド・バレットだった。ナリアが調査をすることになった……と頭から順にやってみたけど、どうにもしっくりこない。

 事件①-2(エリックの死)と事件②(不死身の子供)がほぼ同時に起こるようにできないだろうか。例えばこう。

 事件①-2の発生によってナリアの元にAファミリーの使者がきた。使者は「準備ができ次第戦争をはじめる」と、ドーラの言伝を伝える。ナリアが事情を問いただすが、そこで使者たちが激昂した。「お前が若旦那を!!!!」
 銃声が響く。ナリアの顔が血に染まった。777が身を挺して盾となったのだ。誤射してしまったことに気付いたマフィアは動きを止める。777は頭と胸と腹を撃たれていたが、平然とそこに佇んでいた。777は不死身の子供だったのだ──

2020/10/08
 ドレッド・レット・バレット 試し書き2

 大雨だ。家に食べるものがないので外に出なければならない。めんどくさい……。

 昨夜は逆噴射小説大賞応募開始のタイミングだったので、だいぶ夜更かしをしてしまった。例年通りの集計だ。やっぱりデータをコネコネするのは楽しい。

 それはさておき、昨日思いついた内容で書いてみた。とりあえず400文字だ。

 そもそも、10歳やそこらの子供がこの町で単身生き残っている、という時点でおかしいと思うべきだった。
 マフィアたちが、悲鳴をあげながら銃を連射している。 銃弾の雨の中、少年はマフィアに向かってただ歩いていた。全身から大量の血を流し、頭も1/4くらいが欠けているにも関わらずだ。
 ナリアはテーブルを盾にしたまま、その光景を見ていた。
「ナリアさんは悪い人じゃないです。僕を助けてくれた。温かいスープをくれた。笑いかけてくれた。家族をくれた。だから犯人なんかじゃなバッゴボッ」
「な、なんだてめぇ! なんなんだ! おいナリア! この化物はなんだ! ひ、ひぃ、来るな!」
「ゴボボッ……ナリアさんば、バるいひドじゃない!」
「ひぃぃい!?」
 情けない悲鳴と共に、マフィアどもが退散していく。
 荒い息を整えて、少年はくるりと振り返る。
「驚かせてごめんなさい、ナリアさん」
 その身体にはすでに、傷ひとつ残っていなかった。

 とはいえなんだかまだテンポが悪い。もっと場面が動いてほしい。……ていうかナリア嬢、この状況でぽかんと見てるクチでもないな。少年が撃たれてる間に全滅させてそう。

 ナリアさんの性格を考えてみると、そんな焦らないしセコセコもしないんじゃなかろうか。だって「その気になれば誰でも5秒で殺せる」わけだから。そんなナリアが焦るのは自分以外のものが人質に取られたときだろう。つまり、ドレッド・レッド・バレットが悪用され、戦争の危機に瀕している状況そのものが焦りの根元だ。その時にあれこれ出てくる雑魚どもの襲撃なんかはナリアにとっては事件でもなんでもない。

 一方で、不死身の少年にとっては多分なにもかもが事件だ。不死身のナリアに引き取られ、ナリアが大怪我したりするのも見るだろう。マフィアに襲われたりも。彼自身もマフィアに襲われて何度も死んでいるわけだし。モスちゃんやジャッキーさんも良い人だけどたまに怖い、みたいな。

2020/10/09
 『じゃん負けレッドの下克上』構想&書いた

 あまりに行き詰まっちゃったので、一旦ドレッド・レッド・バレットは置いておくことにした。

 2作目(事実上の1作目)の方針は決まっている。前に書いたこれだ。

「既存の世界観のキャラ名だけ変えてお出しする」というもの。具体的には、刻命戦隊クロノソルジャーか碧空戦士アマガサの新しい話を書いて、あとはタイトルとキャラ名だけ差し替えてお出しする、ということ。

 クロノソルジャーの2話はイッキとハルが仲良くなる回。最初はツンケンしている二人がうまいこと仲良くなる物語の予定だ。

 イッキくんは1話ではあれこれ巻き込まれてヘタレた少年で、終盤で覚醒してバッチリ立ち上がったわけなのだけど、2話ではもっと素に近い彼を描いていく。

 イッキくんは「家事万能な可愛がられキャラ」で、なんというか「みんなの弟」って感じ。弟っつーかもはや孫。そういう子でいてほしい。

 一方のハルはトンガリ小僧で、1話の終わり頃に一応「イッキ!」と認めるような言動はしたもののまだまだイッキのことを腹の底じゃ認められてない感じ。

 なのでイッキくんが孫ぢからを発揮してみんなに可愛がられているのをみて「…………面白くねぇ」って言っちゃう。揺れ動いてる中でそんな感情を持ってしまった罪悪感から居た堪れなくなって飛び出しちゃう。イッキはイッキでハルと仲良くなりたいのでそんなハルを追いかけてくのだけど、まだ経験がめちゃくちゃ浅いので普通に怪人ヤミヨの罠にかかってしまうのだった──という話。

 とりあえず、それをそのまま書いてみることにした。キャラ名をイッキ→アキに、ハルはそのまま。残りは全部情報量を削るため、イエロー・ピンク・ブルーにした。

 今朝の俺は気合が入っている。
 なんたって、うちの戦隊に新入りがきた。アキという気の弱そうな男で、しかも年下だ。
 イエローもピンクもブルーも、年下だからって俺のことをナメくさってやがる。放っとけばアキも雑に扱われかねない。ここはリーダーとして俺がしっかりせねば!
 ……と、思っていたのだが。
「えっ、美味ッ! アキくんこれお店出せるんじゃない!?」
「ほんとですか!? へへ、料理、好きなんですよね」
 イエローは胃袋を掴まれて見事陥落。
「すごいなアキ。シンクが鏡みたいになっている」
「ありがとうございます!」
 ブルーは、小姑ムーブをあっさりと飛び越えたアキに一目置き。
「ごめーん寝坊した! 燃えるゴミ……」
「あ、玄関のやつですよね? 掃除のついでに出しておきましたよ」
「えまじで!? チョー助かる! アッキーホントごめん!」
 完ペキなフォローでピンクにも気に入られ。
「アキ、そこはもっとこうした方が」「こ、こうですか?」「アキくーん!」「今いきます!」「アッキー!」「はーい!」「おーいアキ!」「アキさーん!」
 他の連中も寄ってたかってアキアキアキアキ。
 ほんの半日で、あいつはすっかり“みんなの可愛い弟分”として受け入れられ、あまつさえ頼りにすらされている!
 ………………気に入らねぇ。
「……パトロール行ってくる」
 誰にともなく言葉を投げ、俺は愛用のスタジャンを片手に家を出た。見送りの声はなかった。
              ***
 いつものコースを1時間ほど歩いたものの、イライラは収まらなかった。
 理由はないが海のほうへと足を向ける。つーかおかしいだろ俺より年下だぞアイツ。海風が案外冷たい。更に歩く。俺以外パトロールに行かねぇし。やる気あんのか。知らない道に出た。勘で左折。行き止まり──に、なんか居た。
「おや? 迷える子犬がもうひとり」
 それは占い師めいた格好の、小汚いオッさんだった。そして。
「あ、あれ? ハルさん?」
 そいつの眼前には、何故かアキが座っていた。
(つづく/799文字)

 ……が、まーーなんというか、確かに場面は動いているのだけど終わりが地味っつーかなんつーか。消してしまったけれど、もっとハルをクロノのハルっぽくイキったやつにしてみたりもしたのだけどどーーーにもしっくりいかない。

 ということで、これをベースにあれこれアレンジを加えてみることにした。

 一番大きな変更点は、ハルがレッド、そしてアキ=イッキがグリーンになったこと。実は残りはほとんど変えていない。ハルの空回り感や冴えなさが「レッドらしくなさ」となって、すごく良いスパイスになった。

 逆噴射小説大賞は文脈圧縮のゲームでもあると思っていて、そういう意味では、戦隊文脈ほど圧縮しやすいものはないと感じた。なにせ「リーダーで、メンバーの全てを把握していて、メンバーから頼られている奴」という言葉が圧縮されて「レッド」の3文字に収められるのだ。すごい!!!

 ハルくんの「レッドっぽくなさ」を見て、「ジャンケンで負けてレッドになった感あるなこいつ」と思ったのをきっかけに「じゃん負けレッド」と言うフレーズを思いついたのでそのままタイトルにした。さらにハルくんが情けなくなった。可哀想。

 クロノの縛りをなくせるので、怪人の能力も好きにいじれるようになる。そこで、怪人の能力と「アキくんが家事完璧であること」に相関を付けようと考えた。ハルくんがパトロールに出る前と後のシーンの接合がどうしても弱くなってしまうからだ。

 大きくは2案。「ループ物にする」か、「アキが怪人の力で身体強化していた」か。後者は最終的にはアキくんが因果応報で怪人になって死んじゃうんだと思う。家事完璧であることの補完としてはループ物である方が説得力があるので今回は前者にした。

 最後に、ループ物を前提として、800字の中に”違和感”のタネを撒く。ハルも知らないイエローの好物をなぜか知っているとか、ゴミの日を知っているとか。初見では、ハルがメンバーや家事に興味ないor嫌われているせいで知らないだけに見えるはず。ただ最後の行まで読んだら「あれもしかして」と思える、そんな仕掛けを作ってみたかった。

 ……というわけで、できたのがこちら。結果として日付を跨いでしまった。まぁ良い良い。とりあえず1発目完了だ。

 書いている中で気付いたことだが、会話が入るとドライブ感が消えがちだ。プロの作品ではその辺り感じないのでテクニックとして研究が必要かもしれない。どうにもわかってもらおうとしすぎるキライがあるのかも。今後の課題だな。

2020/10/15
 『8月3日のアルクトゥルス』書いた

 手記をサボってる間に2作目ができあがった。ドレッドレッドバレットではない。先日見に行ったショーン・タンの展示にインスピレーションを受けた作品だ。

 書き始めたのは2日前。書いては圧縮し書いては圧縮しを繰り返して厚みを出してみた。こう書くと銃弾っていうか刀みたいだな。

 作中の1日は絵本の1ページにあたる想定だ。絵本、とくにショーン・タンのものに特有の「やってることはわかるけど、なにがなんだかわからない」感を目指してみた。

 ショーン・タンの作品に、潜水服の男が街中にふらりと現れる話がある。それを発想のきっかけとして、宇宙飛行士を通学路に登場させた。牛が湧いて出たりフォークダンスをするのは大体思いつきだけど、結果として牛飼い座のアルクトゥルスと繋がるきっかけとなったので良かったと思う。

 インスピレーション元が元なので、この話は最終的に宇宙飛行士が消えて終わる想定だ。

 家を抜け出すまでがひと波、途中で母親に見つかって、牛の群れが犠牲になりつつも脱走に成功。彼は宇宙飛行士と共に逃げ出す。"僕"は監禁されてたので気付かなかったが、その日は終業式の日だった。夏休みがはじまる。宇宙飛行士と共に逃走する生活。ホームレスのおじさんたちと仲良くなったり、猫の集会に居合わせたり、苦手な牛乳を克服したり、犬の群れと戦ったり(宇宙飛行士は犬が苦手だ)、散々な目に遭いながら、"僕"は少しずつ成長する。最終的に8/3に宇宙飛行士は星になり、主人公は一人立ちをする。母親に見つかって、殴られて、殴り返したところで物語が終わる。最後の一文は、「どこかから、「ピピピー」と聞こえた気がした」だ。

 投稿から数時間経った現在、もらえているリアクション的にはなかなかに好評で嬉しい。とはいえこれで優勝狙うのは難しかろうなと思う。予選通れば御の字かな。

 逆噴射小説大賞、冒頭800文字から先の責任を持つ必要がないので(書けるならそれに越したことはないけど書かなくても心は痛まない)、こういう実験作的なものが時折ポップするのが面白いところだと思う。普段人が死にまくるパルプ書いてる人が急にコメディ書き始めたり。仲良しのベテラン勢はこの傾向が顕著なので読むのが楽しい。

2020/10/16
 ドレッド・レッド・バレットに再び悩みだす

 それはさておきドドトドだ。上記あらすじだけだとどうにも書き出しがうまくいかない。悩みに悩んでいるのだけど、軸として事件を置くのをやめてみらのが良いのかも、と思い至った。

 ここまで1作目と2作目はものすごくスムーズに書けている。振り返ってみると、1作目は「完璧な新人と不貞腐れた俺」という柱が、2作目は「僕が出会った変なやつを紹介します」という柱がそれぞれまずあって、そこにそれらを掘り下げるためのツールとしてイベントやトラブルを考えて行ったように思う。

 一方でドドトドは、まず「フリーの鉄砲玉」「不死身のナリア」「ドレッド・レッド・バレット」というワードだけがあり、上記柱にあたるものがない。にも関わらず事件だけがある。14日後にはじまる抗争、過去の師の再度の死、不死身の子供、納期が急に縮まる、など。主人公の日常を鑑みるとそれらは全然起こり得るものなのだけど、物語として見るとまとまりのないものになってしまう。雪玉は真ん中に硬いやつがあったほうがデカくなりやすいのだ。

 そういうわけで物語の主軸を考えてみると、「不死身の子供」と「不死身のナリア」という対比が面白そうだ。リアル不死の子供は「死んでないだけ」である。生きることを諦め、漫然と「あ、死んだ」「また死んだ」と過ごしている。一方でナリアは生きるのに必死であり、それゆえに不死身と呼ばれている。「生きるとはどういうことか」を少年はナリアの背中から感じるようになる、的な。

 作品を誰視点にするか悩ましいところではある。ナリア視点の場合、少年が「死んでないだけ」であることにヤキモキする描写があるだろう。少年視点の場合、ナリアの必死さを小馬鹿にしつつも段々と憧れていくことになるか。後者のほうが自分好みかもな……。

2020/10/21
 『アシモフ・九十九世』が無から沸く

 気付けば逆噴射小説大賞も後半戦。昨夜、3発目を撃ち終えたところだ。

 ヘッダにはルビを書いてあるが、九十九世と書いて「ツクモカスタムス」と読む。キラキラネームかよ。

「ロボット三原則で人を傷つけられないはずのロボットが、人を傷つけてしまった。AIは悩む。自分は本当にロボットなのか?」という着想から、元々は「ロボットしかいないはずのこの家で、ご主人が殺された。ロボット三原則を破れるはずがない。この中に”にんげん”がいる!」みたいな、AI人狼的なものを書こうとしていたのだけど……って、今こうして書いてみるとAI人狼のほうも面白そうだな?

 元々AI人狼のオチとして「九十九神に”なって”いた」を使おうとしていたのだけど、サスペンスとしてあまりに飛び道具すぎる点や逆噴射小説大賞の初速重点な競技性を鑑みると、九十九神になったロボット目線で書くのが面白そうだなと思い至る。「AI人狼が始まった。犯人は間違いなく俺なんだけど、そもそもなんで俺はご主人を殺せたんだ…?」みたいな。それで冒頭を書き始めたんだけど、これは館から飛び出したほうが場面が動くぞ……?と思ってこういう方向にしてみた。とはいえ、やっぱAI人狼のほうも面白そうだな……

 ……と、諦めがつかずに書いてみた。これは没だな。もっと物語動かしたいし、なにより先が思いつかん!

 さてそういうわけでドドトドの話に戻るが、会社から1時間ほど歩いて帰る間にだいぶ気持ちが変わってきた。

「フリーの鉄砲玉」に縛られて、マフィアの3すくみだの公平な恐怖だのと考えていたけど、いったんその辺りを全部諦めることにした。

2020/10/22
 『ドレッド・レッド・バレット』が超迷走する

 晴れ。昼は暖かいが、夜は寒かった。

 さて、宇宙海賊である。なにを言い出したんだこいつと思うなかれ。昨日の「諦めることにした」からここまでに色々と考えてそれを思いついた。

 海賊とは、「船」という帰る場所があるはずだ。でも彼女は鉄砲玉なのだ。彼女に帰る場所はない。行く先々で船を襲い、奪った船で旅をして、また船を襲う。シェアリング/レンタルビジネスの体現者。最強のミニマリスト。

 海賊団は彼女自身であり、そのジャケットが海賊旗である。ナリアがいるところこそがその海賊団だ。彼女の鉄砲玉が発動するたび、クルーたちはついていくことになる。彼女が引っ張ることはない。

 クルーも一筋縄ではいかない。自分より強い者と会うために旅を続ける拳法家。真の愛と恋を求めるガンマン。そしてそこに、死に場所を探してさまよう少女が加わるところが今回の話。主人公の旅の動機は「天竺」にしようか。

 不死身のナリアは不死身ではない。でも生きる意志が超強いから、頭を撃たれたくらいじゃ死なない。そんな奴。

2020/10/28
 苦し紛れの別案検討。妖怪……?

 曇り。逆噴射小説大賞も残すところあと4日。ドレッドレッドバレットは一応形になったものの、下読みを頼んだ友達から「迷いが見える」と言われ撃沈した。実際迷いに迷った結果なので仕方ない。

 ドドトの組み直しをする前に、気分転換に5発目(予定)を書いてみることにしよう。ヘッズ1次創作SFアンソロにて考えた「未来の妖怪絵巻」の連載版構想だ。

 妖怪って知ってるか? そう、ヌリカベだとかひとつ目小僧だとか、ああいう奴らだ。
 時は令和44年。人々はもはや、夜の闇を克服したと言っても過言ではない。妖怪たちは必然的に、地方の山間部や廃村に身を寄せ合い、細々と暮らさざるを得なくなった──にもかかわらず。
 それでも、東京に生きる妖怪たちがいる。これは俺と、俺の不思議な友達の、日常の物語。
 令和東京妖怪絵巻、はじまり、はじまり。

 水木しげる御大のゲゲゲの鬼太郎は、令和の世に合わせてアップデートされている。売れないお笑い芸人が妖怪の歌をパクって祟られる話が好きだった。

 時代によって姿を変える者。妖怪は時代によって増えた者。そして、時代を経ても変わらぬ者。それぞれが人間と関わるとどうなるか、という点で、SF×妖怪の面白さを出せないかと考えている。

 舞台は令和44年(西暦2062年)の東京都、新宿。今から約40年。10年ごとに無線通信が高速化していくので、2060年となると9Gの時代か。ほんとか???と思うけどまぁやるんだろうな。もはや高精度カメラでの画像認識はお手の物。なにせシンギュラリティを超えて約20年が経つ。警備のあり方も変わっているし働き方も変わるだろう。

 そんな時代において立場をなくしそうな妖怪。個人的no1はカマイタチ。人々の動体視力が良くなりすぎるので、妖怪の仕業でないことが確信されてしまう。

 次点で泥田坊。「田んぼから出てきて田を耕せ、農業をしろ、と夜な夜な叫ぶ妖怪」らしいのだけどそもそも2060年の新宿に田んぼはないので、田舎に分布地が移動してそうだな。

 人々は防犯用センサーを持ち歩き、街頭監視カメラと合わせて夜を克服する。人が立ち入らない藪だとかは「立ち入れない」ようになる。GPS精度もあがるので。

 安全と安心が担保された東京で、妖怪が過ごすには? というのがテーマだ。

 想像つくのは強大な力を持っている者。ぬらりひょん、九尾の狐、天狗、ろくろ首、などなど。知名度がそのまま格となると仮定するとこの辺りは盤石だろうな。

 そして九十九神連中は色々な進化を遂げそう。2062年から100年前は1962年。戦後である。テレビやらバイクやらも九十九神になりうる。

 マイナーめな妖怪はどうだろう。ちょっと水木しげる御大の本見てみようかな。

2020/10/29
 『魔法少女ミズハノ☆ウォシュレット』書いた

 ドドトドを書いた(そして諦めた)勢いで書いた格言付きカレンダーのほうを4発目として撃ってみたのだけど、イマイチ反応がよくなくてしょんぼりしている。やはりタイトルで冒険し過ぎたかな……。

 残すところあと2日。5発目をどうするか決めあぐねている。ドドトドか、江戸妖怪絵巻2104か。

202010/31
 最終日&『ドドトド』を改善・応用!

 昨日、ワイフ(notモノ書き)と散歩をしながら、ドドトドで悩んでいることを相談してみた。勇次郎お父さんみたいに最強無敵のキャラであることを話したところ「ワンパンマンのサイタマが社会性欠如してるみたいに、武力とは違う欠点作ったら良いんじゃない? 青色アレルギーとか」と言われてソレダァァッとなった。セカンドオピニオン、まじで大事。

 そういうわけで、今朝起きてから構想を開始した。とはいっても、これまで考えていたものを元に色アレルギー成分を入れつつ整える感じでいった。時間もないしね。

 できあがったのがこちら。これまでのドドトドの検討結果からするとほぼほぼ別物になったがまぁ良いのだ。そういうこともある。

 青色アレルギーなので、昼間青空の下で行動することはできず、基本的に夜活動するはず……という着想から検討を開始した。

 主人公の「フリーの鉄砲玉」というポイントはそのまま使う。暗殺とかするならそれは不自由にはあたらないはず。……とはいえ、そんな彼女が青空の下で仕事をしなきゃならなくなる、そんな展開に持っていきたいなーと思った結果、無からJKが生えてきた。

 依頼人の“御老公”は、これまでドドトドの検討の中でずっと出ていたドーラファミリーのボス、ドーラのイメージ。そこにコミカル要素として「門限18時」を加えて、さらに息子を娘に変えた。グラブルで百合作品を読んだので百合にしたくなったんだ。

 あとはもうドライブ感をどう出すかというところで、初稿は以下のような感じだった。

「ししょー! そっち行きました!」
「弟子にした覚えはねーっつってんだろ!」
 アタシが怒声と共に放った銃弾は、狙い過たず敵マフィアの頭をぶちぬいた。これで20人、いや21人か。と──少し離れたところから、パリンと窓の割れる音。
「3人、窓から逃げました! 私行ってきます!」
「あ、おい!」
 アタシが止める間も無く、エリナは窓から飛び出した。
「ひとりで行くな……って、はぁ」
 素早い上に、怖いもの知らず。あれが若さか。アラフォーの身体であれについていくのは正直しんどいぞ。
「困ったな。外は青空だし……」
 遠ざかっていくエリナの背中を眺めながら、アタシはひとり呟いた。
 いつからだろうか。青いものに触れると、そこが爛れるようになってしまったのだ。鉄火場であれば大抵の物は血に染まるので問題ないのだが……青空は、やばい。外に出るだけで、全身ドロドロになるのだ。
 なので夜に“仕事”をすることが多いアタシだが、今回白昼堂々仕事をするハメになったのはエリナの……というか、依頼人のせいだ。

「孫娘のエリナに、社会科見学をさせたくてのう」

 それは、エリナの祖父のそんな言葉。アタシが御老公と呼ぶその爺は、タピオカに麻薬を混ぜて売る店の情報をタレコミしながらそう言ったのだ。
 ンな物騒な社会科見学があってたまるか、とは思ったものの、お得意さんの言葉を無碍にするわけにもいかない。
 例えそのせいで、日中に依頼をこなすハメになったとしてもだ。

「ドンパチして設定開示」の典型例に落ち着いてしまって、もっともっと展開を動かしたい!!! と練り練りした結果が最終版のアレだ。ちょっと圧縮しすぎ感があるので、作品確認期間中にじっくりと考えてみたいと思う。

2020/11/1
 最後の振り返り:投稿期間を終えて

 というわけで、滑り込みとはいえ無事に5作、応募することができた。

 今回、アマガサの連載と被ったことやリアル多忙も相まって、昨年のように「自分の強みとは……」だの「面白さとは……」だのをほとんど考えないまま書くことになった。ある意味余計な邪念がなくてよかったとも言えるけど。

 意志表明の際に書いた「3000字くらいの短編から抜粋する」は結果として未達成となったのが心残り……というか、ドドトドが若干心残りなので、どこかで機会があったらまたエッセンスを入れていきたいなーと思う。とりあえず参考文献としてGANGSTAを読み始めた。

 難産でめっちゃくちゃ苦労したし必死すぎて書いている最中のことを忘れてしまうレベルだったりしているけれど、改めて読み返すと5作とも結構思い入れがあると言うか、可愛い我が子のような感覚になっている。

「じゃん負けレッド」「ミズハノ☆ウォシュレット」はヒーローもの書きとしての新しい切り口を出せたと思うし、「アルクトゥルス」に関しては初挑戦の実験作をぶち込めたのがデカい。「アシモフ」もずっとやりたかった「九十九神とAI」の話を書けて満足。そしてなにより「タソガレ」。ドドトドからここまでの変遷を経て、とにかく愛着の沸いた一作となった。

 これらの作品、今後どう日の目を見せて行こうかなーと悩んでいるものの、とりあえず目先は「ユダン・ナラナイ・パブリッシャ」かなーなんて思っている。気が向いたら書きますんでまたよろしくです。

いじょうだ

 長くなった。ライナーノーツのような、ただの落書きのような乱文でしたがお楽しみいただければ幸いです。

 最後に改めて今回の応募作を貼っておきます。是非読んでね!

①ヒーローもの

②絵本っぽい実験作

③九十九神×AI・ロボット

④全日本「これどこから魔法少女になるの?」選手権優勝候補

⑤アレルギーって大変だよね


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