はんぱないパッションに行ってきた話

 2019年5月19日、VTuberグループのアイドル部のライブ『はんぱないパッション』に行ってきた。他の方はライブの感想などを主に書かれているようだが、運良く(と言ってもチケット取得のコツを予め調べていたこともあって、早い整理番号を獲得できた)現地参加できた者として、本記事では現地の様子を伝えていきたい。

 まず私は名古屋からの夜行バスに乗り新宿で降りた。そこから、ほぼ始発くらいの電車で会場となるZepp DiverCity TOKYOへ向かった。東京テレポート駅でもすでに物販の参加者とみられる集団がいたが、6時過ぎに会場につくと2、30人程度は集まっていた。ひとりだけ出入り口の前で座り込みを行っている人も見受けられたが、皆ベンチに座るなどし、通行の妨げにならないように配慮していた。

 私はしばらく様子を見ていたが、これ以上人が集まると通路を塞ぐことになりそうだという頃合いで、なんとはなしに列が形成された。これが6時17分頃の話である

 さて、ここで問題となるのが、はんぱないパッションの公式ホームページにも書かれた「※会場及び会場周辺での徹夜待機・早朝のご来場は会場周辺の方のご迷惑となりますのでご遠慮ください。」という注意事項である。もちろん私も事前に注意事項は確認していたし、他に列に並んでいた人たちも「どう対応するのだろうか」と話し合っていた。

 しかし、ひとつの事実として言えるのは、気象庁の定義する用語としての「早朝」とは、「一般の人が活動を始める前。季節、地域にもよるが「夜明け」からおよそ1~2時間。」のことである。当日の東京都江東区青海の夜明けは4時5分であり、列形成がなされた時間にはすでに夜明けから2時間以上経っていたことになり、気象用語的にはすでに早朝ではなかった。

 また、目と鼻の先にある国際展示場で行われているコミックマーケットでも、早朝組と始発組は分けて考えるのが一般的だと思う。8時くらいから並び始めようと考えていた諸兄らのほうが立派であることに変わりはないと思うが、こうした事実があるにもかかわらず始発組を「転売屋が」などと罵っていた人たちは少々白熱し過ぎだったと思う。

 尤も当初の列は蛇行して形成されておらず、実物大ユニコーンガンダム立像のほうまで伸び、少々通路を塞いでしまう場面はみられた。ただ、そうは言っても通行人の妨げになるほどではなかったし、有志の方がすぐに蛇行するように列整理を行ってくれた。ただし、蛇行の際に順番が前後してしまうようなことはあったらしい。

 また、なるべく間を詰めるようにと指示があったり最後尾を示す札を自主制作したりと、手際の良さがみられた。スタッフが出てきたのは9時頃であり、少々困惑しているようにはみられたが、自主的に列整理を行っていたためにスムーズに本番の列として移行できたと思う。私はあまりライブ参加経験はないが、自主的な列が本番の列に変わるのは極一般的なことであるという指摘もTwitterではみられた。

 スタッフの指示に従い、待機していると程なく「うちわのみ2限、それ以外は1限」というアナウンスがなされた。その時点で1600人程並んでいたと言うから、スタッフも急遽の判断でそうしたのだろう。もちろん事前に告知しておくのが理想的ではあるが、売上予測は当日にならないとプロのイベンターでも難しい面があり仕方がないことだったと思う。

 物販が開始され、会場に入るとレジは6つほどありスムーズな販売が行われていた。個人的なこととなるが、うちわを購入している人も多かったため当初の予定ではペンライト、マフラータオル、Tシャツのみのつもりだったが、私もうちわを購入した。

 その後、私はすぐに会場を離れたが、Twitterでの報告によればスタッフも「過去最高レベルに綺麗な列が形成されていた」と驚いていたという趣旨のことを語っていたという。早朝の解釈を巡って議論がみられたが、これが実際の現場の様子であった。

 会場から一旦離れて戻ってくると、やはり変わりもののTシャツを着ていたり馬の被り物をしていたりする集団がおり、異様な光景にはなっていた。ただ、あくまでライブ会場前のことであるし、アイドル部とは全く無関係にコスプレを楽しんでる人もいなかったわけでない。この点に関しては土地柄として許されるものだと思いたい。

 開場の時間になると整理番号順に300人ずつ程度にブロックが分けられ、10人ずつくらいが呼ばれ会場入りしていった。朝の列形成の際にも思ったことだが、女性の参加者は非常に少なくちょうどブロックごとにひとりくらいの感覚だったかもしれない。女性ファンの獲得はアイドル部にとってひとつの課題となるかもしれないと思った。

 会場入りするとドリンク代を支払い、ペットボトルのコーラをもらったが、これは失敗だった。何故ならライブホールはドリンクを飲む動作を行えないほど寿司詰めの状態だったからである。他にもうちわなどを持って会場入りしたが、ペンライト以外は事前にロッカーに預けておくべきだったと思う。水分補給なしでも体力的には案外問題はなかった。ただ個人差のある話ではあるので、ライブ前の水分補給はしっかりしないといけないだろう。

 フラワースタンドについては、ホロライブやピンキーポップヘップバーン、中国のファンから送られているのが印象的だった。ホロライブ自体は.LIVEとはあまりつながりがないように思われるが、ときのそら名義ではなくホロライブ名義だったということだろう。

 ところで、ライブホールでは花京院ちえりによる従業員の歌がリピート再生されていたことは皆さんも知っての通りだ。野太い声で男たちが合唱し、ペンライトを振る様子はさながら何かの宗教の儀式であった。

 りあちゃることリアルな姿のばあちゃるプロデューサーが現れると会場は大盛り上がりだった。話していた内容は正直よく覚えていないが、生放送開始前のアナウンスということだったので、おそらく現地入りしていた人たちしか見ていない姿のはずである。

 アイドル部ライブ前座のアニソンDJイベント『UBIBA NIGHT』では、ばあちゃるがDJを務める中で『BURLESQUE Annex ~YAVAY~』に所属するタレントが踊りのパフォーマンスで盛り上げてくれた

 その際、「水着のお姉ちゃん方を放っておいて、バーチャルキャラクターに盛り上がるのもどうなんだ?」と思わなくもなかったが、あとから知った話ではこういうアニソン系のイベントを中心に活動しているグループらしく、オタクの扱いにも慣れていたものだと思われるので大丈夫だろう。

 応援のビデオメッセージとしては、『超人女子戦士ガリベンガーV』にレギュラー出演するお笑い芸人のバイきんぐ小峠(!)を始めとして、VTuberのメリーミルク、月ノ美兎、富士葵、ときのそら、桜樹みりあ、甲賀流忍者ぽんぽこ、ピーナッツくん、名取さなからの応援の言葉が寄せられたが(アイドル部の先輩にあたる電脳少女シロの応援メッセージはライブの合間だった)、それぞれのイメージカラーに合わせてペンライトの色を変えているのが印象的だった。(もちろん私もそうしたのだが)

 また、『UBIBA NIGHT』の選曲は『ヒカルの碁』のオープニング曲など比較的古い曲も多く、なかなかにいいセンスだったと思う。

 肝心のライブの感想についてだが、多くを語るのは苦手なので、他の方の記事などをご覧になっていただきたい。ただファンメイドのMADから生まれた花京院ちえりの『GO!GO!ちえり!』を公式ソングとして発表したことは、アイドル部を運営するアップランドらしい戦略だったと思う。

 アップランドがファンメイドの作品を公式に取り入れることは今に始まったことではなく、現在は公式デフォルメ絵師として登用されている淡井フレヴィア先生はもちろん、噂レベルだがファンメイドのMMDを制作していたクリエイターが.LIVE公式のYouTubeチャンネルにて、アイドル部の日常アニメを制作しているのではないかとも言われている。
 また、アイドル部全員による『アスタリスク』、もこ田めめめによる『ダダダダ天使』などの選曲もファンメイドのMADを参考にしたものではないかと考えられる。

 このように公式がファンメイドの作品の要素を取り入れることは、昨今のコンテンツではさほど珍しいものではなく、古い例で言えば『ひぐらしのなく頃に』の時代くらいまでは遡れると思う。しかしながら、公式がファンの遊び場に侵略してきたなどとして悪印象を与えることもある諸刃の刃でもある。だが、作者ごと取り込んでしまうというアップランドの豪腕には文句の付け所がない。作者自身が納得しているのであれば、外野が口出しするようなことではないからである。

 さて、ライブのことに話を戻すと、最後の曲は八重沢なとりによる『千本桜』だった。しかし、さすがにソロ曲が最後なはずはないだろうと思いつつ、アンコールをしているとアイドル部による『君の知らない物語』が披露され、これが本当の最後の曲となった

 その後、何故かばあちゃるコールが鳴り響いたが、これはおそらくばあちゃるも想定していなかったに違いない。何故なら現れたばあちゃるは手袋をつけていないなど、普段とは違った姿だったからだ。.LIVEリスナーのはんぱないパッションは、最後まで.LIVEの予想を上回るほどのはんぱないパッションであった

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